解説 · 2026年8月時点
ヤン・デ・ナル(Jan De Nul Group)は、ベルギー発祥の浚渫・海洋土木会社である。海底の土砂を掘って航路や泊地を深くする「浚渫」と、掘った土砂による埋め立てを本業とし、この分野ではベルギーのDEME、オランダのボスカリス、ファン・オールトと並ぶ世界大手「ビッグ4」の一角を占める。日本で名前を目にする機会は少ないが、世界の大型港湾、航路、LNG基地、人工島の建設では繰り返し登場する。大カスピ海地域では、ジョージア初の大水深港となるアナクリア深水港の海側工事を担っている。
| 正式名 | Jan De Nul Group |
|---|---|
| 創業 | 1938年(ベルギー) |
| 本拠 | グループ持株会社はルクセンブルク・カペレン。事業の中心はベルギー・アールスト |
| 事業 | 浚渫・埋め立て、港湾・海洋土木、洋上風力の基礎工事と海底ケーブル敷設、土木建築、環境修復 |
| 売上高 | 42億4,000万ユーロ(2025年通期、3年連続で過去最高) |
| 純利益 | 4億5,800万ユーロ(2025年通期) |
| 受注残 | 78億5,000万ユーロ(2025年末) |
| 従業員 | 約8,800人(2025年) |
| 所有形態 | 非上場の同族企業 |
沿革
1938年、ヤン・デ・ナル氏がベルギーで土木会社として創業した。戦後に海洋土木へ、1950年代から浚渫業へ事業を広げ、1970年代以降は中東やアジアの港湾建設を足がかりに国際化した。現在もデ・ナル家が全株式を保有する同族企業で、株式を上場していない。四半期ごとの市場の目にさらされない資本構成が、船舶という重い資産への長期投資を支えているとされる。
2025年通期の売上高は42億4,000万ユーロと3年連続で過去最高を更新し、純利益は4億5,800万ユーロ(前年比12%増)、受注残は78億5,000万ユーロに達した。従業員は約8,800人を数える。
事業と船隊
中核は浚渫・埋め立てで、世界最大級のカッターサクション浚渫船やトレーリングサクションホッパー浚渫船を含む大規模な自社船隊を持つ。船を自前で保有・運用できることがこの業界の参入障壁であり、同社の競争力の源泉でもある。
近年は洋上風力発電所の基礎据え付け、洋上変電所の設置、海底送電ケーブルの敷設といった海洋再生可能エネルギー分野の施工を第二の柱に育てている。2026年には大型ケーブル敷設船2隻(フレミング・ジェンキン、ウィリアム・トムソン)が就役する予定で、このほか汚染土壌の浄化など環境事業も手がける。
アナクリア深水港(ジョージア)
2024年8月、ジョージア政府との間でアナクリア深水港の海側インフラ工事の契約を結んだ。担当するのは海底の浚渫、防波堤の建設、アクセス航路と回頭泊地の整備で、工事は同年秋に始まった。
アナクリアはジョージア初の大水深港として黒海岸に建設されており、第1期では年間60万TEUのコンテナ取扱能力を整え、2029年の初入港を目指す。完成すれば大型コンテナ船がコーカサスに直接寄港できるようになり、中国と欧州を結ぶ中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)の黒海側の出口が太くなる。同社の施工の進み具合は、この地域の物流の将来を左右する要素の一つである。
参考資料
- Jan De Nul Group(公式サイト) ↗
- Building a new deep water port in Anaklia, Georgia — Jan De Nul ↗
- Record year for Jan De Nul — Dredging Today(2026年5月21日) ↗
- EXCLUSIVE: Construction of Anaklia Port starts — Dredging Today(2024年10月23日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。