解説 · 2026年8月時点
緑の気候基金(GCF)は、開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動への適応を支援するために設けられた国際基金である。2010年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の194締約国が設立を決め、UNFCCCの資金メカニズムを運営する機関として位置づけられている。本部は韓国・仁川の松島にあり、気候変動に特化した基金としては世界最大である。
GCFは自ら現地に事務所を置いて案件を実施するのではなく、認証を受けた実施機関(Accredited Entity)を通じて資金を流す仕組みをとる。中央アジア・コーカサスでは欧州復興開発銀行(EBRD)とアジア開発銀行(ADB)がその主要な受け皿であり、GCFの資金は多くの場合これらの開発銀行の融資に上乗せされる譲許的な資金として現れる。
| 正式名 | Green Climate Fund(GCF) |
|---|---|
| 設立 | 2010年。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の194締約国が設立を決定 |
| 位置づけ | UNFCCCの資金メカニズムの運営機関。気候変動に特化した基金としては世界最大 |
| 本部 | 韓国・仁川(松島) |
| 累計承認額 | 134の開発途上国へ200億ドル超 |
| 資金の形 | 贈与、譲許的融資、保証、出資 |
| 配分の方針 | 緩和と適応に長期的に50対50で配分。適応資金の半分以上を後発開発途上国・小島嶼国・アフリカへ |
| 8か国での承認額 | 8か国合計で約13億ドル(2026年8月時点、地域プログラムの各国配分を含む) |
仕組み
GCFに直接申請できるのは、GCFの認証を受けた実施機関に限られる。認証機関には国際機関や多国間開発銀行のほか、各国の国内機関も含まれる。国内機関が直接認証を受ける経路は「ダイレクト・アクセス」と呼ばれ、アルメニアの環境プロジェクト実施ユニット(EPIU)はこの形で認証されている。
案件の種類は、大型・複雑な事業を対象とする通常の承認手続き(FP)と、小規模で低リスクな事業向けの簡易承認手続き(SAP)に分かれる。このほか、各国が申請能力を整えるための準備支援(レディネス)も別枠で提供される。
GCFの特徴は資本構成上の柔軟さにある。贈与、譲許的融資、保証、出資を組み合わせられ、他の機関より高いリスクを取れることから、単独では成立しない事業の資金の穴を埋める役割を担う。緩和と適応への配分は長期的に50対50を目標としている。
8か国での承認案件
2026年8月時点で承認された案件をGCFの資金額で見ると、タジキスタンが11件・約2億3,500万ドル、カザフスタンが6件・約2億2,900万ドル、アルメニアが10件・約2億500万ドル、ウズベキスタンが9件・約2億200万ドル、ジョージアが8件・約1億8,200万ドル、キルギスが7件・約1億4,900万ドル、アゼルバイジャンが3件・約7,400万ドル、トルクメニスタンが1件・約2,750万ドルである。ただしこの中には複数国にまたがる地域プログラムが多く含まれ、金額は各国への配分額である。
単独の案件で最大なのは、カザフスタンの再生可能エネルギー枠組み(FP047、2017年10月2日承認、GCF拠出1億1,000万ドル、実施機関はEBRD)である。同国の風力・太陽光事業に対するEBRDの融資に、GCFの譲許的資金を組み合わせて金利負担を下げる設計だった。
タジキスタンでは、水力発電部門の気候強靱性を高める案件(FP040、2017年、5,000万ドル、EBRD)が最大で、これはヌレク水力発電所の改修に関連する。このほか国際農業開発基金(IFAD)による農業支援プログラム(FP233、2024年、3,900万ドル)、国連世界食糧計画(WFP)による地域社会の強靱性向上(FP308、2026年7月2日承認、3,000万ドル)がある。
複数国にまたがる案件として、EBRDが実施する持続可能エネルギー金融ファシリティ共同融資プログラム(FP025、2016年、アルメニア・ジョージア・タジキスタン)、グリーンシティ・ファシリティ(FP086、2018年、アルメニア・ジョージア)、企業部門向けハイインパクト・プログラム(FP140、2020年、アルメニア・カザフスタン・ウズベキスタン)、金融システムのグリーン化(FP253、2024年、6か国)がある。ADBが実施するEモビリティ・プログラム(FP225、2024年3月6日承認)はアルメニア、ジョージア、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンを対象とし、氷河の融解に対応する「Glaciers to Farms(G2F)」地域プログラム(FP283、2025年10月30日承認)は8か国のうち7か国を含む。トルクメニスタンで承認された唯一の案件がこのG2Fである。
2026年に入ってからは、EBRDが実施する水インフラの適応プログラム「Resilient Water Systems for All」(FP309、2026年7月2日承認)にキルギスとタジキスタンが含まれ、それぞれ約3,176万ドルが配分されている。
読むときの注意
GCFの案件は地域プログラムの形をとることが多く、「GCFがキルギスに2,750万ドル」と報じられていても、それが単独案件なのか、8か国にまたがるプログラムの自国配分なのかで意味が変わる。案件番号(FPまたはSAPで始まる番号)が示されていれば、GCFの案件ページで対象国と各国配分を確認できる。
また、GCFの拠出額と事業の総額は別である。GCFの資金は多くの場合、実施機関の融資や当事国の負担と組み合わせて使われるため、事業規模はGCFの拠出額より大きい。
参考資料
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。