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カスピ・ケーゼット(Kaspi.kz)

決済、マーケットプレイス、フィンテックを2つのスーパーアプリに束ねたカザフスタンの生活基盤企業。国内の月間利用者は1,570万人(2025年末)。ナスダック、カザフスタン証券取引所、アスタナ国際取引所の3市場に上場し、トルコのEC大手ヘプシブラダを傘下に持つ。

Joint Stock Company Kaspi.kz
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

カスピ・ケーゼット(Kaspi.kz)は、決済・電子商取引・消費者金融を一つのアプリに束ねた「スーパーアプリ」の運営会社である。カザフスタン国内では2025年末に月間1,570万人が利用し、そのうち1,070万人が毎日開いている。人口2,050万人の国でこの数字であり、公共料金の支払い、店頭でのQR決済、送金、分割払い、住民票や運転免許といった行政手続きまでが同じ画面のなかで完結する。日常生活のインフラに近い位置にある。

会社の形は銀行から始まった。銀行子会社カスピ銀行(Kaspi Bank JSC)は現在も持株会社が98.95%を間接保有しており、預金と与信はここが担う。そこへ決済網とマーケットプレイスを重ね、収益の柱を3つに分けたのが現在の構造である。2025年通期の連結売上高は4兆460億テンゲ、純利益は1兆677億テンゲで、カザフスタン最大の銀行であるハリク銀行の純利益(1兆584億テンゲ)とほぼ並んだ。

資本市場での位置づけも特異である。2020年にロンドンとアスタナへ同時に上場し、2024年1月にナスダックへ移って翌3月にロンドンの上場を廃止した。2026年8月時点ではナスダック、カザフスタン証券取引所(KASE)、アスタナ国際取引所(AIX)の3市場で取引されている。2025年にはトルコの電子商取引大手ヘプシブラダを傘下に収め、2026年7月には同国で銀行免許を持つ会社の買収を完了した。国外へ出た中央アジア発の消費者向けプラットフォームとして、いま最も規模が大きい。

正式名Joint Stock Company Kaspi.kz
設立2008年10月16日にカザフスタンで有限責任事業組合として設立、2014年10月17日に株式会社へ組織変更
本社カザフスタン・アルマトイ市ナウルズバイ・バティル通り154A
上場ナスダック・グローバル・セレクト・マーケット(KSPI、2024年1月19日〜)、カザフスタン証券取引所(普通株KSPI、米国預託証券KSPId)、アスタナ国際取引所(2020年10月15日〜)
過去の上場ロンドン証券取引所(2020年10月15日〜2024年3月25日。GDRと預託証券の上場を廃止)
事業決済(Payments)、マーケットプレイス(Marketplace)、フィンテック(Fintech)の3プラットフォームを2つのスーパーアプリで提供する
売上高4兆460億テンゲ(2025年通期、連結。トルコ事業を除く比較では前年比19%増)
純利益1兆677億テンゲ(2025年通期、連結。トルコ事業を除く比較では前年比10%増)
調整後EBITDA1兆5,564億テンゲ(2025年通期、連結)
総資産12兆574億テンゲ(2026年6月末、連結)
取扱高決済総額(TPV)46兆4,000億テンゲ、流通取引総額(GMV)9兆1,000億テンゲ、金融取扱高(TFV)11兆7,000億テンゲ(いずれも2025年、トルコ事業を除く)
利用者カザフスタン国内のスーパーアプリ月間アクティブ利用者1,570万人、1日あたり1,070万人(2025年末)。両国合計の利用者は2,600万人超、加盟店は90万(2026年8月時点の会社説明)
利用頻度アクティブ利用者1人あたり月77回の取引(2025年)
従業員1万4,008人(2025年末。カザフスタンほか1万397人、トルコ3,611人)
主な株主バリング系ファンド23.22%、ミヘイル・ロムタゼ氏22.58%、ヴャチェスラフ・キム氏20.74%、公開市場の投資家29.59%、経営陣3.87%(2025年末)
格付フィッチBBB-、ムーディーズBaa3(いずれも会社本体、見通し安定)
配当1米国預託株式(ADS)あたり四半期1,000テンゲ(2026年第2四半期分の取締役会提案。第1四半期は850テンゲ)
公式サイトkaspi.kz(サービス)、ir.kaspi.kz(投資家向け)

