解説 · 2026年8月時点
ニコラ(Nikora)は、食品製造とスーパーマーケットを兼ねるジョージアの企業グループである。1998年に食肉加工の小さな会社として出発し、2000年に自社製品を売る店を開いてからは製造と小売を組み合わせる形に転じた。2024年末時点で小売会社ニコラ・トレードは634店を運営し、グループの連結売上高は14億5,105万ラリ、従業員は約1万600人にのぼる。食肉加工では国内最大手の一角であり、組織小売でも上位3社に入る。
この会社の数字を読むときは、どの法人の話かを最初に確かめる必要がある。「ニコラ」という名前は少なくとも三つの意味で使われるからである。第一に持株会社であるJSC Nikora、第二にその小売子会社であるJSC Nikora Trade、第三にグループ全体の対外呼称であるニコラ・マネジメント・グループ(NMG)である。店舗数や小売シェアはニコラ・トレードの数字であり、連結売上高や製造の市場シェアはJSC Nikoraの数字である。両社は別々に社債を発行し、別々に格付けを取得している。
| 正式名 | JSC Nikora(親会社・持株会社、登記番号200050675)。小売事業はJSC Nikora Trade(同206255808)。グループの対外呼称はNikora Management Group(NMG) |
|---|---|
| 創業 | 1998年12月(食肉加工)。最初の店舗は2000年 |
| 本社 | ジョージア・トビリシ(A・ムレヴリシヴィリ通り2番) |
| 事業 | 食品製造(食肉、水産、乳製品、製パン、惣菜、ワイン)、スーパーマーケット、流通、輸入、商業不動産 |
| グループ構造 | JSC Nikoraが稼働中の子会社15社を持つ。Nikora Tradeの持分は96.6%(2024年12月31日時点) |
| 店舗 | Nikora Tradeが634店(2024年末)。売場面積10万9,610平方メートル |
| ブランド | 小売はニコラ・スーパーマーケット(2000年〜)とリブレ(2017年〜)。食品はニコラ、コリダ、ムザレウリ、メタブレ、パロマ、パネ、ドギス、オケアネなど |
| 売上高 | 14億5,105万ラリ(2024年通期、JSC Nikora連結・監査済み、前期比12.0%増) |
| EBITDA | 1億3,473万ラリ(2024年通期、JSC Nikora連結、利益率9.3%) |
| 従業員 | 約1万600人(2024年12月31日時点、グループ) |
| 格付け | JSC NikoraとJSC Nikora Tradeがともに発行体格付けBB−。2026年4月30日から格下げ方向のレビュー中 |
| 社債 | ジョージア証券取引所に上場。2社がそれぞれ1億2,000万ラリの発行枠を持ち、1回6,000万ラリずつ発行している |
三つの「ニコラ」
JSC Nikora(登記番号200050675)が持株会社で、2025年の社債発行目論見書によれば稼働中の子会社15社を傘下に置く。ほとんどを100%保有するが、例外がいくつかある。小売のJSC Nikora Trade(同206255808)は96.6%(2024年12月31日時点、2023年末も同じ)、マス養殖のヴァキジュヴリス・カルマヒが94%、製パンのムザレウリ1が90%(2024年末時点は80%)、不動産のニコラ・バクリアニとレフ・エル、輸入のミラ・ジョージアがそれぞれ50%である。
事業は四つに分かれる。食品製造(ニコラ、コリダ=食肉、オケアネ=水産、チヴェニ・フェルメリ=乳製品、ムザレウリ1=製パン、クリナリ=惣菜、ヴァキジュヴリス・カルマヒ=マス養殖、ナパレウリス・ヅヴェリ・マラニ=ワイン)、小売(ニコラ・トレード)、流通(パルトニオリ)、輸入(イントレード、マルチトレード)である。グループはこのほか商業不動産も手がける。
ニコラ・マネジメント・グループ(NMG)は、これらをまとめた投資・事業プラットフォームとしての呼称である。同社サイトは2026年8月時点で「15以上のブランド」「全国700店以上のスーパーマーケット」「500種類以上の自社製品」「1万人以上の従業員」を掲げている。これはグループ全体の表示であり、監査済みの財務諸表に対応する数字とは範囲が異なる。
