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ソリッドコア・リソーシズ

アスタナ国際取引所に上場するカザフスタンの金生産大手。旧ポリメタル・インターナショナルで、クズィルとバルバラの2鉱山を操業し、難処理金鉱の処理拠点エルティスPOXを建設している。

Solidcore Resources plc
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

ソリッドコア・リソーシズ(Solidcore Resources plc)は、カザフスタンの金生産大手である。生産拠点はアバイ州のクズィル鉱山とコスタナイ州のバルバラ拠点の2か所で、2025年の金換算生産量は39万5,000オンス、売上高は15億ドルだった。同社は自らを「カザフスタンで3位以内の金生産者」と説明している。

前身は、ロシアとカザフスタンに鉱山を持ちロンドン証券取引所に上場していた金銀生産大手ポリメタル・インターナショナルである。ロシアのウクライナ侵攻後の制裁と対抗制裁のなかで、2023年に登記地を英王室属領ジャージー島からアスタナ国際金融センター(AIFC)へ移し、2024年にロシア事業を売却して社名を改めた。国際金融センターへ「会社ごと引っ越した」事例として、AIXにとっても特異な位置を占める。

カザフスタンの民間鉱山会社としては、国際会計基準に基づく年次報告書と四半期の生産実績を英語で公表する数少ない存在である。同社の開示は、この国の金鉱業と、AIFCという法域が実際にどう機能しているかを外から確認できる資料でもある。

正式名Solidcore Resources plc
旧称Polymetal International plc。2024年6月11日に現社名へ改称
設立2010年7月29日、ジャージー島の会社法に基づき設立。2023年8月7日にアスタナ国際金融センター(AIFC)へ再登記
登記・本社カザフスタン・アスタナ(AIFC、コナエフ通り10、13階1306号室)
事業金の採掘・処理。難処理鉱(refractory ore)の加圧酸化(POX)処理に強みを持つ
生産資産クズィル鉱山(アバイ州)、バルバラ拠点(コスタナイ州)
開発案件エルティスPOX(パブロダル経済特区)、シリムベト(北カザフスタン州、スズ・銅、持分55%)
生産量金換算39万5,000オンス(2025年通期、支払対象ベース)。鉱山からの産出量は50万8,000オンス
販売量金換算41万2,000オンス(2025年通期)
売上高15億ドル(2025年通期、前年比13%増)
調整後EBITDA9億7,200万ドル(2025年通期、37%増)。EBITDAマージン65%
純利益6億6,200万ドル(2025年通期)。基礎的純利益は7億100万ドル
コスト総現金コスト(TCC)1オンスあたり1,138ドル、総維持コスト(AISC)1,532ドル(いずれも2025年通期、金換算)
平均実現金価格1オンスあたり3,658ドル(2025年通期、前年比52%増)
ネットキャッシュ4億6,400万ドル(2025年末)、6億4,800万ドル(2026年6月末)
埋蔵量金換算1,190万オンス(2026年1月1日時点、平均品位3.0g/t)。埋蔵量とは別に鉱物資源量380万オンス(平均品位2.6g/t)
従業員平均3,884人(2025年)
上場アスタナ国際取引所(AIX、ティッカーCORE/CORE.K)。2019年から上場。ロンドン証券取引所は2023年8月29日、モスクワ取引所は2024年10月15日に上場廃止。KASEには上場していない
株主マーデン・インターナショナル・インベストメント(オマーン)31.7%、役員・上級管理職0.79%、浮動株67.5%(2026年3月31日時点)
株式数発行済5億6,655万4,987株。うち自己株式1億2,340万8,853株、議決権のある株式は4億4,314万6,134株(額面1株0.03ドル)
配当2025年期は無配。成長投資を優先する方針を示している

ポリメタルからの分離

会社そのものは2010年7月29日、ジャージー島の1991年会社法に基づきポリメタル・インターナショナルとして設立された。ロシアとカザフスタンの金・銀鉱山を傘下に持ち、ロンドン証券取引所のプレミアム区分とモスクワ取引所に上場し、2019年からはAIXにも上場していた。