沿革——銀行からスーパーアプリへ

持株会社カスピ・ケーゼットは2008年10月16日にカザフスタンで有限責任事業組合として設立され、2014年10月17日に株式会社へ組織変更された。銀行子会社カスピ銀行の経営陣が現在の体制に入れ替わったのは2006年である。共同創業者のミヘイル・ロムタゼ氏は、それ以前は投資会社バリング・ヴォストーク・キャピタル・パートナーズのパートナーで、2007年に同社へ加わった。もう1人の共同創業者ヴャチェスラフ・キム氏は小売業の経営者で、創業時から関わり、現在は取締役会長を務める。財務責任者のテンギズ・モシゼ氏(2008年入社)、資本市場担当のユーリー・ディデンコ氏(2007年入社、元バリング・ヴォストークの投資ディレクター)も創業期の経営陣である。

バリング・ヴォストーク系のファンドは現在も主要株主として残っており、2025年末で発行済株式の23.22%を保有する。買収ファンドが十数年にわたって筆頭級の株主であり続けている点は、この会社の資本構成の特徴といえる。

サービスの積み上げは自社の年表で追える。2012年に公共料金支払いと電子財布、2013年に入金端末網の拡大、2014年にマーケットプレイスと「Kaspi Bonus」および消費者信用のオンライン化、2015年にデビットカード「Kaspi Gold」と提携先のkolesa.kzを通じた自動車ローン、2016年に会員制の「Kaspi Red」、2017年にモバイルアプリと電話番号・カード番号による個人間送金、割引販売の催事「Kaspi Juma」、2018年に顔認証とQRに対応するATM・加盟店向けアプリ・国際送金、2019年にアプリからの購入とQR決済端末——という順に機能が足されていった。銀行の付帯サービスとして始まったものが、逆に銀行を内側に抱える構造へ入れ替わっている。

国外の資産取得は2019年9月に始まった。アゼルバイジャンの分類広告3サイト(自動車のTurbo.az、中古品のTap.az、不動産のBina.az)を保有するエストニア法人を取得し、現在はDigital Classifieds LLCとして100%子会社に置いている。2021年にはウクライナの決済処理会社ポートモーン(Portmone Group)を取得したが、2025年9月10日に第三者へ売却した。

3市場上場という特異性

最初の上場は2020年10月15日である。ロンドン証券取引所とアスタナ国際取引所(AIX)へ同時に上場した。新株の発行はなく、既存株主の持ち分をすべて売り出す形だった。同社はこれを2020年のロンドン市場で2番目に大きい新規上場、欧州で3番目に大きいテック企業の上場だったと説明している。

2度目は米国である。2024年1月19日にナスダック・グローバル・セレクト・マーケットで「KSPI」の銘柄コードで取引が始まり、23日に手続きが完了した。売り出したのは1,130万米国預託株式(ADS、1株が普通株1株に対応)で、価格は1株92.00ドル。売り手はキム氏、ロムタゼ氏、およびバリング系のアジア・エクイティ・パートナーズであり、会社は資金を受け取っていない。引受はモルガン・スタンレー、JPモルガン、シティグループが主幹事を務めた。

ナスダック上場と入れ替わりに、ロンドンからは退いた。2024年2月26日に上場廃止を予告し、3月25日午前8時をもって英金融行為規制機構(FCA)の公式リストからADSとルール144A GDRの上場が取り消され、ロンドン証券取引所のメインマーケットでの取引も終了した。