食肉加工から小売網へ
1998年12月に設立され、1999年1月に最初の製品を出した。当時はソーセージを売る小さな食肉加工会社だった。2000年に最初の店舗を開き、2001年から2004年にかけて流通網の構築、牧場、水産・乳製品の製造、マス養殖、半調理品(ムザレウリ)とアイスクリームへと広げた。2005年から2008年には西ジョージアと東ジョージアへ展開し、輸入会社イントレードを設立、ワイン製造を取得し、持株会社JSC Nikoraを設立した。
小売網の拡大は買収を伴っている。2009年から2013年にマシヴィのチェーンを取得し、2014年から2017年にサンデイズ、キ・バトノ、ホムマルトを、続いてヌゲシとリブレを取得して国内最大のチェーンとなった。ニコラ・トレードの店舗数は2010年の52店から、2023年12月に579店、2024年末に634店へ増えた。直近3年間で261店を新規に加えた計算である。売場面積は2017年の2万3,757平方メートルから2024年に10万9,610平方メートルへ約4.6倍になった。
店の規模は小さい。2024年12月31日時点で、店舗の73%は売場面積200平方メートル未満である。小型店を数多く並べる形で、キオスク規模から1,000平方メートル程度までの複数フォーマットを使い分けている。ディスカウント志向のリブレは2017年から展開しており、同社サイトによれば全国300拠点を超える。
市場での位置
2025年の目論見書に載る市場分析によれば、ジョージアのFMCG(日用消費財)小売市場は2018年から2024年に年平均13.2%で伸び、2024年に227億ラリ(付加価値税込み)に達した。このうちブランドチェーンが占めるのは40.4%で、残りは非ブランド店、薬局、そして依然として大きい非公式の商いである。ブランドチェーンの比率は2028年に52.0%へ上がると見込まれている。組織化された小売が市場の4割にとどまり、そこがまだ伸びしろだという構図が、この業界の成長の背景にある。
ブランドチェーンは46社が競合し、2024年は上位5社で市場の74.9%を占めた。内訳はデイリー・グループ27.5%、オリ・ナビジ17.0%、ニコラ16.4%、カルフール10.0%、アグロハブ3.9%である。首位のデイリーは統合によって膨らんだ。2024年7月にジョージア競争・消費者保護庁がデイリーによるフードマートの全株式取得を承認し、スパー(イオリを含む)、デイリー、グヴィリラの各チェーンが一つになった。
シェアの数字は分母によって変わるので注意が要る。スコープ・レーティングスは組織小売市場でのニコラ・トレードのシェアを2022年18.1%、2023年19.0%、2024年19.4%としており、目論見書のブランドチェーン市場ベースの16.4%とは基準が違う。上昇傾向という点では両者は一致している。
製造側では位置がもっと強い。食肉加工セクターの売上は2024年に6億5,090万ラリで、上位3社が4割超を占める。首位はリーダー・フード(Lider Foodi)の14.4%、次いでニコラ14.2%、コリダ12.3%であり、ニコラとコリダはいずれもJSC Nikoraの100%子会社なので、グループ合計では26.5%になる。乳製品セクターは2024年に7億1,440万ラリの規模である。
収益性の低下
成長の一方で利益率は落ちている。JSC Nikora連結の2024年通期は、売上高が12.0%増の14億5,105万ラリだったのに対し、EBITDAは1億3,473万ラリ(利益率9.3%)と前期の1億4,526万ラリ(同11.2%)から減った。営業利益(EBIT)は6,832万ラリで利益率4.7%(前期6.9%)、税引前利益は3,611万ラリと前期の6,457万ラリからほぼ半減している。
会社が挙げる理由は四つある。第一に人件費で、2022年から2023年にかけての公的部門の賃上げが民間にも波及し、1万人を超える従業員の給与を上げざるを得なかった。従業員数自体も2023年末の1万21人から2024年に1万595人へ増えている。第二にFMCG市場の伸びの鈍化。第三に、2024年第4四半期に新しいERP(SAP)への移行で業務の混乱が生じ、その四半期の売上が計画を下回ったこと。第四に組織小売チェーン間の競争激化で、値引き、販促、広告の費用が増えたことである。
