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エネルゴ・プロ

チェコの電力会社。水力発電を軸に複数国で発電所を運営し、ジョージアとブルガリアで配電網を持つ。

ENERGO-PRO a.s.
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

エネルゴ・プロ(ENERGO-PRO a.s.)は、チェコに本社を置く電力会社である。水力発電所の取得・改修・運営を本業とし、あわせてブルガリアとジョージアで配電網を持つ。1994年にチェコ東部の町スヴィタヴィで創業し、現在は5か国で54か所の水力発電所を運営する。中欧の企業としては水力発電への投資規模が最も大きい。

この会社が中央アジア・コーカサスの読者にとって重要なのは、ジョージアの電力供給の骨格を握っているからである。同国では首都トビリシ圏を除く国土の大半で配電を担い、15か所の水力発電所とガス火力1か所も運営する。グループ全体の従業員約1万人のうち6,297人がジョージアにおり、国別では最大の事業所在地である。ジョージアの電力料金の請求書、停電の復旧、送配電網の更新投資は、いずれもチェコ資本のこの会社の経営判断を経る。

2025年12月期の連結売上高は14億9,100万ユーロで前年比4%増、EBITDAは3億4,800万ユーロで2%減だった。株式は上場していないが、ユーロ債と米ドル債を国際市場で発行しているため、業績を四半期・半期ごとに公表している。

正式名ENERGO-PRO a.s.(チェコの株式会社。登記番号63217783)
創業1994年、チェコ・スヴィタヴィ
本社チェコ・プラハ(Na Poříčí 1079/3a)
事業水力発電、配電、電力小売・トレーディング
所有形態非上場。持株会社DKホールディング・インベストメンツ(DK Holding Investments, s.r.o.)が全株を保有し、その先はチェコの実業家ヤロミール・テサシュ氏の単独保有
経営陣取締役会長ヤロミール・テサシュ、CEO ヤクブ・ファイフル(2024年11月就任)、CFO ヴラスティミル・オウジャダ
発電所水力発電所54か所(ブルガリア、ジョージア、トルコ、スペイン、ブラジル)。このほかジョージアにガス火力1か所
設備容量ENERGO-PRO a.s.が国別に公表する合計は約1,847メガワット(うちジョージアの604メガワットにはガス火力110メガワットを含む)。親会社DKホールディングは水力の合計を1,750メガワットとする
配電ブルガリアとジョージアの2網。顧客は合計260万件超、年間の配電量は約11テラワット時
売上高14億9,100万ユーロ(2025年通期、連結、前年比4%増)
EBITDA3億4,800万ユーロ(2025年通期、前年比2%減)
発電量水力4,363ギガワット時(2025年、前年比12%増)
設備投資1億9,300万ユーロ(2025年、うち64%が配電)
負債総額16億8,700万ユーロ(2025年末)
従業員約1万人(グループ全体)。うちジョージアが6,297人
管理資産25億ユーロ超(会社説明)

沿革

1994年、ヤロミール・テサシュ氏がチェコ・スヴィタヴィで創業した。2000年にブルガリアへ進出し、2002年から2004年にかけて同国の水力発電所8か所(102メガワット)を民営化で取得した。2006年にトルコとジョージアで事業を始め、翌2007年にジョージアで配電会社2社と水力発電所7か所(361メガワット)の民営化案件を取得した。2007年から2009年にかけてジョージアでさらに8か所の水力発電所を買い増している。

2010年にはトルコで水力5か所(93メガワット)を、ジョージアでガス火力のガルダバニ発電所(110メガワット)を取得した。2012年にはブルガリアでドイツのエーオン(E.ON)の配電事業を買収し、同国で配電網を持つに至った。2013年に同国で水力6か所(64メガワット)を追加している。2016年にテサシュ氏がENERGO-PRO a.s.の全株式を保有する体制になった。2017年にはジョージア東部カヘティの配電資産を取得し、同年に初のユーロ債3億7,000万ユーロを発行している。

