ORGANIZATION · COMPANY

カザフスタン鉄道

カザフスタンの国有鉄道会社。1万6400キロの鉄道網を保有・運営する。

Kazakhstan Temir Zholy
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

カザフスタン鉄道(Kazakhstan Temir Zholy、KTZ)は、カザフスタンの国有鉄道会社であり、同国の幹線鉄道網を運営する事業者である。営業キロは1万6,000キロ、主要本線の展開延長は2万1,100キロにのぼり、17の州と3つの直轄市を結ぶ。石炭、鉄鉱石、穀物、石油製品といった同国の主要な貨物は、そのほとんどがこの会社の線路を通る。従業員は11万8,506人(2025年)で、国内最大級の雇用主でもある。

国際的に注目されるのは、中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)の陸上区間で最も長い部分を担う点である。中国からロシアを通らずに欧州へ抜ける輸送路のうち、中国国境からカスピ海岸までの区間はすべてカザフスタン領内にあり、その全部を同社が運ぶ。中国国境のドストゥクとアルティンコリ、カスピ海側のアクタウ港とクリク港という結節点も、いずれも同社のグループが関わる。この輸送路を共同で運営する枠組みであるTITR国際協会にも、カザフスタン側の当事者として参加している。

財務を読むうえで欠かせないのが、貨物と旅客の非対称である。2025年の貨物事業は3,902億テンゲの税引後利益を出した一方、旅客事業は370億テンゲの損失だった。旅客には国庫からの補助金が入っており、2025年は459億テンゲが計上されている。全社の利益はほぼ貨物から生まれている。

正式名JSC National Company Kazakhstan Temir Zholy(KTZ)
設立1997年1月31日の政府決定第129号で共和国国有企業として設立。2002年3月15日の政府決定第310号で国営会社となり、2004年に株式会社へ改組
本社カザフスタン・アスタナ
株主政府系ファンドのサムルク・カズナが全株を保有
事業幹線鉄道網の運営、鉄道貨物・旅客輸送、輸送物流
路線営業キロ1万6,000キロ、主要本線の展開延長2万1,100キロ(2025年)。旧ソ連規格の軌間1,520ミリ
国境の接続点中国、ロシア、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタンとの間に16か所
車両機関車1,700両超、貨車4万6,800両、客車2,300両(2026年、EBRD開示)
従業員11万8,506人(2025年)。国内最大級の雇用主
貨物輸送量3億1,990万トン(2025年、前年比5.5%増)。うち通過輸送3,300万トン(20%増)
貨物回転量2,888億トンキロ(2025年、10.4%増)
旅客1,326万9,000人(2025年、4.0%減)。旅客回転量114億人キロ(2.6%減)
売上高2兆7,571億テンゲ(2025年、27.4%増)。うち貨物2兆4,632億テンゲ、旅客1,293億テンゲ
EBITDA8,725億テンゲ(2025年、46.5%増)
純利益3,436億テンゲ(2025年。2024年は1,608億テンゲ)
設備投資1兆2,797億テンゲ(2025年、有形固定資産ベース)
発行済債券1兆2,762億テンゲ(2025年末)。KASEとAIXに上場
格付ムーディーズBaa2・見通し安定的、フィッチBBB-・見通し安定的(2025年時点)。S&Pは2025年9月4日に国内格付をkzA+からkzAA-へ引き上げ
主な子会社KTZ貨物輸送、旅客輸送、ロコモティフ、カズテミルトランス、KTZエクスプレス、ケデントランスサービス、ポート・クリク
2026年1〜6月の輸送量1億5,710万トン(前年同期比3.5%増)。1〜7月では1億8,440万トン(3.2%増)

沿革

1997年1月31日の政府決定第129号により、アルマトイ鉄道管理局、ツェリンナヤ鉄道管理局、西カザフスタン鉄道管理局という3つの管理局を統合して共和国国有企業「カザフスタン・テミル・ジョリ」が設立された。ソ連国鉄の路線を国ごとに引き継いだ再編であり、この年が同社の起点になる。

2001年に鉄道輸送法と2001〜2005年の鉄道再編プログラムが採択され、2002年3月15日の政府決定第310号で、国有企業とその子会社群を統合した閉鎖型株式会社「国営会社カザフスタン・テミル・ジョリ」が発足した。2004年には株式会社へ改組し、2004〜2006年の再編プログラムのもとで機関車部門をロコモティフ社に、貨車をカズテミルトランス社に切り出した。2005年からは旅客輸送事業者の損失を補填する補助金が共和国予算から支出されるようになる。2016年には輸送事業とインフラを分離し、貨物運送人としてKTZ貨物輸送が設立された(2020年に有限責任組合へ改組)。

路線の建設も続いた。2001年にアクス〜デゲレン線(187キロ)、2004年にフロムタウ〜アルティンサリノ線(404キロ)、2008年にシャル〜ウスチカメノゴルスク線(150キロ)が完成し、国内の鉄道網が国境の内側でつながった。2012年にはジェティゲン〜アルティンコリ線が開通し、中国との2番目の鉄道国境が生まれている。1990年9月には既にドストゥクと中国のアラシャンコウで軌道が接続していた。