2023年5月10日、同社は登記地をジャージー島からAIFCへ移す方針を発表した。再登記は2023年8月7日付で完了し、AIXが主たる上場先となった。ロンドン上場については2023年7月10日付の通達で株主に取消しを諮り、同年8月29日に上場が終了した。

2024年2月18日、ロシア事業の売却契約を結んだ。対象はロシアの資産を保有する持株会社JSCポリメタルの全株式で、買い手はJSCマンガゼヤ・プラスである。取引は株主総会の承認と当局の許可を経て2024年3月7日に完了した。売却代金は5,000万ドルだが、完了前にJSCポリメタルから同社へ総額14億2,900万ドル(税引前)の配当が支払われ、うち11億5,100万ドルはグループ内債務の返済に充てられ、2億7,800万ドルが手元に残った。買い手からの代金と留保した配当を合わせた税引後の現金収入は3億ドルである。連結上は26億2,600万ドルの売却損を計上した。

売却されたロシア法人がポリメタルの名を引き継いだため、残った側が名前を変える必要が生じた。2024年6月11日の定時株主総会で社名をソリッドコア・リソーシズへ改め、AIXでのティッカーもCOREとなった。社名は探鉱で用いるコアドリリング(core drilling)に由来する。モスクワ取引所については2024年6月に上場廃止を申請し、同年9月27日に株式交換の提案を完了、10月15日に上場廃止となった。

なぜ再登記したのか

同社が2023年5月10日に公表した再登記の提案は、理由をロシアの対抗制裁に置いている。ロシアは2022年3月7日、ジャージー島を「非友好国」の一覧に加えた。ジャージー島で設立された同社は、その時点からロシアの対抗制裁措置の対象となり、ロシア国内の子会社との間で通常の企業活動(資産の売買や組織再編、資金のやり取り)を行うことが著しく制限された。取締役会はこれを「グループが現在の形で存続すること自体に重大なリスクを及ぼす」と説明している。

移転先としては、ドバイ国際金融センター(DIFC)、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)、香港も検討された。AIFCが選ばれた理由として、取締役会は3点を挙げている。ロシアの対抗制裁による制限をできるだけ多く取り除けること、株主にとって従前と近い法環境(英国法の原則に基づく法域)であること、そして新会社を設立せずに資産と負債を引き継いだまま「継続」の形で移転でき、その形式がロシアの対抗制裁の下でも成立することである。

再登記の代償はロンドン上場だった。AIFCへの移転により、同社の株式はCRESTでの決済ができなくなり、ロンドン市場の主要市場に上場を維持する基本要件を満たせなくなった。会社は2022年後半から預託証券や預託権益の提供者を探したが、応じる業者を確保できなかった。その結果、取引の停止を経て上場の取消しに至っている。

株主の側にも影響が残った。欧州の決済機関ユーロクリアで保管されていた株式のうち、制裁対象となったロシアの保管機関を経由するものが動かせなくなったためである。同社は2024年から複数回にわたり株式交換の提案を行い、2025年7月14日に最終の交換提案を発表、同月29日の株主総会で承認を得た。応じなかった分については同年12月22日、1株2.57ドルで3,054万4,186株を強制買い取りし、代金7,900万ドルを支払って自己株式とした。この結果、自己株式は1億2,340万8,853株、議決権のある株式は4億4,314万6,134株となっている。なお1,110万株分については、保管機関に関する制裁の解除とユーロクリアによる分配を条件とする交換の合意が別に結ばれているが、2025年12月31日時点でこの条件は満たされておらず、会計上も資産・負債として認識されていない。

制裁との関係

売却したJSCポリメタルは米財務省外国資産管理室(OFAC)の制裁対象であり、2024年3月7日の売却完了によってグループから切り離された。この点は決着している。

一方で、操業上の関係は残った。クズィル鉱山が産出するのは金の含有率は高いが処理の難しい難処理精鉱で、これを金に変えるには加圧酸化(POX)設備が要る。同社はこの工程を、ロシアのアムールPOX(Amur Mining and Metallurgical Plant JSC、JSCポリメタルが保有)へ委託してきた。同設備はOFACの制裁リストに掲載されている。同社は2025年5月、米財務省から、所定の要件を満たすかぎりソリッドコアとその子会社バキルチク鉱業に対して制裁を科す意図はないという書面の確認を得た。この確認は発行日から1年間有効で、要件が満たされ続ければ延長されうる、という条件付きのものである。

