中央アジア・コーカサスの8か国のうち、海に面しているのはジョージアだけで、カスピ海に面する4か国も外洋には出られない。域内の移動と、域外との人の往来は航空に大きく依存する。鉄道は貨物には効くが、モスクワやイスタンブールへ半日で着く手段は空路しかない。
この地域の航空を読むときに押さえておくとよいのは三つである。第一に、各国に国営または国営由来の基幹航空会社があり、その多くが空港も同じ系列で運営していること。第二に、空港の使用料や給油といった役務の値段が当局の認可制で、値上げには公聴会が要ること。第三に、旅客数の統計が「空港で扱った人数」と「自国籍の航空会社が運んだ人数」で別に取られており、混同すると数字が合わなくなることである。
2022年以降、域内の路線網は広がり続けている。ロシア発着の需要の移動、中間回廊への注目、観光の伸びが重なり、各国が空港の新設と拡張に資金を投じている。一方で、機材とパイロットの不足、航空燃料の供給、系統的な整備能力といった制約は残っている。
| 海に面する国 | 8か国のうちジョージアのみ。カザフスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンはカスピ海に面するが外洋には出られない |
|---|---|
| 主な航空会社 | エア・アスタナとSCAT航空(カザフスタン)、ウズベキスタン航空(ウズベキスタン)、アゼルバイジャン航空(AZAL)、ソモン・エア(タジキスタン)、トルクメニスタン航空、ジオスカイ(ジョージア) |
| 空港の運営 | ウズベキスタン空港公社が国内の空港を一括運営。キルギスは空港会社、アルメニアはアルメニア・インターナショナル・エアポーツが担う |
| ジョージアの旅客(2026年4〜6月) | 空港で扱った旅客は約200万人で前年同期比5.7%減。出発が約100万人(7.0%減)、到着が約100万人(4.4%減) |
| ジョージアの便数(同) | 旅客便8,200便で4.7%減。旅客の94.5%が定期便 |
| ジョージアの貨物(同) | 空港で扱った貨物・郵便は1万1,300トン。うち到着が90.8%、出発が9.2%。貨物便は1,100便で21.1%増 |
| ジョージア籍の航空会社(同) | 運んだ旅客は14万1,100人で18.3%減、貨物は3万5,900トンで6.0%減。空港の扱い量とは別の系列 |
| カザフスタン・トルコ間 | 運航できる便数を週120便から224便へ拡大することで両国の航空当局が合意(2026年8月14日、イスタンブールで覚書に署名) |
| アンディジャン空港(ウズベキスタン) | 新旅客ターミナルは床面積1万9,650平方メートルで現ターミナルの約8.2倍。処理能力は毎時200人から1,000人へ、年間約100万人。2026年末完成予定 |
| ウルゲンチ空港(同) | 2億6,400万ドルの投資(2026年上半期の固定資本投資の内訳として公表) |
| ヴァジアニ新空港(ジョージア) | トビリシ近郊に年2,000万人規模の新国際空港を計画。アジア開発銀行の支援で調査が進む |
| 航空燃料 | ウズベキスタンは2026年7〜12月の需要を37万5,000トンと見込み、前年同期比27%増。ジョージアとイラクから輸入している |
| 料金の規制 | カザフスタンでは離着陸、航空保安、給油、貨物取扱などが認可制で、空港が値上げするには民間航空委員会の公聴会を経る |
| 上場している航空会社 | エア・アスタナはロンドン証券取引所、カザフスタン証券取引所、アスタナ国際取引所の3市場に上場している |
誰が飛ばしているか
各国の基幹航空会社は、いずれも国家と近い。カザフスタンのエア・アスタナは政府系ファンドと英BAEシステムズの合弁として出発し、2024年に上場した。同国にはこのほか、国内線と近距離国際線を厚く持つSCAT航空がある。ウズベキスタン航空、アゼルバイジャン航空、トルクメニスタン航空は国営で、タジキスタンのソモン・エアも同国の主要な担い手である。ジョージアは国営の基幹航空会社を持たず、ジオスカイなどの民間会社と、外国の航空会社の乗り入れで路線網が成り立っている。
空港の側も系列でまとまっていることが多い。ウズベキスタンでは空港公社が国内の空港をまとめて運営し、アンディジャンの新ターミナルのような投資も自ら実施する。キルギスは空港会社が主要空港を持ち、アルメニアは民間の運営会社が空港の運営権を握る。カザフスタンはアルマトイ国際空港のように空港ごとに会社が分かれ、外資が入った例もある。
旅客の規模と、統計の読み方
数字を比べるときに最初に確かめるべきなのは、その数が「空港で扱った旅客」なのか「自国籍の航空会社が運んだ旅客」なのかである。ジョージアの2026年4〜6月を例にとると、空港で扱った旅客は約200万人だが、ジョージア籍の航空会社が運んだ旅客は14万1,100人にすぎない。前者には外国の航空会社が運んだ乗客が全部入り、後者には自国の会社が国外で運んだ乗客が入る。両者は7倍以上違い、増減の方向も揃わない。
