アスタナ・ファイナンス・デイズ(Astana Finance Days、略称AFD)は、カザフスタンの首都アスタナで毎年開かれる国際金融会議である。主催はアスタナ国際金融センター(AIFC)で、2018年に始まり、2026年の回で9回目にあたる。2026年の日程は9月9日と10日の2日間で、AIFCは2026年2月23日にこの日程と主題「Delivering Impact. Capital in Action」を公表した。
集まるのは、銀行・証券会社・投資家といった市場の実務者に加えて、金融技術の事業者、規制当局、政府機関と準国営企業、国際機関である。AIFCはこれを東欧・中央アジア地域で最大規模の金融会合と位置づけており、2025年の回には82か国から5,500人超が参加したとしている。
この会議が投資家にとって意味を持つのは、講演の場であること以上に、AIFCが一年分の制度改正・新商品・上場・提携をまとめて発表する場になっているためである。2018年にはAIX(アスタナ国際取引所)の始動、2019年にはAIFC裁判所と国際仲裁センターの開所、2024年にはベンチャースタジオ規則の採択、2025年にはAIXでの4件の上場と7件の合意署名が、いずれも会期中に行われた。カザフスタンの金融制度に関する発表は、この数日間に集中する。
参加者数と参加国数はいずれも主催者であるAIFCの公表値で、第三者による検証は行われていない。年ごとに比べるときはこの点を踏まえる必要がある。
| 正式名称 | Astana Finance Days(AFD) |
|---|---|
| 主催 | アスタナ国際金融センター(AIFC)。AFSA、AIX、AIFC裁判所・国際仲裁センター、エクスパット・センター、AIFCアカデミー、テックハブ、グリーン金融センターなど構成組織がそれぞれセッションを持つ |
| 開催地 | カザフスタン・アスタナ。第1回は2017年万博の会場だったエキスポ会議センターで開かれ、2023年の回はAIFC構内で開かれた |
| 開催の頻度 | 年1回。2018年から2026年まで毎年開催され、2026年の回が第9回にあたる |
| 費用の負担 | スポンサーによる。2025年は28のパートナーが付き、フリーダム・ブローカーとKAZミネラルズがゴールド、ソリッドコア・リソーシズ、ITS、MYDプロダクションがシルバー、ERG、LMAXグループ、テニズ・キャピタルがブロンズ、アルールが産業、バイナンスが暗号資産、マスターカードがフィンテックの各パートナーとなった |
| 公式サイト | astanafindays.org(AIFCの発表が案内する登録・日程のページ) |
| 第1回(2018年) | 7月3〜5日。150人超の登壇者と2,500人の参加、8つのフォーラム。7月5日にナザルバエフ大統領らの臨席でAIFCの開所式が行われ、AIXが始動した |
| 第2回(2019年) | 7月1〜4日、当時の市名ヌルスルタン。7月1日に大統領の参加のもとAIFC裁判所と国際仲裁センターが開所。初のフィンテック・サミットとIPO準備のワークショップが開かれた |
| 第3回(2020年) | 6月29日〜7月3日、全面オンライン。主題は「変わりゆく世界の市場」。IMFのチャン・タオ副専務理事、ハーバード大学のリカルド・ハウスマン教授らが登壇(AIFCのロシア語発表による。英語版の見出しは6月28日からとしている) |
| 第4回(2021年) | 7月1〜3日、オンライン。主題は「Restoring Growth」(国際金融センター世界連合WAIFCの案内) |
| 第5回(2022年) | 6月27〜29日、対面とオンラインの併用。登壇予定者は200人超。アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)ビジネス評議会の会合を併催 |
| 第6回(2023年) | 6月7日の1日開催で、6月8〜9日のアスタナ国際フォーラムに連なる日程。約3,000人が70か国超から参加し、5つのトラックで28のパネルに143人が登壇 |
| 第7回(2024年) | 9月5〜6日。主題は「Innovate. Invest. Impact」。4,000人超が69か国から参加し、186人が38のパネルに登壇 |
| 第8回(2025年) | 9月4〜5日。主題は「Where Capital Empowers the Future」。5,500人超が82か国から参加。160人の登壇者、2日間で40の催し、AIXでの4件の上場、7件の合意署名。運用資産の合計が1兆5,000億ドルにのぼる運用会社が参加したとされる |