委託先の制約は実際に生産へ影響した。2025年前半にはアムールPOXが制裁に関連する問題で同社の精鉱の処理を止め、2025年通期の金換算生産量は39万5,000オンスと前年比19%減、当初のガイダンス42万オンスを6%下回った。処理は2025年後半に安定を取り戻している。2026年5月にはロシアの大統領令による金の輸出規制の変更を受け、5月下旬から7月初めまでドーレ地金の出荷が滞り、アムールPOXに在庫が積み上がった。出荷は7月に再開している。

同社はこの依存を減らすため、2025年にカザフスタンのカザフムィス製錬所でクズィル精鉱の処理を試験し、短期の委託契約を結んだ。クズィルの高炭素精鉱の30〜60%について長期の委託契約も検討している。より根本的な解決策が、後述するエルティスPOXの建設である。

事業と生産拠点

クズィル鉱山はアバイ州にあり、バキルチク鉱床を採掘する。2018年に生産を開始し、鉱山寿命は2054年までとされる。従業員は1,519人。露天掘りで採った鉱石を年間240万トンの浮遊選鉱設備で処理し、金品位の高い精鉱を作る。2025年の処理量は247万トンで前年比2%増、処理鉱石の金品位は4.9g/t、回収率は88.9%で、鉱山レベルの金産出量は34万7,000オンスだった。ただし委託処理の遅れにより、支払対象ベースの生産は23万4,000オンスと前年比27%減にとどまった。調整後EBITDAは6億8,700万ドルである。露天掘りは段階的に縮小し、2030年から坑内採掘へ移る計画で、2025年には新しい尾鉱堆積場の第5期(全8期)が稼働した。

バルバラ拠点はコスタナイ州にあり、バルバラ鉱床とコマル鉱床、および第三者から購入する鉱石を処理する。従業員は1,630人。金鉱石を年間320万トンの浸出設備で、銅鉱石を年間100万トンの浮遊選鉱設備で処理する。金と銅を産出する点でクズィルと異なる。2025年の生産は金換算16万オンスで前年比5%減、調整後EBITDAは3億3,200万ドルだった。同年12月には拠点内に23MWの太陽光発電所が稼働した。2026年後半には40MWのガス火力発電所の稼働が予定されており、両者が揃えば選鉱場の電力需要をほぼ賄えるとしている。

2026年上期の生産は、委託処理の回復により大きく戻した。金換算の生産量は21万オンスで前年同期比71%増、販売量は20万5,000オンスで97%増、売上高は9億7,200万ドルで199%増である。同社は2026年通期で約54万オンスの生産を見込んでいる。

エルティスPOXと開発案件

エルティスPOXは、パブロダル経済特区に建設中の難処理精鉱処理拠点である。カザフスタンで初の大規模な全工程型の加圧酸化設備で、年間最大30万トンの金精鉱を処理し、最大50万オンスの金をドーレ合金の形で産出する設計である。原料はクズィルの精鉱と第三者からの精鉱で、投資額は約10億ドル、稼働開始は2028年、事業期間は30年、2028年までに約500人の常用雇用を見込む。基本設計はハッチ(カナダ)、オートクレーブの製作はCOEKエンジニアリング(ベルギー)、立ち上げ支援はプロセス・プランツ・インターナショナル(オーストラリア)が担う。オートクレーブは2025年10月20日に建設現場へ搬入・据え付けられた。

資金手当ては2026年に整った。同年7月3日、総額6億ドルの融資契約を公表している。内訳は欧州復興開発銀行(EBRD)の期間10年・3億ドルの融資と、INGを主幹事としソシエテ・ジェネラル、アブダビ・コマーシャル銀行が各1億ドルを分担する期間5年(7年へ延長可能)の協調融資3億ドルである。追加で最大3億ドルを引き出せる枠も付く。据置期間は36か月で、返済は建設終了後の2029年に始まる。これとは別に、KfW IPEX銀行との間で期間7年・最大1億ドルの融資について基本合意書を交わしている。

