解説 · 2026年8月時点
ログンHPP(OJSC Rogun HPP)は、タジキスタン南部のヴァフシュ川で建設が続くログン水力発電所を保有・運営する国有会社である。完成すればダムの高さは世界最高となり、発電量は現在のタジキスタンの総発電量の6割に相当する。事業会社としての同社は、発電所そのものの技術的な話とは別に、株式を国内で広く販売した経緯と、電力販売収入の3%を社会保障に回す仕組みを持つ点で、投資の観点から見るべき対象になっている。
| 正式名 | OJSC «Rogun HPP»(НБО «Роғун») |
|---|---|
| 事業 | ヴァフシュ川ログン水力発電所の建設・保有・運営 |
| 所有形態 | 国有(公開株式会社) |
| 完成時の規模 | 設備容量3,780MW、年間発電量1万4,400GWh(世界銀行、2024年・2026年)。事業会社の公式サイトはダム高335メートル、容量3,600MWと記載 |
| 電力販売量 | 16億1,430万kWh(2025年、部分稼働分) |
| 電力販売収入 | 3億2,994万ソモニ(2025年、付加価値税を除く) |
| 完成必要額 | 62億9,000万ドル(世界銀行の見積り) |
事業体としての性格
同社は公開株式会社の形をとる国有企業で、建設は大統領直属のプロジェクト管理グループと共同で進められている。国際入札を自社サイトで公示しており、資材・役務の調達情報が外部から追える点は、タジキスタンの国有企業としては例外的である。
完成に必要な資金は62億9,000万ドルと見積もられ、事業収入、国内資源、開発パートナーの資金で賄う計画になっている。世界銀行は2024年12月に第1期として3億5,000万ドルの国際開発協会(IDA)無償資金を承認し、2026年6月30日には第2期として3億ドルの無償資金を承認した。世界銀行が主導するログン調整グループには、アジア開発銀行、アジアインフラ投資銀行、欧州投資銀行、イスラム開発銀行、OPEC基金、サウジ開発基金、アブダビ開発基金、クウェート基金などが参加する。
部分稼働と収入
発電所は全体としては未完成だが、先行して据え付けられた発電機で発電と売電が始まっている。同社が公表する2025年の報告によれば、この年に供給した電力は16億1,430万kWh、付加価値税を除く販売額は3億2,994万ソモニだった。月ごとの供給量の振れは大きく、最も少ない7月が3万1,000kWh、最も多い9月が2億4,522万kWhと桁違いの開きがある。ヴァフシュ川の流量と貯水池の水位、それに発電機の据え付け工事の進み具合が、そのまま生産に表れる。
電力の売り先は国有のバルキ・トジクで、代金の回収は同社の財務状況に左右される。2026年7月13日の記者会見でバルキ・トジクは、ログンHPPへの債務を半年で約1,400万ドル減らしたと説明した。建設中の発電所が売電収入で建設費の一部を賄う構図であるだけに、買い手の支払い能力が事業の進捗に直結する。
収入の3%を社会保障へ
タジキスタン政府は、建設期間中はログンの電力販売収入の3%を、完成後は5%を、全国的な社会保障プログラム(ベネフィット・シェアリング・プログラム)に充てることを世界銀行に対して約束している。同社が公表する年次報告は、まさにこの3%の算定表であり、2025年の拠出額は989万8,233ソモニと計算されている。大型インフラの収入を貧困層の支援に結びつける仕組みを、事業会社の会計として毎年公表している点が特徴である。
参考資料
- History — Rogun HPP(公式サイト。2026年8月時点でサーバー証明書が期限切れのため、ブラウザが警告を表示する) ↗
- Report on the sale of generated electricity and the calculation of the profit distribution fund from the revenue of OJSC «Rogun HPP» in 2025(公式PDF。同上の証明書の警告が出る) ↗
- World Bank Supports Rogun Hydropower Project — World Bank(2024年12月17日) ↗
- Advancing Energy Security and Jobs Through the Transformative Rogun Hydropower Project — World Bank(2026年6月30日) ↗
- Barqi Tojik reports lower debts and improved financial position — Asia-Plus(2026年7月14日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。