残る3市場のうち、KASEとAIXへの上場を続けているのは税制上の理由が大きい。カザフスタンの税法では、AIXまたはKASEの公式リストに含まれ、かつ一定の売買実績(活発取引基準)を満たす証券について、配当と譲渡益が非課税になる。同社は年次報告書のリスク要因で、何らかの理由でADSがAIXの公式リストから外れると保有者はこの免税を失うと明記している。KASEに関しては近年の改正で、免税の適用に「新規株式公開を通じた売り出しであること」という要件が加わった。国内の投資家にとって、どの市場でADSを買うかが税負担に直結する構造になっている。

3市場での取引は時間帯も決済経路も異なる。ナスダックの取引は米国の預託機関を通じて、KASEとAIXの取引は現地の清算機関を通じて決済されるため、市場をまたいだ移管には時間がかかる。KASEでの2026年8月28日の終値は、普通株KSPIが4万8,350.50テンゲ、預託証券KSPIdが102.51ドルだった。

事業の3本柱

収益は決済、マーケットプレイス、フィンテックの3区分で報告される。2025年通期のカザフスタン国内(トルコ事業を除く)の実績は次のとおりである。

決済プラットフォームは、店頭のQR決済、送金、公共料金の支払い、加盟店の集金と精算を担う。2025年の決済総額(TPV)は46兆4,000億テンゲで前年比19%増、取引件数は14%増えた。部門売上は6,590億テンゲ(12%増)、純利益は4,330億テンゲ(13%増)である。2025年にはアルマトイで手のひら静脈認証による決済「Kaspi Alaqan」を始め、3か月で市の成人人口の約3分の1が登録した。カードも携帯電話も要らず、通信が届かない場所でも決済できる点を訴求している。

マーケットプレイスは、電子商取引(e-Commerce)、実店舗での分割払い購入(m-Commerce)、生鮮食品(e-Grocery)、旅行予約のKaspi Travel、分類広告からなる。2025年の流通総額は9兆1,000億テンゲ(11%増)、部門売上は9,000億テンゲ(23%増)、純利益は3,690億テンゲ(6%増)だった。売上が流通総額より速く伸びたのは、広告と配送という付加サービスの収入が増えたためで、広告収入は年間64%増、生鮮食品の流通総額は53%増である。生鮮食品は2023年2月に食品小売最大手マグナムとの合弁会社Magnum E-commerce Kazakhstanの株式51%を取得したことで本格化し、現在の持ち分は90.01%である。分類広告では2023年10月に自動車のkolesa.kzと不動産のkrisha.kzを運営するKolesa Groupの支配権を得た。

フィンテックは預金と消費者信用を扱う。2025年の金融取扱高(TFV)は11兆7,000億テンゲで13%増、部門売上は1兆5,000億テンゲ(20%増)、純利益は3,550億テンゲ(9%増)である。取扱高の内訳は後払い(BNPL)が41%、汎用ローンが36%、加盟店・小規模事業者向け融資が18%、自動車ローンが5%。2025年通期の信用コストは2.2%、不良債権比率は6.1%だった。

加盟店側には別のアプリ「Kaspi Pay」がある。出品、全国配送を担う自社物流「Kaspi Delivery」、広告出稿(自社アプリだけでなくInstagram、Facebook、TikTok、Googleへも配信する)、余剰資金の運用、運転資金と仕入資金の融資、請求書発行、レジソフト、税務申告までを1つにまとめている。2025年末の加盟店数は76万4,000である。消費者向け・加盟店向けの2つのスーパーアプリが対になっている点を、同社は自社モデルの核心だと説明している。

ブランドの浸透度も数字がある。カンター系の調査会社が2025年1月から12月にかけて約6,000人へ行った調査では、決済で79%(2位は6%)、電子商取引で44%(2位14%)、モバイルアプリで47%(2位8%)、旅行で54%、消費者金融で53%、預金で59%が同社の名前を挙げ、いずれも1位だった。自動車の分類広告ではkolesa.kzが74%、不動産ではkrisha.kzが74%で1位である。