事業の構造

同社は持株会社であり、幹線鉄道網の保有と運営を本体が担い、輸送と物流は子会社が担う。貨物運送はKTZ貨物輸送、旅客運送は旅客輸送、機関車の運用と保守はロコモティフ、貨車の保有はカズテミルトランスが受け持つ。

物流子会社の中核はKTZエクスプレスである。同社は中国、ロシア、ドイツ、トルコ、ハンガリーに支店や子会社を持ち、中国江蘇省の連雲港では現地企業と組んだ物流拠点(持分49%)を運営する。ロシアではモスクワの物流会社に出資し、KTZ本体もユーラシア鉄道アライアンスに33.33%を出資している。国内のコンテナ物流ではケデントランスサービスがある。

海側ではカスピ海のクリク港を運営するポート・クリクを持つ。2026年1〜6月の取扱量は88万4,800トンで、内訳は鉄道方向が47万5,500トン、道路方向が30万6,200トン、穀物ターミナル経由が10万4,100トンだった。

中国国境のホルゴス(コルガス)では、特別経済区の内側に内陸港「KTZE・ホルゴス・ゲートウェイ」がある。中国とカザフスタンの物流分野における2件目の共同事業で、2025年の取扱量は37万2,000TEU超と前年比2%増えた。同年は広軌の線路を10本新設し、荷役設備の改良でコンテナの積み替え時間を5時間から1時間へ短縮したと同社は説明している。

中間回廊とインフラ投資

投資の中心は、通過輸送の隘路になっている区間の処理能力を上げることにある。最大の事業が、中国国境のドストゥクからモインティまでの836キロの複線化である。2025年9月30日、トカエフ大統領が遠隔で第2線の運行開始を宣言した。中国側との国境ではドストゥク〜アラシャンコウ間の第2線の建設も進んでいる。

このほか、ダルバザ〜マクタアラル線、モインティ〜クズィルジャル線、バフティ〜アヤゴズ線の新設、アルティンコリ〜ジェティゲン区間の近代化、アルマトイ駅を迂回する環状線の建設、列車の自動制御装置の導入が投資計画に並ぶ。同社の経営陣は、約900キロの新線建設と約3,000キロの既存路線の近代化を進めていると説明している。線路の補修も1万1,000キロを対象とする計画のもとで進み、2025年は4,400キロを施工した。

海側の設備も増強された。2025年6月9日にアクタウ港で大型のコンテナ・ハブが開所し、同月10日にはアルマトイでコンテナターミナル「ジェティス」が稼働した。いずれもカスピ海横断ルートの取扱量の増加に対応するための施設である。

車両の更新では、2025年9月22日に米国のワブテックと新型機関車TE33ATの供給契約を結んだ。この機種はアスタナの工場で現地生産されている。旅客側ではスタドラーのアスタナ工場で最初の客車が2025年6月に完成し、7月11日にはアスタナ〜ボロヴォエ間で新型電車の運行が始まった。

輸送実績と数字の読み方

2025年の貨物輸送量は3億1,990万トンで前年比5.5%増、貨物回転量は2,888億トンキロで10.4%増えた。輸送量(トン)が5.5%増なのに回転量(トンキロ)が10.4%増えたのは、平均輸送距離が延びたためである。輸出と通過が伸び、国内向けの短距離輸送の比率が下がるとこの差が開く。通過輸送は3,300万トンで20%増えた。

2026年に入っても増加が続き、1〜6月の輸送量は1億5,710万トン(前年同期比3.5%増)、1〜7月は1億8,440万トン(3.2%増)となった。1〜6月の内訳は国内向け8,220万トン、輸出4,560万トンで、品目別では石炭5,130万トン(4%増)、石油貨物1,330万トン(3.7%増)、鉄鉱石1,160万トン(15.1%増)、穀物730万トン(10%増)である。

旅客は減っている。2025年の輸送人員は1,326万9,000人で4.0%減、旅客回転量は114億人キロで2.6%減った。国内の旅客輸送全体に占める鉄道の比率は2024年の19.6%から2025年は17.8%へ下がっており、自動車と航空に移っている。同じ年、自動車・都市電気輸送は12.7%、航空は6.0%それぞれ伸びた。

発表を読むときは、対象が「同社の路線網全体を通った貨物」なのか「子会社が運送人として運んだ貨物」なのかを確かめる必要がある。月次の実績発表は前者の建て付けで、国内・輸出・輸入・通過の合計として示される。

財務

2025年の連結売上高とその他の収益は2兆7,571億テンゲで、前年の2兆1,639億テンゲから27.4%増えた。内訳は貨物輸送収入が2兆4,632億テンゲ(31.3%増)、旅客輸送収入が1,293億テンゲ(16.9%増)である。EBITDAは8,725億テンゲで46.5%増、税引後利益は3,436億テンゲと前年の1,608億テンゲから2倍を超えた。1株当たり利益は684.36テンゲである。