| 第9回(2026年) | 9月9〜10日。主題は「Delivering Impact. Capital in Action」。80か国超から5,500人超の参加見込み(アスタナ・タイムズが2026年8月18日にAIFCの説明として伝えた数字) |
主催するAIFCとの関係
AFDは、アスタナ国際金融センターが自ら開く年次の会合である。センターは2018年にカザフスタンが首都に設けた金融特区で、英米法にもとづく独自の法体系と専用の裁判所を持つ。特区そのものの仕組み、税制、AIXの位置づけは別項「アスタナ国際金融センター(AIFC)とは」にまとめてある。
両者の関係は、第1回の成り立ちに端的に表れている。2018年7月3日から5日にかけて8つのフォーラムが開かれ、その最終日である7月5日に、エキスポ会議センターでAIFCの開所式が行われた。会議が先にあり、その場で特区が正式に開いた形である。同じ日にAIXの取引が始まり、上海証券取引所とナスダックが戦略パートナーとして紹介された。
運営はAIFC本体(AIFC Authority)が担い、傘下の各組織がセッションを持ち寄る構成をとる。規制当局のAFSAは免許制度や国際的な規制協力を、AIXは上場と新商品を、AIFC裁判所と国際仲裁センターは紛争解決の実績を、エクスパット・センターは外国人の滞在手続きを、それぞれの枠で扱う。参加費ではなくスポンサーで費用を賄う方式をとっており、パートナーの顔ぶれはその年にAIFCが力を入れている分野を映す。
政府側の枠組みとの接続もある。2023年の回は6月7日の1日開催で、翌8〜9日に政府が開くアスタナ国際フォーラムに続く日程に置かれた。2025年の回もアスタナ国際フォーラムの支援を受けている。総合的な国際フォーラムを政府が開き、金融の専門会議を特区が開くという二層の構えになっている。
開催の沿革と規模の推移
第1回の2018年は7月3〜5日、150人超の登壇者と2,500人の参加者を集めた。第2回の2019年は7月1〜4日で、初日にAIFC裁判所と国際仲裁センターが開所し、初のフィンテック・サミットが併催された。グリーン金融アワードもこの年に創設されている。
2020年と2021年は開催形式が変わった。2020年は6月29日から7月3日まで全面オンラインで、主題は「変わりゆく世界の市場」、感染症の流行が世界経済に与える影響が中心の議題となった。2021年も7月1〜3日にオンラインで開かれ、主題は「Restoring Growth」だった。2022年は6月27〜29日に対面とオンラインを併用する形で戻り、200人超の登壇が予定された。
2023年は6月7日の1日開催で、約3,000人が70か国超から集まり、5つのトラックに分けた28のパネルに143人が登壇した。ここから規模の拡大が続く。2024年は9月5〜6日に移り、4,000人超が69か国から参加、186人が38のパネルに登壇した。2025年は9月4〜5日で5,500人超・82か国、160人の登壇者、40の催しとなった。
時期の移動は読み取りやすい変化である。2018年から2023年までは6月下旬から7月上旬に置かれていたが、2024年に9月上旬へ移り、以後は9月開催が続いている。2026年の9月9〜10日もこの流れの上にある。
会期中に発表されてきたもの
2018年はAIXの始動そのものが最大の発表だった。2019年はAIFC裁判所と国際仲裁センターの開所に加えて、資力のない当事者に無償で法律相談を提供するAIFC Law Pro Bonoの事務所が開かれた。
2022年は、AIFCテックハブが法人向け技術導入を支援するCorpUp Central Asiaを立ち上げ、国立銀行の決済・金融技術開発センターがデジタルテンゲ(中央銀行デジタル通貨)の進捗を説明し、AIFCに登録した暗号資産取引所とカザフスタン国内の商業銀行との連携パイロットが正式に始まった。
2023年は取引インフラの回だった。AFSAから多角的取引施設(MTF)の免許を受けた第1号であるITSが取引を開始し、AIXはアブダビ証券取引所との間で、同取引所のTabadulを通じて双方の市場へアクセスする合意に署名した。グリーン金融アワード2023では、ハリク銀行、ドス・クレドバンク、EYの助言部門、ハンガリー、KEGOCが表彰されている。ハーバード大学の成長ラボとAIFCによるカザフスタンの輸出構造の分析報告も、この場で示された。
2024年は制度と商品の追加が並んだ。ベンチャースタジオ規則が採択され、AIXは国際再生可能エネルギー証書(I-REC)を扱う商品群に加えた。成都と中国西部金融センターの中央アジア地域拠点であるCDIC InternationalがAIFCの法域内に置かれ、イスラム金融・ビジネス協会が発足した。イスラム開発銀行の支援でAIFCとCSQ Lawがまとめたカザフスタンのイスラム金融の国別報告も公表された。