カザフスタンの決済に占める位置

同社の位置づけは、規制上の指定からも読み取れる。銀行子会社カスピ銀行は2018年5月1日に「重要な決済サービス提供者」の登録簿へ記載され、2026年時点でもその状態が続いている。この登録は、システム上重要な決済システムでの取扱額、またはカードによる決済総額、または電子マネー取引総額のいずれかで年間25%以上を占める事業者を対象とする基準にもとづく。カスピ銀行はまた、システム上重要な金融機関(systemically important financial institution)にも指定されている。

銀行としての健全性は、2025年12月31日時点で国立銀行基準の総自己資本比率が12.7%、Tier1比率も12.7%で、いずれも規制の最低水準を上回る。バーゼルIII基準で計算した場合の総自己資本比率とTier1比率はともに19.6%(2024年末は18.3%と17.6%、2023年末は18.1%と17.4%)である。

他社との比較では定義の違いに注意が要る。カスピ・ケーゼットの2025年の決済総額46兆4,000億テンゲは決済プラットフォーム全体の取扱高であり、ハリク銀行が公表するアプリ経由のテンゲ建て決済・送金19兆5,000億テンゲ(2025年)とは範囲が同じではない。マーケットプレイスの流通総額9兆1,000億テンゲに対し、ハリク・マーケットの流通総額は1,236億テンゲ(2025年)である。一方、連結総資産は2026年6月末でカスピ・ケーゼット12兆574億テンゲ、ハリク銀行22兆363億テンゲと、後者が大きい。カスピ・ケーゼットは持株会社であり、この総資産にはマーケットプレイス事業やトルコ事業も含まれるため、銀行同士の比較にはならない。

トルコ進出

域外展開の中心はトルコである。2024年10月17日、電子商取引大手ヘプシブラダ(D-MARKET Electronic Services & Trading、ナスダック上場、ティッカーHEPS)の株式を創業者ハンザデ・ドアン氏ら売り手グループから取得する契約を結び、2025年1月29日に完了した。取得したのはA種4,000万株とB種1億7,324万6,220株で、契約時点の発行済株式の65.41%にあたる。対価は約11億2,700万ドルで、うち6億ドルを完了日に現金で支払い、残る5億2,690万ドルを完了後6か月以内に支払う契約だった。トルコ競争庁、トルコ中央銀行、銀行規制監督庁、情報通信庁の承認を得ている。

持ち分はその後も増えた。2025年12月に10.55%を約6,600万ドルで買い増して75.96%とし、2026年1月5日の追加契約で85.17%に達した。2026年7月時点の会社説明では86.74%である。ヘプシブラダは2000年創業で、トルコの電子商取引の草分けの一つとされる。

銀行も取得した。2025年3月27日にラボバンク・グループとの間でトルコ子会社ラボバンクA.S.の株式取得契約を結び、2026年7月15日に完了した。同社はこの銀行を「Hepsi Bank」へ改称している。取得時点のラボバンクA.S.は借り手も預金者も支店網も持たない免許だけの銀行で、取引規模そのものは小さい。同社の狙いは、この免許を使ってトルコで預金と融資を扱えるようにすることにある。ヘプシブラダが既に持つマイクロファイナンス免許を使い、電子商取引に組み込んだ買い物ローンの提供は2026年に始まった。フィンテック商品の本格展開は2027年からとしている。

2025年のトルコ事業は投資段階にある。ヘプシブラダの通期の調整後EBITDAは11億トルコリラの黒字にとどまり、第4四半期はほぼ収支均衡だった。同社は当面ヘプシブラダを調整後EBITDAが均衡する水準で運営し、注文数・利用者数・利用頻度の伸びを優先する方針を明示している。2025年の四半期別の注文数の伸びは第1四半期がマイナス11%、第2四半期プラス7%、第3四半期16%、第4四半期19%と改善した。2026年第2四半期のトルコの部門売上は2,634億テンゲである。