2020年代は水力の取得が続いた。2019年から2020年にかけてコロンビアで開発事業を始め、2023年にスペイン・ガリシア地方の水力10か所(167メガワット)とフェロアロイ工場2か所を米サードストリートから取得、同年にブラジルへ支店を設けた。2024年1月には親会社DKホールディングからトルコのアルパスラン2ダム・水力発電所(280メガワット)を取得し、同年11月にブラジルでブルックフィールド系のファンドから小水力7か所(90メガワット)を買った。2025年1月にはトルコのカラクルト水力(97メガワット)を、同年10月にはブラジル・パラナ州イグアス川のバイショ・イグアス水力(350メガワット)を取得した。バイショ・イグアスは同社の単独最大の発電資産であり、チェコ企業による南米向け投資としても最大とされる。

所有と資本の構造

ENERGO-PRO a.s.は上場していない。株式は持株会社DKホールディング・インベストメンツ(DK Holding Investments, s.r.o.)が保有し、その先はテサシュ氏の単独保有である。DKホールディングはグループ各社の株式を持つとともに資金調達にも関与し、チェコ国内で2か所の流れ込み式水力発電所(合計10メガワット)を自ら運営する。DKホールディングの範囲で数えると水力57か所、設備容量1,750メガワット、年間発電量5テラワット時超となる。ENERGO-PRO a.s.の範囲(54か所)とは数字が異なるので、どちらの範囲の数字かを確かめる必要がある。

資金調達は国際債券市場で行っている。2017年の3億7,000万ユーロを皮切りに、2018年に2億5,000万ユーロ、2022年に3億7,000万ユーロ債の借り換えと初の米ドル建て債4億3,500万ドル、2023年には米国国際開発金融公社(DFC)の保証を付した3億ユーロ債を発行して2018年の2億5,000万ユーロ債を償還し、同年にスペインの水力取得にあわせて3億ドル債も発行した。2025年には2030年満期のグリーン・ユーロ債と2031年満期のユーロ債をあわせて10億5,000万ユーロ発行し、既存債務の借り換えと買収資金に充てている。2024年8月にはグリーンファイナンス・フレームワークを整備した。2025年末の総負債は16億8,700万ユーロで、手元流動性は現金1億3,300万ユーロと未使用のコミットメントライン約1億4,900万ユーロだった。

債券には2016年からブルガリア証券取引所(ソフィア)に上場しているものもある。上場企業ではないが、債券投資家向けに四半期・半期・通期の業績を公表しており、これが外部から同社の数字を追える主な経路になっている。

国別の事業構成

同社が国別に公表する数字は次のとおりである(設備容量・発電量・従業員数は公式サイトの掲載値)。ブルガリアは2000年進出、水力14か所、166メガワット、年間発電量428ギガワット時、従業員2,572人、配電網43,883キロ、顧客120万件超、年間供給6.6テラワット時。ジョージアは2006年進出、水力15か所とガス火力1か所、合計604メガワット、年間発電量1,720ギガワット時、従業員6,297人、配電網52,955キロ(2023年12月31日時点)、顧客130万件超。トルコは2006年進出、水力7か所、470.4メガワット、1,202ギガワット時、従業員145人。スペインは2023年進出、水力10か所、167メガワット、408ギガワット時、従業員249人。ブラジルは2023年進出、水力8か所、440メガワット、2,009ギガワット時、従業員26人。コロンビアは2019年進出で、建設中の水力1か所と従業員29人である。チェコ本社は従業員70人にとどまる。

従業員数の偏りが、この会社の性格をよく表している。発電事業は少人数で運営できるのに対し、配電事業は検針・保守・料金回収・現場対応に人手が要る。グループ全体の約1万人のうち、ジョージア6,297人とブルガリア2,572人の配電2社で9割近くを占める。

