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マスダール

アラブ首長国連邦(UAE)を拠点とする再生可能エネルギー開発事業者。

Masdar
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

マスダール(Masdar)は、アブダビ政府系の再生可能エネルギー開発会社である。国営石油会社ADNOC、国営エネルギー会社TAQA、政府系ファンドのムバダラが株主に並び、産油国の政府資本が再エネ開発を世界展開するという構図の代表例といえる。稼働・建設・開発中を合わせたポートフォリオは65ギガワット(2026年時点の会社発表)で、世界最大級の再エネ開発事業者に数えられる。大カスピ海地域では最も活発な外国投資家の一つである。

この地域での存在感は、単に案件が多いという以上の意味を持つ。域内の再生可能エネルギーは、政府が長期の電力購入契約を結んで買い取る方式で伸びてきた。事業者にとっては、その契約の相手方である国有の買電主体がどれだけ確実に支払えるかが投資判断の核心になる。マスダールとサウジアラビアのACWAパワーは、この条件を引き受けて先に入った少数の事業者であり、後続の外資が参入する際の前例をつくってきた。

正式名Abu Dhabi Future Energy Company PJSC(通称 Masdar)
設立2006年
本社アラブ首長国連邦・アブダビ
株主アブダビ国営石油会社(ADNOC)、アブダビ国営エネルギー会社(TAQA)、政府系ファンドのムバダラの3社(2022年の再編以降)
最高経営責任者モハメド・ジャミール・アル・ラマヒ
事業再生可能エネルギー発電所の開発・保有・運営。太陽光、風力、蓄電、グリーン水素
ポートフォリオ65ギガワット(2026年、稼働中・建設中・開発中の合計。会社発表)
目標2030年までに100ギガワット
展開国設立以来40か国超で開発・投資(会社発表、2026年時点)
ウズベキスタンの稼働設備2ギガワット超(2026年時点)
ウズベキスタンの案件規模開発中を含め3.75ギガワット超
主な案件(ウズベキスタン)ナヴォイ太陽光100メガワット(2021年稼働、同国初の外資による大型太陽光)、ザラフシャン風力500メガワット、シェラバード太陽光457メガワット
主な案件(アゼルバイジャン)ガラダグ太陽光230メガワット(2023年稼働、同国初の外資系大型太陽光)
カザフスタンでの位置づけエネルギー省が大手の国際投資家として、トタルエナジーズ、チャイナ・パワー、チャイナ・エナジーと並べて名を挙げている
資金の出し手案件ごとにEBRD、アジアインフラ投資銀行、国際金融公社などの国際金融機関が協調融資に入る

沿革

2006年、アブダビの政府系ファンド、ムバダラの子会社として設立された。当初は低炭素都市「マスダール・シティ」の開発で知られたが、その後は再エネ発電所の開発・保有に軸足を移した。2022年の再編でADNOC、TAQA、ムバダラの3社を株主とする体制になった。

会社の発表によれば、設立以来40か国を超える国で再生可能エネルギー事業を開発・投資してきた。2026年に設立20年を迎え、ポートフォリオが65ギガワットに達したと公表している。2030年までに100ギガワットへ広げるという目標を掲げ、最高経営責任者のモハメド・ジャミール・アル・ラマヒは、電力需要の伸びが速いなかで商業的に有望な市場に向かうと説明している。

ウズベキスタンでの事業

最大の足場はウズベキスタンである。2021年にナヴォイ州で100メガワットの太陽光を稼働させたのが最初で、同国で外資が手がけた初の大型太陽光にあたる。その後、中央アジア最大級の風力発電所となるザラフシャン(500メガワット、ナヴォイ州)、スルハンダリヤ州の大型太陽光シェラバード(457メガワット)を建設し、稼働中の設備は2ギガワットを超える(2026年時点)。

2025年12月には、同国初となる系統用蓄電池を併設した太陽光の複合案件が稼働を始めた。開発中を含めた同国での案件規模は3.75ギガワット超に達する。

2026年には、カシュカダリヤ州で計画される太陽光・蓄電池併設事業「ヌル・カシュカダリヤ」に対し、欧州復興開発銀行が総額1億9,550万ドル(1億6,850万ユーロ)の融資パッケージを供与すると発表した。事業会社はマスダールの完全子会社として設立されている。案件ごとに特別目的会社を立て、国際金融機関の協調融資を組むのが同社の標準的な進め方である。

アゼルバイジャンとカザフスタンでの事業

アゼルバイジャンでは2023年、同国初の外資系大型太陽光であるガラダグ太陽光発電所(230メガワット)を稼働させた。追加の太陽光と風力の案件も開発している。同国は原油と天然ガスの輸出国だが、国内消費を再エネへ振り替えて輸出余力を確保する政策を採っており、その担い手として外資が呼び込まれている。

カザフスタンでは、エネルギー省が同国の再生可能エネルギーに参入する大手の国際投資家として、トタルエナジーズ、チャイナ・パワー、チャイナ・エナジーと並べてマスダールの名を挙げている。同国は入札で事業者を選ぶ方式を採っており、外資はこの手続きを通じて参入する。

事業の型

同社の事業は、発電所を建てて売り切るのではなく、開発から保有・運営までを担う点に特徴がある。収入の柱は、国有の買電主体と結ぶ長期の電力購入契約である。この契約が事業の与信そのものになるため、相手方の信用力と契約の条件が投資判断を左右する。

資金は自己資金だけでなく、案件ごとの融資で賄う。域内では欧州復興開発銀行、アジアインフラ投資銀行、国際金融公社といった国際金融機関が協調融資に入ることが多い。国際機関が加わると、環境社会配慮や調達の手続きが融資の条件として課され、事業の透明性が一定の水準に保たれる面もある。

近年は蓄電池を併設する案件が増えている。太陽光と風力は出力が変動するため、系統側に調整力が要る。域内の系統は更新が追いついておらず、蓄電を事業者側で持つことが接続の条件になりつつある。

数字の読み方

発表される容量には、稼働中・建設中・開発中が混ざる。65ギガワットという数字は3つの合計であり、実際に発電している設備はその一部である。案件の規模を比べるときは、どの段階の数字かを確かめる必要がある。

また、持分の扱いにも注意が要る。合弁で参画する案件では、発表される容量が事業全体の容量であって、同社の持分に按分した量ではないことが多い。国別の「稼働2ギガワット超」といった数字も、同じ理由で持分ベースの発電能力とは一致しない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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MENTIONED IN

カザフスタンの再エネ比率、6年で2%から8%へ。施設172か所・3.8GW超、2025年は86億kWh2026.08.22エネルギー省の8月22日の発表によれば、カザフスタンの電源構成に占める再生可能エネルギーの比率はこの6年で2%から8%へ4倍になった。稼働中の施設は172か所・3.8ギガワット超、2025年の発電量は86億キロワット時。2026年は10か所・245メガワットの稼働を見込む。