ウズベキスタンへも一度動いた。2024年8月、国営の銀行間処理センター「フモ(Humo)」の民営化に関心を示す拘束力のない意向表明を同国の国家資産管理庁へ提出したが、その後「これ以上手続きを進めない」と表明し、参加を取りやめている。

株主構成とテンセントの参入

2025年末の持ち分は、バリング系ファンド23.22%、ロムタゼ氏22.58%、キム氏20.74%、公開市場の投資家29.59%、経営陣3.87%である。バリング系の内訳は、フィンテック・パートナーズが9.49%、アジア・エクイティ・パートナーズが7.29%、ヨーロピアン・インベスターズが6.44%だった。

米国証券取引委員会への届出にもとづく2026年1月31日時点の実質保有では、ロムタゼ氏が4,295万623株で22.62%、キム氏が3,945万7,752株で20.78%、フィンテック・パートナーズが9.51%、アジア・エクイティ・パートナーズが7.06%、ヨーロピアン・インベスターズが6.46%。発行済普通株式数は1億8,987万5,085株である。取締役および執行役員の合計は8,769万5,475株で46.18%にあたる。

2026年4月、中国のテンセントが同社の株主に加わった。バリング系ファンドが保有する600万ADSを、テンセント、ロムタゼ氏本人、経営幹部、および長期保有の機関投資家が買い取る取引が成立している。買い手には、フィンテック専門の投資会社スパイス・エクスペディションズ、ワシントン大学とウィスコンシン大学財団の基金が含まれる。売り手側の助言はモルガン・スタンレーが務めた。同社はテンセントを「最大級の株主の一つ」と表現している。取引はバリング系ファンドの持ち分の売却であって、会社への新規の資金流入を伴うものではない。

同社の年次報告書は、キム氏、ロムタゼ氏、フィンテック・パートナーズ、アジア・エクイティ・パートナーズの4者が合計で発行済株式の相当部分を保有しており、これらの株主が株主総会の決議に大きな影響力を持つと記している。少数株主の利益と一致しない可能性があること自体をリスク要因として挙げている点は、読み手が念頭に置く必要がある。

業績と配当の推移

2025年通期の連結売上高は4兆460億テンゲ(80億400万ドル)、純利益は1兆677億テンゲ(21億1,200万ドル)だった。前年比では売上高が60%増、純利益が1%増となるが、これはヘプシブラダの連結によるかさ上げを含む数字である。トルコ事業を除いた比較では売上高19%増、純利益10%増であり、同社が経営指標として説明するのは後者である。2つの伸び率が大きく違うので、どちらの基準の数字かを確かめないと年ごとの比較を誤る。

連結の調整後EBITDAは2024年の1兆3,000億テンゲから2025年に1兆5,564億テンゲへ増えた。総資産は2024年末の8兆3,771億テンゲから2025年末の11兆818億テンゲ、2026年6月末の12兆574億テンゲへ増えている。顧客預金は2026年6月末で8兆1,320億テンゲ、貸出金は7兆4,398億テンゲである。

2026年上期は増収鈍益だった。売上高は2兆1,928億テンゲで前年同期比23%増、純利益は5,108億テンゲでほぼ横ばい。第2四半期だけを見ると売上高が15%増の1兆1,122億テンゲ、調整後EBITDAが5%増の3,972億テンゲ、純利益は2,589億テンゲで横ばいである。伸び悩みの理由は、預金調達コストの上昇(2026年第2四半期の平均調達金利は14.5%で前年同期比150ベーシスポイント上昇)と、トルコ事業への投資である。2026年8月、同社は預金の約3分の1を占める3か月物の金利を100ベーシスポイント引き下げた。2年以上ぶりの引き下げだという。

部門別では電子商取引が牽引している。2026年第2四半期の電子商取引の流通総額は為替影響を除いて前年同期比28%増の1兆3,000億テンゲ、購入件数は33%増の7,620万件。利用者1人あたりの年換算購入回数は2025年第2四半期の11.6回から15.8回へ増えた。第三者出品分に対する手数料率(テイクレート)は160ベーシスポイント上昇して16.1%となり、広告と配送の収入が前年同期比49%増(為替調整後)と伸びたことが効いている。