セグメント別に見ると、貨物は税引前利益5,287億テンゲ、税引後利益3,902億テンゲの黒字である一方、旅客は税引前で290億テンゲ、税引後で370億テンゲの損失だった。旅客には国庫の補助金459億テンゲが計上されており、それでも赤字が残る構図になっている。

費用面では、売上原価1兆9,241億テンゲのうち人件費が8,359億テンゲと最大の項目で、燃料・潤滑油が2,659億テンゲ、修繕・保守が2,428億テンゲ、電力が1,390億テンゲと続く。金融費用は2,458億テンゲである。

設備投資は有形固定資産ベースで1兆2,797億テンゲにのぼり、同年のEBITDAを大きく上回る。路線の複線化と車両の更新を同時に進めているため、投資が営業キャッシュフローを超える状態が続いており、外部資金への依存が財務の構造的な特徴になっている。

資金調達

2025年末の発行済債券は1兆2,762億テンゲで、KASEとAIXに上場している。内訳はドル建ての3%債(8億8,297万8,000ドル、2028年10月28日満期)のほか、テンゲ建てで11.5%債(2034年満期)、8.74%債(2043年満期)、9.25%債(2044年満期)、7.37%債(2042年満期)などが並ぶ。ドル建て債は株主であるサムルク・カズナに対して発行されたもので、2025年8月に満期を2025年から2028年へ延ばし、クーポンを2%から3%へ引き上げる覚書が結ばれた。2025年12月にはドストゥク〜モインティ回廊の近代化を目的に、株主向けに423億2,600万テンゲの債券(クーポン9.37%、2045年満期)を発行しており、この発行にはデジタル・テンゲが使われた。

国際市場からも資金を集めている。2026年4月、同社は最大10億ドルのドル建てユーロ債を発行し、ロンドン証券取引所、KASE、AIXの3市場に上場した。欧州復興開発銀行(EBRD)はこのうち1億2,500万ドルを引き受け、資金は旅客駅の近代化、中間回廊沿いのインフラ整備、安全性と運行効率の改善、サイバーセキュリティの強化に充てられるとしている。

銀行融資では、2024年7月にEBRDから2億スイスフラン(2029年まで半年ごとの分割返済、SARON6か月物+1.80%)を、2024年にユーラシア開発銀行から貨物用ディーゼル機関車の購入資金として76億4,007万ロシアルーブル(金利7.8%、2034年まで)を引き出した。2025年11月26日には、米国輸出入銀行の保証のもと、ドイツ銀行ルクセンブルクとバンコ・サンタンデールとの間で貨物用ディーゼル機関車の購入資金4億4,500万ドル相当の融資契約を結び、1億4,624万6,583スイスフラン(949億5,600万テンゲ)を引き出している。国内ではハリク銀行、フォルテバンク、シティバンク・カザフスタンなどの短期の信用枠を使う。

格付は、ムーディーズがBaa2・見通し安定的、フィッチがBBB-・見通し安定的を確認している(2025年時点)。S&Pは2025年9月4日、国内格付をkzA+からkzAA-へ引き上げた。

論点

第一に、通過需要への依存である。同社の増収は輸出と通過の伸びに支えられており、中国と欧州の荷動き、そしてロシア経由の北回廊との競争関係に左右される。中間回廊の実勢を測るには、同社の通過輸送量とアゼルバイジャン鉄道・ジョージア鉄道の輸送量を並べて読む必要がある。

第二に、投資と料金の関係である。設備投資がEBITDAを上回る水準で続いており、資金の相当部分を債券と国際金融機関の融資に頼る。株主であるサムルク・カズナ向けの債券発行が繰り返されている点は、資本市場だけでは投資計画を賄えないことを示している。

第三に、旅客事業の赤字である。補助金を受けてなお損失が出る一方で、輸送人員は減り、鉄道の分担率も下がっている。車両の更新と新型電車の投入が需要の回復につながるかどうかは、当面の観察点になる。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

RELATED ARTICLES

EBRD、カザフスタン鉄道の米ドル建て債に1億2500万ドル出資。中間回廊の整備に充当2026.04.29国有カザフスタン鉄道が最大10億ドルを起債し、EBRDが1億2500万ドルを引き受けた。調達資金は旅客駅の近代化と中間回廊沿いのインフラ整備に充てられる。ロンドン、カザフスタン、アスタナの3取引所に上場する。

MENTIONED IN

カザフスタン、ミニ製油所の鉄道輸出制限を解除。ロシアの燃料不足が輸出先に浮上2026.08.18カザフスタン鉄道(KTZ)は、運輸検察当局の8月7日の決定を受け、ミニ製油所の石油製品に対する鉄道輸出制限を解除した。国内22カ所・処理能力計約200万トンの小規模製油所に販路が戻る。折しもロシアが製油所への攻撃で燃料不足に陥っており、輸出先として浮上している。