解説 · 2026年8月時点
ホバル(Khovar)は、タジキスタンの国営通信社である。正式にはタジキスタン国立情報通信社「ホバル」といい、国の中央情報機関として位置づけられている。国内外の政治、経済、社会、文化に関する情報を収集・配信し、タジク語、ロシア語、英語、アラビア語、ペルシャ文字の各版を持つ。
タジキスタンでは独立した報道機関の活動が限られており、省庁の発表と大統領の発言を継続的に伝える媒体はホバルが中心である。同国の経済や政策を追ううえで実務上避けて通れない情報源であると同時に、その位置づけを踏まえて読む必要がある。
| 正式名 | National Information Agency of Tajikistan “Khovar”(АМИТ «Ховар») |
|---|---|
| 起源 | 1925年12月31日、タジク自治ソビエト社会主義共和国革命委員会幹部会の決定によるTASSタジキスタン支局の設置 |
| 現在の設立根拠 | 2004年4月30日のタジキスタン共和国政府決定により、国の中央情報機関として設置 |
| 所在地 | ドゥシャンベ市サアディー・シェロジー大通り16番地(734018) |
| 言語 | タジク語、ロシア語、英語、アラビア語、ペルシャ文字 |
| 関連事業 | 2011年からラジオ「FMホバル」を運営 |
| 特徴 | 大統領・議会・政府の活動に関する情報と公式文書を収集・配信する排他的権利を持つ |
沿革
同社の説明によれば、タジキスタンの中央情報機関は1925年12月31日、タジク自治ソビエト社会主義共和国革命委員会幹部会の決定によりTASS(ソ連電報通信社)の支局として設置された。その後、支局はタジク電報通信社(TojikTA)の地位を得た。当初の業務は、モスクワからのTASS配信を受けて共和国の新聞に流すことと、小規模な「地方情報公報」を出すことだった。
設備は当初ラジオ受信機のみで、後に印刷機と輪転機が加わり、ロシア語からタジク語へ訳して新聞・ラジオ・諸機関へ送るようになった。1972年にTASSと各共和国の電報通信社が一つの情報サービスに統合されると、TojikTAの地位はタジクSSRの国家委員会と同等になった。当時は毎月100本を超える資料がTASSの回線でタジキスタンに関して配信され、国内向けには4つの支局が最大3,500件の記事を用意していたという。
1981年には写真情報部門にカラー写真の研究室が設けられ、中央アジアで唯一というプラスチック活字の装置も稼働した。同部門は毎月400部まで写真集「今日のタジキスタン」を発行し、共和国紙のほか7の州紙と44の地区紙に情報を供給していた。
1990年代の内戦は大きな打撃となったが、業務は途切れなかったと同社は記している。1992年4月10日にTojikTAはタジキスタン情報センター「ホバル」へ改称し、2004年4月30日のタジキスタン共和国政府決定により、国の中央情報機関としてタジキスタン国立情報通信社「ホバル」が設置された。2015年に創立90年を迎えている。
法的な位置づけと権限
同社は、憲法と法律、大統領の令・命令、上院・下院の決定、政府の決定と指令、タジキスタンが加盟するメディア分野の法令にもとづいて活動すると説明している。
主要な任務は、国内外の重要問題と対外政策、そして国内の政治・経済・社会・文化生活に関する情報を収集し、国内外に配信することである。特別公報「ナブズィ・ホバル(東方の脈)」を休日を除く毎日作成し、国家機関、諸団体、社会団体、外国大使館、国際機関に配布している。
同社が明記している重要な点として、国の中央情報機関として、大統領、マジリシ・オリー(議会)、政府の活動に関する情報と公式文書を収集・配信する排他的権利と、それらに解説を加える権利を持つとしている。
また、報道機関向けの記者会見の企画・開催もホバルの役割である。同社によれば、2005年3月4日の大統領令にもとづいて記者会見が行われ、毎年1月と7月にドゥシャンベ市内の省庁・機関が年間および半期の活動結果について記者会見を開く。開催計画は大統領府執行機関が承認し、日程はホバルと調整される。開催の告知は毎営業日、タジク語とロシア語でホバルのサイトに掲載される。
報道の範囲と関連事業
サイトの区分は、大統領、議会、首都、外交、安全保障、経済、産業、銀行、社会、教育、文化、スポーツ、規制、観光、政府調達、地域と世界に分かれる。ログン水力発電所の事業評価をまとめた専用の区分も設けられている。
経済の記事には、輸出入の実績、産業生産、農産物の輸出といった具体的な数字が出る。省庁の発表を直接伝えるため、他の媒体より早いことがある。
2011年からは国営企業としてラジオ「FMホバル」を運営しており、30分ごとに国内外のニュースを伝えている。同局の番組はホバルのサイトからも聴ける。
同社は、サイトの資料の利用と再配信には経営陣の書面による許可が必要であり、www.khovar.tjへの言及が必須であるとしている。
記者と翻訳者の養成の場としての性格も長く持ってきたと同社は記しており、タジク語・ロシア語・英語の翻訳を扱う体制を早くから整えていた。ハトロン州(旧クロブ、旧クルガンテッパ)、ソグド州(旧レニナバード)、ゴルノ・バダフシャン自治州に特派員を置いてきた歴史がある。
出典として使うときの性格
ホバルは国営の中央情報機関であり、大統領・議会・政府の情報に関する排他的権利を自ら明記している。政府の発表を伝える公式の経路であって、その内容を独立に検証する立場にはない。読み手はこの点を念頭に置いておく必要がある。
タジキスタンでは統計や企業の数字を独立に確かめる手段が乏しい。生産量や投資額を引くときは、発表主体と発表日を明示するのが前提になる。
英語版とアラビア語版は、タジク語版・ロシア語版より掲載本数が少ない。詳細を追うときはタジク語版かロシア語版に当たることになる。
参考資料
- АМИТ «Ховар»(公式サイト タジク語版) ↗
- Дар бораи мо — ホバル(沿革・法的位置づけ・権限) ↗
- Маркази матбуотӣ — ホバル(記者会見の運営) ↗
- NIAT “Khovar”(公式サイト 英語版) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。