南ガス回廊(Southern Gas Corridor)は、アゼルバイジャン沖のシャフデニズ・ガス田の天然ガスを、ジョージアとトルコを経て欧州まで運ぶパイプライン群の総称である。ジョージア領内のサウス・コーカサス・パイプライン、トルコを横断するTANAP、ギリシャからアドリア海を渡ってイタリアへ至るTAPの三つがつながっている。2020年12月に欧州向けの供給が始まった。
| 構成 | サウス・コーカサス・パイプライン(SCP)→ TANAP(トルコ横断)→ TAP(アドリア海横断) |
|---|---|
| ガス田 | アゼルバイジャン沖のシャフデニズ |
| TANAP能力 | 年160億立方メートル(最大310億立方メートルまで拡張可能) |
| TAP能力 | 年100億立方メートル(最大200億立方メートルまで拡張可能) |
| 欧州向け開通 | 2020年12月 |
| 主な輸出先 | トルコ、イタリア、ジョージア、ブルガリア、ギリシャ |
ロシア産ガスの代替として
2022年以降、欧州がロシア産ガスからの脱却を進めるなかで、この回廊の戦略的な位置づけは大きく上がった。欧州連合はアゼルバイジャンからの輸入を2027年までに倍増させる覚書を結んでいる。2024年にはオーストリアやドイツ向けの供給も始まった。
2025年1〜9月のアゼルバイジャンのガス輸出は、トルコ向けが66.4億立方メートル(40.3%)、イタリア向けが62.5億立方メートル(38.0%)で、この2か国で約8割を占めた。ジョージア、ブルガリア、ギリシャが続く。
拡張の壁
TANAPは年160億立方メートルから310億立方メートルへ、TAPは100億から200億立方メートルへ拡張できる設計になっている。しかし拡張には巨額の投資が要り、その前提として長期の販売契約が必要になる。脱炭素の政策目標を掲げる欧州側が、20年、30年先までのガス購入を約束できるかという矛盾が投資判断を止めている。
また、アゼルバイジャン自身のガス生産にも限りがある。輸出を大きく増やすには、カスピ海を横断してトルクメニスタンのガスを引き込む「トランスカスピ海パイプライン」が要るとされるが、カスピ海の法的地位と環境影響をめぐる調整が長年まとまっていない。
参考資料
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。