2025年は上場と合意の数が明示された回である。AIXでは、タイヤブ・ファイナンスのスクーク、アクトベ社会起業公社の社会貢献債の初回トランシェ、香港取引所と同時にIPOを行った鉱山会社Jiaxin International Resources、ステーキング機能を備えたソラナ現物ETFの4件が発表された。合意は7件で、カタール金融センター庁とのデータ保護に関する覚書、AFSAが導入した規制手数料のドル連動ステーブルコイン払い(バイビットが最初の署名者)、ダム起業支援基金とイスラム金融・ビジネス協会の覚書、エクスパット・センターとエア・アスタナの覚書、AIFCアカデミーとナザルバエフ大学の覚書、AFSAとモンゴル金融規制委員会の覚書などが含まれる。テュルク・グリーン金融評議会の初会合と、ユーロアジア証券取引所連盟(FEAS)の秋季会合・第42回総会も併催された。
2026年の回
2026年の回は9月9日と10日、アスタナで開かれる。AIFCが2026年2月23日に公表した主題は「Delivering Impact. Capital in Action」で、議題として資本市場と投資商品、規制と法と市場の信認、制度規模での革新、実体経済への資金供給、地域および国境をまたぐ資本協力の5つが挙げられている。
登壇が確定しているとされるのは、カザフスタンのマディエフ人工知能・デジタル発展相、スレイメノフ国立銀行総裁、カザフスタン金融業者協会のバフムトワ会長、テュルク諸国機構のオムラリエフ事務総長である。国際機関と国際企業では、イスラム開発銀行研究所、フリーダム・ホールディング、バイナンス、マスターカード、ブルームバーグ、上海証券取引所の参加が見込まれている。
会場では、金融機関、銀行、投資・資産運用会社、フィンテック事業者が出展するAFD Exhibitionが開かれる。AIFCの法域内で成長した企業の資金調達や国際展開の事例紹介も予定されている。
80か国超から5,500人超という参加見込みの数字は、アスタナ・タイムズが2026年8月18日にAIFCの説明として伝えたものである。AIFC自身の2月の発表は、2025年の実績として5,500人超・82か国を挙げるにとどまり、2026年の見込み人数には触れていない。登録と詳細な日程は公式サイトの astanafindays.org に置かれる。
カザフスタンの資本市場にとっての位置づけ
この会議の重みは、主催者であるAIFCがカザフスタンの対外的な資金調達でどれだけの役割を持つかで測ることができる。AIFCが2025年12月26日に公表した年間実績によれば、2018年の開設以来センターを通じてカザフスタン経済に呼び込まれた資金は累計200億ドル、2025年単年では60億ドル(うち証券投資40億ドル、参加企業による投資20億ドル)で、前年を29億ドル上回った。2025年に新たに登録した企業は1,400社超、累計では90か国超の4,900社超が登録している。AIXは2025年に売買代金20億ドルと新規上場200件を記録した(2024年は13億ドルと140件)。
国際的な評価の位置も公表されている。2025年9月25日発表の世界金融センター指数(GFCI 38)で、アスタナは主要指数に含まれる120都市のうち68位、東欧・中央アジア地域では首位を維持した。アスタナがこの指数に初めて入ったのは2018年3月、地域首位となったのは2023年3月である。
カザフスタンの資本市場は、国内法のもとで動くKASE(カザフスタン証券取引所)と、英米法のもとで動くAIXという二つの市場を持つ。国営企業のIPO、年金資産の運用先の多様化、イスラム金融やデジタル資産といった新分野の制度整備は、いずれも二つの市場のどちらで、どの規制のもとで行うかという選択を伴う。AFDは、その年の選択がまとめて対外的に示される場になっている。
ただし、会議で示されるのは方針と個別の取引であって、制度そのものは別の手続きで決まる。法域の変更は大統領令と憲法的法律、AIFC域内の規則はAFSAの規則制定、国内の金融政策は国立銀行と金融市場規制開発庁の措置による。会期中の発表を制度の確定と読まないことが、この会議の記事を読むときの前提になる。
資料と数字の読み方
規模の数字はすべて主催者の公表値である。しかも回によって食い違うことがある。2024年の参加国数は、直後の総括発表では69か国だが、翌年2月の日程告知では「70か国超」となっている。年次比較をする場合は、どの発表を基準にしたかを揃える必要がある。
会期中の発表はAIFCのニュース欄に英語・ロシア語・カザフ語で載る。英語版が要旨にとどまる場合があるため、原資料を確かめるときはロシア語版も並べて見るのが確実である。会議そのものの登録と日程は、AIFCのサイトではなく別ドメインの公式サイト astanafindays.org に置かれている。