スコープ・レーティングスの見方も重なる。同社が調整したニコラ・トレードのEBITDA利益率は2021年の10.0%をピークに2024年は7.2%へ低下し、主因は人件費の上昇だとされる。あわせて指摘されているのが在庫の減耗・陳腐化で、これが売上の2%に相当し、粗利率を200ベーシスポイント押し下げている。SAPの導入で在庫回転を速める取り組みは、この問題への対応でもある。スコープは2025年に利益率が6%近くまで下がった後、価格戦略の見直しで2026年に7%程度へ戻ると見ている。
社債による資金調達
ニコラは早くからジョージアの社債市場を使ってきた。同社の公表によれば、2016年にニコラ・トレードが500万ドル(2年、年11%)、2017年にJSC Nikoraが1,000万ドル(年9%)を発行し、いずれも償還済みである。以降はラリ建てに移り、2018年にニコラ・トレードが2,500万ラリ、2019年にJSC Nikoraが2,800万ラリ、2021年にニコラ・トレードが3,500万ラリ、2022年にJSC Nikoraが3,500万ラリを発行した。2022年の起債は、ジョージアの年金庁が国内社債に初めて投資した案件でもある。
現在の枠組みは、2社がそれぞれ1億2,000万ラリの発行プログラムを持ち、1回あたり6,000万ラリを出す形である。ニコラ・トレードは2024年に第1トランシェ6,000万ラリ(TIBR3か月+325ベーシスポイント、5年、引受はTBCキャピタル、「プロデュース・イン・ジョージア」の資本市場支援プログラムの枠内)、2025年7月30日に第2トランシェ6,000万ラリ(同+350ベーシスポイント、5年)を発行し、後者は物流センターの建設に充てるとしている。JSC Nikoraも2025年に自らのプログラムの第1トランシェ6,000万ラリ(同+350ベーシスポイント、5年、引受はガルト・アンド・タガート)を発行した。
したがって、この会社の社債は1回あたり6,000万ラリ、プログラムの枠が1社あたり1億2,000万ラリという規模である。有利子負債の内訳では社債より借入とリース債務のほうが大きく、2024年12月末で借入が2億706万ラリ、リース債務が1億6,330万ラリだった。
物流センターと新工場
調達した資金の使い道ははっきりしている。まず新しい食肉加工工場で、2022年から2025年第1四半期までに4,480万ラリを投じ(2022年300万、2023年1,210万、2024年2,710万、2025年第1四半期260万)、その大半4,340万ラリは銀行借入で賄われた。工場は完成し、段階的に全能力へ移行している。フル稼働すれば日産能力が約50%増え、輸出も視野に入るとしている。
次が物流センターである。トビリシのアレクセエフカ地区で2022年から2023年に18ヘクタールの土地を730万ドルで取得し、そのうち10ヘクタールに延べ4万平方メートルの多機能物流センターを建設している。2024年に設計を始め、2025年第2四半期に工事に入った。想定予算は1億ラリで、うち8,500万ラリをニコラ・トレードの社債で調達し、残りは営業キャッシュフローで賄う。ねらいはニコラ・トレードの物流コストの効率化である。同じ敷地では、水産のオケアネと製パンのムザレウリ1の新しい生産設備も計画されている。
西ジョージア向けには、オズルゲティ市に2024年に9ヘクタール(80万ドル)を取得し、事業費を約8,000万ラリと見込む物流センターを計画している。JSC Nikoraの第1トランシェのうち2,500万ラリを2026年上半期に、プログラムの残り枠(最大6,000万ラリ)から5,500万ラリを2026年下半期から2027年にかけて充てる想定で、差額の500万ラリは費用の変動に備えた枠とされている。店舗の新規出店は自己資金で賄うとしている。
格付け——2026年4月のレビューの意味
