解説 · 2026年8月時点
アナクリア深水港は、ジョージアが黒海沿岸に建設している同国初の大水深港である。完成すれば大型コンテナ船がコーカサスへ直接寄港できるようになり、中国と欧州をロシアを通らずに結ぶ中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)の黒海側の出口が太くなる。構想から10年以上、事業者の交代を繰り返してきた案件で、2026年に国が全面的に主導する体制へ切り替わり、海側の工事が動き出した。
| 正式名 | アナクリア深水港(Anaklia Deep Sea Port)。事業主体はジョージア国営会社 |
|---|---|
| 所在 | ジョージア西部・黒海沿岸のアナクリア |
| 事業方式 | 国が中核インフラと用地を保有し、ターミナルの運営を民間へ貸し出す「ランドロード型」(2026年7月に方針決定) |
| 海側工事 | ベルギーのヤン・デ・ナルが浚渫と防波堤を担当 |
| 工事の内容 | 海底を17.5メートルまで浚渫し、全長1,380メートルの防波堤を建設 |
| 契約額 | 当初約2億390万ドル。2026年の再交渉で約5,250万ドル減額 |
| 進捗 | 2026年8月2日に浚渫船トリスタン・ダ・クーニャが到着し浚渫開始 |
| 完成目標 | 2029年 |
事業者をめぐる曲折
2022年、ジョージア政府は国が51%を保有する形で事業を再起動させ、入札を実施した。2024年5月、中国交通建設と中国港湾投資を含む中国系のコンソーシアムが唯一の完全な保証を伴う応札者として落札し、国営会社「アナクリア深水港」が51%、コンソーシアムが49%を持つ体制が想定された。
しかし交渉はまとまらなかった。2026年7月6日、ジョージア経済相は中国系コンソーシアムとの協議が終わったことを明らかにし、国が港を開発・保有する「ランドロード型」へ方針を転換すると発表した。国が航路、防波堤、用地といった中核インフラを保有し、ターミナルの運営と商業機能については各国の企業を貸主として招く方式である。2026年8月時点で、ターミナル運営者は確定していない。
海側工事の進捗
海側の工事は、世界大手の浚渫会社であるベルギーのヤン・デ・ナルが担う。2024年8月に契約が結ばれ、海底の浚渫、防波堤の建設、進入航路と回頭泊地の整備を受け持つ。契約額は当初約2億390万ドルだったが、2026年の再交渉で技術仕様を変えないまま約5,250万ドル減額された。
工事の内容は、海底を17.5メートルまで掘り下げ、全長1,380メートルの防波堤を築くことである。2026年8月2日、浚渫船トリスタン・ダ・クーニャがアナクリア沖に到着して浚渫が始まり、同月には大型のトレーリングサクションホッパー浚渫船アル・イドリシも合流した。2隻で進入航路と回頭泊地の浚渫を進める。完成目標は2029年である。
近隣にはすでにポチ港(APMターミナルズ運営)とバトゥミ港があるが、いずれも水深の制約から大型コンテナ船を受け入れられない。アナクリアが完成した場合の3港の役割分担は、ジョージアの港湾政策の焦点であり続けている。
参考資料
- BREAKING NEWS: Jan De Nul begins Anaklia dredging project — Dredging Today(2026年8月2日) ↗
- China pulls out of Anaklia Port, Georgia to take over development — OC Media ↗
- Building a new deep water port in Anaklia, Georgia — Jan De Nul ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。