略称の「AFD」は注意を要する。開発金融の文脈では、同じ略称がフランス開発庁(Agence Française de Développement)を指すことが多く、中央アジアではウズベキスタンの上下水道整備などにこの機関の融資が入っている。文中の「AFD」がどちらを指すかは、前後の文脈で判断する必要がある。
参考資料
- Astana Finance Days 2026 Dates Announced(AIFC、2026年2月23日) ↗
- Astana Finance Days 2026(AIFC イベントページ) ↗
- Astana Finance Days 2026 — AIFC flagship finance forum(公式サイト) ↗
- Astana Finance Days 2026 to Bring Global Investors and Financial Leaders to Kazakhstan(The Astana Times、2026年8月18日) ↗
- Astana Finance Days 2025 Outcomes: Asset Managers Overseeing $1.5 Trillion, 5,500 Participants from 82 Countries, New Listings and Agreements(AIFC、2025年9月10日) ↗
- Dates for Astana Finance Days 2025 Announced(AIFC、2025年2月17日) ↗
- New financial products, legislative initiatives, market insights and key announcements from Astana Finance Days(AIFC、2024年9月9日。第7回の総括) ↗
- On September 5-6, the AIFC will hold the international financial conference Astana Finance Days 2024(AIFC、2024年8月19日) ↗
- Capital hosts Astana Finance Days 2023 – a major event of the year in the world of finance(AIFC、2023年6月7日) ↗
- The Astana Finance Days annual conference was held at the Astana International Financial Centre(AIFC、2023年6月7日。パネル数・登壇者数とグリーン金融アワード) ↗
- Astana Finance Days Conference to Focus on Sustainability, Social Responsibility, and Growth Amidst Uncertainty in 2022(The Astana Times、2022年6月20日。第5回の日程) ↗
- Astana Finance Days 2021(World Alliance of International Financial Centers。2021年7月1〜3日の会期と主題) ↗
- Astana Finance Days 2020は全面オンラインで開催(AIFC、2020年6月29日、ロシア語) ↗
- What is the main outcome of Astana Finance Days?(AIFC、2019年7月5日。第2回の総括) ↗
- AIFCの開所式がAstana Finance Daysの会期中に行われた(AIFC、2018年7月5日、ロシア語) ↗
- Astana Finance Days take place in capital ahead of AIFC official launch(The Astana Times、2018年7月。第1回の会期・規模) ↗
- $6bn raised through the Astana International Financial Centre in 2025 and over 1,400 new companies were registered(AIFC、2025年12月26日) ↗
- Astana continues to lead among financial centres in the Eastern Europe and Central Asia region(AIFC、2025年9月25日。GFCI 38) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。