資料写真:ガス設備の点検/Official website the President of Azerbaijan(CC BY 4.0)出典

エネルギー・資源

アゼルバイジャン、ザンゲズル送電線の第1期が97%完成。ジャブライル〜アグバンドの74キロ・330キロボルト

アゼルエネルジが「ザンゲズル」送電線の第1期工事について97%完了と明らかにした。ジャブライルからアグバンドまで74キロ、2回線、330キロボルト、送電容量1,000メガワット。残る3区間はザンゲズル回廊を通る44キロを含む合計374キロで、飛び地ナヒチェヴァンを経てトルコへ延ばす計画である。

この記事が扱う国。国境は Natural Earth(パブリックドメイン)、点は各国の首都の位置。

アゼルバイジャンの国営電力会社アゼルエネルジは8月21日、「ザンゲズル」送電線の第1期工事について97%が完了したと明らかにした。同社がAPAエコノミクスの照会に回答し、同じ内容を同日のうちに自社サイトでも告知した。ジャブライルからアグバンドまでの74キロを結ぶ、2回線・330キロボルト・送電容量1,000メガワットの高圧送電線である。

鉄塔はアンカー型と中間型を合わせて296基。1基あたりの重さは平均30トンを超え、高さは45メートル近い。同社は、今年の冬から春、夏にかけて厳しい気候と険しい地形のなかで工事を進め、工程を前倒しして最短の期間で仕上げたとしている。大統領の指示に基づく事業だと同社は説明する。

目的は二つ重なっている。一つは飛び地ナヒチェヴァン自治共和国を国の統一エネルギーシステムへ完全に統合することで、同社は、自治共和国が周波数の調整で外国に依存している状態を解消できるとしている。もう一つはアゼルバイジャン・ナヒチェヴァン・トルコ・欧州を結ぶ国際エネルギー回廊を形づくることで、欧州のエネルギー市場への到達と、グリーンエネルギーの送電が理由に挙げられている。同社はこれを同国史上最大級のエネルギー事業の一つと位置づけた。

送電線は4つの区間からなる。次の段階として示されたのは、このうち第1期を除く3区間である。

区間距離状況
ジャブライル〜アグバンド74キロ97%完了
ザンゲズル回廊を通過する区間44キロ次段階
オルドゥバド〜ナヒチェヴァン100キロ次段階
ナヒチェヴァン〜トルコ230キロ次段階

完成が近い74キロは全区間がアゼルバイジャン領内を通る。残る3区間は合計374キロで、うち44キロはアルメニア領を横切るザンゲズル回廊の区間にあたる。両国は2025年8月にワシントンで共同宣言に署名し、1年が過ぎた。ただし今回の告知は、この44キロをいつ、どのような取り決めのもとで施工するのかには触れていない。距離の上で最も短い区間が、進め方の上では最も動かしにくい。

電力の輸出という文脈も重なる。アリエフ大統領はガスと石油に加えて電力も欧州市場へ供給する意向を示しているが、そのときに示された経路はジョージアとトルコを通るものだけだった。ザンゲズル線が全区間で完成すれば、ナヒチェヴァンを経てトルコへ入る経路が加わる。ジョージアの系統を通らない選択肢を持てるかどうかは、通過の条件をめぐる交渉の力関係にも関わってくる。

もっとも、グリーンエネルギーの送電という説明が足元の数字に裏づけられているわけではない。1〜7月は風力発電が22倍の6億600万kWhへ増える一方、発電量全体は3%減った。同じ期間に火力が8.7%減っており、再生可能エネルギーの増加は国内の減少分を埋める側に回っている。輸出に向ける余力が生まれるかは国内消費と総発電量の動き次第で、送電線はその条件が整ったときの出口にあたる設備になる。

公表されているのは距離と仕様、進捗率までで、事業費、資金の出どころ、各区間の完成時期は示されていない。第1期はアゼルバイジャンが自国領内で単独に進められる区間であり、97%という数字はその条件下での進捗である。残る374キロのうち他国の領土を通る部分をどう進めるかは、送電線の技術ではなく合意の問題として残っている。

この記事の日付 2026年8月21日 は、出典が発表された日です。

本サイトでの初出 2026年8月22日 10:00

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