配当は年により大きく振れる。普通株1株あたりの支払額は2023年が2,950テンゲ、2024年が3,400テンゲで、2025年は支払いがなかった。ヘプシブラダの取得に資金を充てたためである。2025年第4四半期分から四半期配当を再開し、1ADSあたり850テンゲとした。2026年第2四半期分については18%増の1,000テンゲを取締役会が提案している(いずれも株主総会の承認が前提)。従来の方針は国際会計基準の純利益の50%以上を年1回配当するというものだったが、2025年はこれに従っていない。

資金調達では、2025年に投資適格級の格付を得たあと国際債市場へ出た。フィッチは2024年後半に会社本体へBBB-(見通し安定)を、ムーディーズは2025年にBaa3(同)を付与している。銀行子会社カスピ銀行はそれ以前から格付を持ち、ムーディーズが2024年9月にBa1からBaa3へ引き上げた。2026年4月24日には5年物・年利5.900%の無担保シニア債6億ドルを発行し、約130の機関投資家から3.5倍の応募を集めた。投資適格取得後2件目の国際起債である。

論点——規制、集中、係属中の訴訟

第1に、規制と税制の変更が2026年の収益を直接に押し下げる。2025年7月18日に採択され2026年1月1日に施行された新しい税法典は、第2階層銀行の法人所得税率を20%から25%へ引き上げた(事業向け融資から生じる所得には20%が残る)。あわせて銀行の一部の金融取引に対する既存の非課税措置が半減した。国立銀行は2025年に最低準備率の枠組みを見直して準備率を大きく引き上げ、2026年4月1日からは個人向け融資(個人事業主向けを除く)のリスク資産に2%の分野別カウンターシクリカル・バッファーを課している。同社の説明では、この対象となる個人向け融資はカスピ銀行のリスク資産の83%を占める。同社は2026年の連結調整後EBITDAの伸びを約5%と見込んでいる。

第2に、事業の集中である。売上のほとんどをカザフスタン1か国から得ており、決済・電子商取引・消費者信用という互いに関連の強い3事業を同じ顧客基盤の上に載せている。同社自身が年次報告書で、過去に同行の経営の不安定さについて誤った情報が流布し預金の引き出しが起きた事例があったこと、同種の風説が預金流出につながりうることをリスクとして挙げている。トルコ事業の追加は分散になるが、当面は利益ではなく投資の対象である。

第3に、株主に関する訴訟が係属している。2025年4月16日、ニューヨーク州最高裁判所(州の第一審裁判所)に、同社および一部の役員・取締役を被告とする推定的集団訴訟が提起された。原告は2024年の新規株式公開に関連して米国預託株式を取得した株主で、募集書類がロシアおよびロシア企業への関与について虚偽または誤解を招く記載をしていたとして、1933年証券法11条・15条にもとづく請求を立てている。同社は2025年8月4日に却下を申し立て、2026年3月に提出された年次報告書の時点で裁判所の判断を待っている状態である。同社は重大な損失が生じる可能性は低いと考えており、2025年12月末の連結貸借対照表に引当は計上していない。2026年8月時点で決着していない。

この訴訟の背景には、2024年9月に米国の空売り調査会社カルパー・リサーチ(Culper Research)が公表した報告書がある。同社は「誤解を招き、不正確で、事業を誤って伝えるものだ」と反論する声明を出した。空売り筋の主張が正しいかどうかを第三者が判定したという公表資料は、2026年8月時点で確認できない。

このほか、傘下のヘプシブラダはトルコの競争法違反の疑いで当局の調査を受けた経緯がある。同社は年次報告書で、事業の通常の過程で各国の規制当局から情報提供や説明を求める書面を受け取ることがあり、それが調査や法的手続きに発展しないという保証はないと記している。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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