2025年の実績では、配電量はブルガリアが5,834ギガワット時(前年比3%増)、ジョージアが5,581ギガワット時(同1%増)で、両国はほぼ同規模である。電力販売はブルガリア7,300ギガワット時(1%減)、ジョージア4,292ギガワット時(4%増)だった。設備投資1億9,300万ユーロのうち64%が配電に向かい、とくにジョージアの配電網の更新と新規接続に充てられている。

ジョージア事業の位置づけ

ジョージアでの事業は、2021年4月15日にENERGO-PRO a.s.が設立したエネルゴプロ・ジョージア・ホールディングJSCの下に整理されている。同ホールディングが、配電を担うエネルゴプロ・ジョージアJSC、発電を担うEPジョージア・ジェネレーションJSC、小売を担うEPジョージア・サプライJSCの3社をそれぞれ100%保有する。配電と小売が別会社になっているのは、2021年に法制上の分離(アンバンドリング)が行われたためである。ガルダバニのガス火力110メガワットは、EPジョージア・ジェネレーション傘下のgPower社が保有し、系統の安定のための予備力を提供している。

配電網の免許区域は国土の約85%に及び、顧客数と営業区域の両面で同国最大の配電事業者である。ジョージアの電力は水力への依存が大きく、雪解けの春から夏に余り、冬に不足する。この季節変動が調達コストを揺らすため、規制当局が定める料金改定と国内の発電開発の進み方が、同社の収益を左右する。

投資の配分を見ると、この事業の位置づけがはっきりする。2025年のグループ設備投資1億9,300万ユーロのうち64%が配電に向かい、同社はその主な行き先としてジョージアの配電網の更新と新規接続を挙げている。前年の2024年も、設備投資が82%増えた理由としてジョージアの配電網整備を第一に挙げていた。設備の多くはソ連期に建てられたもので、送配電ロスの削減と供給の安定が長年の課題である。同社は2025年について、ブルガリア・ジョージアの両国で配電量を増やしながら網の損失を減らし続けたと説明している。

業績と数字の読み方

2024年12月期は連結売上高14億3,600万ユーロ(前年比13%増)、EBITDA3億5,500万ユーロ(同10%増)で、いずれも当時の過去最高だった。発電量も3,912ギガワット時と過去最高を記録している。2024年の設備投資は1億8,600万ユーロで前年比82%増、純有利子負債は11億ユーロ、純有利子負債/EBITDA倍率は3.1倍だった。

2025年12月期は売上高14億9,100万ユーロ(4%増)、EBITDA3億4,800万ユーロ(2%減)となった。発電量は4,363ギガワット時で12%増えたが、増加分はブラジルとトルコの買収によるもので、これを除くとトルコ・ジョージア・スペインの水量が少なかったために減っていた、と同社は説明している。ブルガリアとスペインで販売価格が上がったことが一部を相殺した。

この会社の業績を読むうえで最も大きな変動要因は降水量である。水力発電は燃料費がほぼかからないため、水量がそのまま利益に出る。同社自身、2025年のEBITDAの減少を「水文条件が前年ほど恵まれなかったため」と説明し、2026年については黒海周辺で水文条件が改善する前提で過去最高のEBITDAを見込むとしている。買収による発電量の増加と、水量による増減とを分けて読む必要がある。

設備容量の数字にも注意が要る。ジョージアの604メガワットにはガス火力110メガワットが含まれ、水力だけなら494メガワットである。また、ENERGO-PRO a.s.の範囲とDKホールディングの範囲では発電所の数(54か所と57か所)が違う。会社が「水力54か所」と言うときと「水力57か所」と言うときで、対象の法人が異なる。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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エネルゴ・プロ・ジョージア、110kV送電線に1,500万ラリ超を投資。停電の背景に系統の脆弱さ2026.08.12ジョージア西部のマルトヴィリ自治体で、配電会社エネルゴ・プロ・ジョージアが110キロボルトの高圧送電線を建設している。投資額は1,500万ラリを超える。同自治体の主要な供給源となり、アバシャとセナキの需要家には代替経路になる。