スコープ・レーティングスは2社を別々に格付けしている。ニコラ・トレードは2018年3月にB+/安定的で格付けを取得し、2023年9月にBB−へ引き上げられ、2024年8月と2025年8月に据え置かれた。JSC Nikoraは2019年8月にBB−/安定的で取得し、2021年9月に見通しを弱含みへ、2022年9月に安定的へ戻した。2025年8月には2025年11月満期の3,500万ラリ債の借り換えリスクを理由に見通しを再び弱含みとしたが、6,000万ラリの起債が成功したことで2025年12月10日に安定的へ戻している。この時点でスコープは、2029年まで大きな満期が来ないことを確認していた。
2026年4月30日、両社の格付けは「格下げ方向のレビュー中」に置かれた。ここは誤読されやすい。スコープの発表は、この措置が2026年4月24日に公表した一般事業会社向け格付手法の改定を当てはめるためのものであり、個々の発行体の信用状況の変化とは無関係だと明記している。対象はニコラ2社を含む32の事業会社で、格付済み債務は合計で約16億ユーロにのぼる。改定は事業リスクプロファイルの評価方法をより細かくし、方法論の下位要素のうち最も弱い項目を重く見る考え方を強調した点にある。
スコープは、この32社について現行水準から0〜2ノッチの下方調整があり得るとし、レビューを最大6か月以内に終えるとしている。つまり2026年8月時点でBB−は維持されているが、方法論の適用結果によっては引き下げられる可能性がある。経営が悪化したという話ではない。
財務上の注意点
外貨のリスクが目立つ。2024年12月31日時点で、JSC Nikora連結のリース債務は1億6,330万ラリあり、そのうち1億4,955万ラリが米ドル建てである。店舗の賃料が実質的にドル建てである一方、売上はラリ建てなので、ラリが下がると負担が増える。同時点の借入は2億706万ラリ(前年1億3,133万ラリ)で、リース債務と合わせた有利子負債は1年で大きく膨らんだ。グループはデリバティブによる為替ヘッジを行っておらず、対ドルで20%のラリ安が生じた場合の影響を3,708万ラリの損失と自ら試算している。
運転資本は構造的にマイナスである。小売では顧客から即座に代金を受け取り、仕入先には委託販売などで後払いできるためで、これ自体は小売業に一般的な姿である。ただし仕入先との支払猶予日数が縮めば流動性の問題になりうる。会社の資金化サイクルは2023年のマイナス4.4日から2024年に4.5日へ動いており、資金の回収が遅くなったことを示している。
監査意見にも注意点がある。JSC Nikoraの2023年と2024年の連結財務諸表は限定付適正意見(qualified opinion)を受けており、その理由はのれんの評価方法である。2024年12月31日時点で連結貸借対照表に計上されたのれんは4,362万ラリである。この限定が付いている点は、同社の財務数値を扱うときに念頭に置く必要がある。
参考資料
- Securities(NMG公式サイト・社債の発行履歴) ↗
- Who We Are(NMG公式サイト・グループの事業構成) ↗
- Brands(NMG公式サイト・ブランド一覧) ↗
- სს ნიკორა — ემისიის პროსპექტი 2025(JSC Nikora 2025年社債発行目論見書、ジョージア語・PDF) ↗
- JSC Nikora Trade — Scope Ratings(格付け履歴) ↗
- JSC Nikora — Scope Ratings(格付け履歴) ↗
- Scope places ratings of 32 issuers under review for a possible downgrade after methodology update(2026年4月30日) ↗
- Scope affirms BB-/Stable issuer rating on Georgian retailer JSC Nikora Trade(2025年8月29日) ↗
- Scope revises Outlook on JSC Nikora's BB- issuer rating to Stable from Negative(2025年12月10日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。