もう一つの開発案件がシリムベト(Syrymbet)である。北カザフスタン州アイルタウ地区にある大型のスズ・銅鉱床で、同社は2024年に持分55%を8,250万ドルで取得した。JORC基準による鉱物資源量はスズ37万5,000トン、銅13万5,000トンである。露天掘りで開発する計画で、建設開始は2026年、生産開始は2029年、概念的な鉱山寿命は2048年までとされる。同社は2026年9月に建設の投資判断を行う見通しを示している。このほか銅ポーフィリーの探査案件ベショキについても2026年に投資判断が予定されている。同案件では2025年に持分10.7%を1,500万ドルで取得し、探査を担うバイ・タウ・ミネラルズへ2,200万ドルを貸し付けている。

上場と株主構成

2026年8月時点で、同社の株式はすべてAIXでの取引に登録されている。ティッカーはドル建てがCORE、テンゲ建てがCORE.Kである。ISINはジャージー島時代のJE00B6T5S470をそのまま使っている。カザフスタン証券取引所(KASE)には上場しておらず、AIXが唯一かつ主たる上場先である。国内に2つの取引所があるカザフスタンにおいて、AIFC法域の企業がAIXだけに上場するという形の代表例にあたる。

筆頭株主はオマーンのマーデン・インターナショナル・インベストメントで、2024年1月に主要株主が同社へ交代した。保有株式数は1億4,067万2,607株で、2026年3月31日時点の議決権比率は31.7%である(強制買い取りで議決権のある株式総数が減ったため、2025年4月9日時点の29.7%から比率が上がった)。役員・上級管理職の保有は0.79%で、浮動株は67.5%である。取締役会長は2026年6月にアブドゥルサラム・アル・ムルシディ氏が就任した。

オマーンとの関係は資本にとどまらない。2026年7月にはオマーンで初の探鉱合弁を設立し、同年8月にはオマーン政府系のミネラルズ・ディベロップメント・オマーンと知見の交換に関する覚書を結んでいる。カザフスタンの鉱山会社が湾岸の資本と結びつく事例として注目される。

業績

2025年通期の売上高は15億ドルで前年比13%増だった。生産量と販売量がそれぞれ19%減、23%減となる一方、平均実現金価格が1オンス3,658ドルと52%上昇したためである。調整後EBITDAは9億7,200万ドルで37%増、EBITDAマージンは前年の54%から65%へ上がった。純利益は6億6,200万ドル、一時要因を除いた基礎的純利益は7億100万ドルで40%増である。

コストは上がった。総現金コストは1オンスあたり1,138ドルで前年比17%増、ガイダンスの上限1,100ドルを3%超えた。総維持コスト(AISC)は1,532ドルで18%増だが、ガイダンスの範囲内に収まった。押し上げたのはクズィルの販売減、国内の物価上昇、金価格に連動する鉱物採掘税と購入鉱石の費用で、テンゲ安が一部を相殺した。

営業キャッシュフローは6億300万ドルで7%減、設備投資は2億5,500万ドルで23%増、フリーキャッシュフローは3億4,800万ドルで20%減だった。設備投資が増えたのはエルティスPOXの建設が始まったためで、うち1億2,800万ドルが同案件に向かった。2025年末のネットキャッシュは4億6,400万ドル、現金は7億3,100万ドル、有利子負債は2億6,700万ドルである。

2025年期の配当は見送られた。同社は開発投資、M&A、探鉱を株主還元に優先すると説明しており、資本配分の方針は投資計画の資金手当てが十分に確保され、精鉱の委託処理をめぐる法的な不確実性がさらに明確になった後に見直しうるとしている。2026年通期の見通しは、生産量が約54万オンス、総現金コストが1オンス1,350〜1,550ドル、AISCが1,850〜2,050ドル、設備投資が約5億1,000万ドルである。コスト上昇の主因として、カザフスタンの新税法で導入された金価格に連動する累進的な鉱物採掘税を挙げている。2026年上期の決算は2026年9月8日に公表される予定である。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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