同じ四半期で、空港の旅客が5.7%減ったのに対し、貨物便は21.1%増えている。旅客と貨物は別の需要で動くので、片方の増減で航空全体を語ることはできない。
また、出発と到着を足した数を「旅客数」と呼ぶ国と、片道で数える国がある。ジョージア統計庁は出発約100万人と到着約100万人を足して約200万人としており、同じ人が往復すれば2回数えられる。国際比較をするときは、この数え方の違いをそろえる必要がある。
空港への投資が続いている
域内では空港の新設と拡張が同時に進んでいる。ウズベキスタンのアンディジャン国際空港では、1979年建設の旧ターミナルに代えて床面積1万9,650平方メートルの新ターミナルが建設中で、処理能力は毎時200人から1,000人へ5倍になり、年間約100万人を受け入れられるようになる。2026年末の完成予定で、8月17日時点の進捗は約40%だった。この事業は官民連携ではなく、ウズベキスタン空港公社の単独実施である。ホラズム州のウルゲンチ空港にも2億6,400万ドルが投じられている。
ジョージアでは、トビリシ近郊のヴァジアニに年2,000万人規模の新国際空港を建設する構想があり、アジア開発銀行の支援を受けて調査が進んでいる。現在のトビリシ国際空港の能力を大きく超える計画で、実現すれば同国の航空の位置づけが変わる。
キルギスでも、イシククル湖畔のカラコルで国際空港の工事が同市で最大の事業として進む。観光の受け入れ能力を増やす狙いが明示されている。
路線網の広がり
二国間の航空協定が路線の上限を決めるため、協定の改定はそのまま供給の増加につながる。カザフスタンとトルコは2026年8月13〜14日にイスタンブールで航空当局間の交渉を行い、14日に民間航空に関する新たな覚書に署名して、運航できる便数を週120便から224便へ広げることで合意した。
カスピ海を横断する路線も増えている。アゼルバイジャン航空は2026年、バクーとカザフスタン西部のアティラウを結ぶ路線を週4便で開設した。海路とパイプラインで結ばれてきた両岸が、旅客の直行便でもつながる形である。
トルクメニスタン航空は2026年10月25日から国際線を広く増便し、イスタンブール線を週12便から13便として毎日運航とするほか、カザン線を週4便から6便、ホーチミン線とミラノ線をそれぞれ週2便から3便、ソウル線を週2便体制にする。閉じた市場と見なされがちな同国でも、路線は外へ向かって増えている。
料金は規制されている
空港が提供する役務のうち、離着陸、航空保安、給油、貨物の取扱といった項目は、多くの国で当局の認可を要する規制対象になっている。カザフスタンでは運輸省民間航空委員会がこれを所管し、空港が値上げを届け出ると公聴会が開かれる。2026年には複数の地方空港が国内線向けの航空燃料供給の値上げについて公聴会にかけられている。
投資家の側から見ると、これは空港事業の収入の一部が行政の判断に左右されるということである。旅客の伸びがそのまま収入の伸びにならない場合があり、逆に燃料価格が上がっても即座に転嫁できるとは限らない。空港への投資案件を読むときは、どの収入が規制対象でどれが自由料金かを分けて見る必要がある。
燃料という制約
航空需要が伸びると、真っ先に効いてくるのが燃料である。ウズベキスタンは2026年7〜12月の航空燃料の需要を37万5,000トンと見込み、前年同期比で27%増えるとしている。同国は不足分をジョージアとイラクから輸入しており、便数の増加が燃料の輸入に直結する構図になっている。国内の製油能力と輸入経路が、路線をどこまで増やせるかの上限を決めることがある。
参考資料
- Main Indicators of Air Transport (2026, II Quarter)(ジョージア統計庁、2026年8月19日。原データはジョージア民間航空庁) ↗
- 同 PDF(旅客・便数・貨物の内訳) ↗
- Комитет гражданской авиации Министерства транспорта Республики Казахстан(カザフスタン運輸省民間航空委員会。料金の公聴会の告知) ↗
- Министерство транспорта Республики Казахстан(同運輸省) ↗
- Uzbekistan Airports(ウズベキスタン空港公社の公式サイト) ↗
- Andijan airport set to handle 1 million passengers annually(Kun.uz、2026年8月19日。新ターミナルの規模と進捗) ↗
- Aviation fuel imports(Gazeta.uz、2026年8月6日。2026年下期の需要見通しと輸入元) ↗
- Azerbaijan Airlines successfully operates its first flight to Atyrau(APA、2026年。バクー〜アティラウ線) ↗
- Air Astana(エア・アスタナ公式サイト) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。