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APMターミナルズ

A.P.モラー・マースク傘下のターミナル運営部門。ジョージアのポチ港を運営する。

APM Terminals
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解説 · 2026年9月時点

APMターミナルズは、デンマークの海運・物流大手A.P.モラー・マースクのターミナル部門である。半世紀以上にわたってマースクの一部として港湾を手がけ、2001年1月から独立した事業部門になった。本部はオランダのハーグに置く。2025年通期でゲートウェイターミナル53とハブ7を34か国で運営し、部門の売上高は53億3,900万ドル、EBITDAは18億4,300万ドルだった。マースクの3事業部門(海運のオーシャン、物流のロジスティクス・アンド・サービシズ、ターミナル)のうち、金額としては最も小さいが、2025年は3部門で唯一、収益が大きく伸びた部門である。

大カスピ海地域では、ジョージアのポチ港を運営するAPMターミナルズ・ポチが唯一の拠点になる。中央アジア5か国はいずれも内陸国で海港を持たないため、この地域で同社の名が出るのはほぼポチに限られる。中国から中央アジアとカスピ海、コーカサスを経て欧州へ抜ける中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)の黒海側の出口を、同社が押さえている形である。

同社の数字を読むときにまず押さえるべきは、取扱量の単位が「ムーブ」だという点である。ムーブはクレーンが1回動かしたコンテナの本数を指し、コンテナの大きさを問わない。TEU(20フィート換算の個数)で公表する運営会社とは単位が違うため、そのままでは比較できない。40フィートコンテナ1本は2TEUだが1ムーブである。

正式名APM Terminals
位置づけデンマークのA.P.モラー・マースクの一部門。2001年1月から独立した事業部門になった
本部オランダ・ハーグ
最高経営責任者キース・スベンセン(2022年7月1日就任。それ以前の5年間は最高執行責任者)
拠点34か国にゲートウェイターミナル53、ハブ7(マースクの2025年通期年次報告)。同社のファクトシートでは35か国61拠点と開発中の新港2件
取扱量2,580万ムーブ(2025年通期、ハブを含む)。財務連結するゲートウェイに限れば1,425万4,000ムーブ(前年比8.9%増)
寄港2万6,988回以上(2025年通期、寄港回数)
売上高53億3,900万ドル(2025年通期、前年比20%増)
EBITDA18億4,300万ドル(2025年通期、マージン34.5%)
EBIT17億4,700万ドル(同、マージン32.7%)。うち持分法投資からの利益4億4,000万ドル
1ムーブ当たり収入364ドル、費用279ドル(2025年通期)
設備投資5億7,300万ドル(2025年通期)
投下資本利益率16.1%(2025年、直近12か月平均)
従業員2万人超
大カスピ海地域の拠点ジョージアのポチ港(APMターミナルズ・ポチ)。同地域で唯一の拠点

沿革と位置づけ

マースクは自社船の寄港地を確保するため、早くから港湾荷役に関わってきた。その事業を切り出して独立の部門にしたのが2001年1月である。以後、船社の系列という出自を持ちながら、自社以外の船会社と荷主を顧客として取り込む方向へ舵を切ってきた。同社は自らの目標を「世界最良のターミナル会社」と表現し、船会社向けと陸側の荷主向けの収入比率をおよそ75対25としている。

2026年時点の経営陣は、最高経営責任者がキース・スベンセン(2022年7月就任)、最高執行責任者がオラフ・ゲルハウゼン(2023年11月就任)、最高財務責任者がピーター・ウィクストローム(2025年1月就任)である。地域は「アフリカ・欧州」「南北アメリカ」「アジア・中東」の3つに分かれており、ジョージアのポチはアフリカ・欧州地域に属する。同地域の統括はイゴール・ファン・デン・エッセンが務める。

同社が掲げる価値は、効率、責任、接続性、能動性、信頼性の5つである。船会社にとっては岸壁での折り返しの速さ、荷主にとっては陸側での引き取りのしやすさが評価の中心になるため、荷役の標準化とデジタル化を全社で揃える方針を取っている。顧客満足度の指標(NPS)を毎年公表し、2024年第1四半期に過去最高を記録したと説明している。

「ムーブ」で数える

同社の取扱量には少なくとも2つの数字がある。ファクトシートに載る2,580万ムーブは、ハブとゲートウェイの両方、すなわち持分法の合弁を含む運営全体を指す。これに対してマースクの年次報告に載る1,425万4,000ムーブは、財務上連結するゲートウェイターミナルだけの数である。後者の内訳は、北米400万7,000、アジア373万1,000、欧州303万6,000、中南米271万、アフリカ77万で、いずれも千ムーブ単位である。

さらに、7つのハブターミナルの財務成績はターミナル部門ではなく海運のオーシャン部門に計上される。ハブは自社船の積み替えのための設備であり、事実上、船隊運営の一部として扱われているためである。したがって「APMターミナルズの売上高」と言うとき、ハブの収入はそこに入っていない。

拠点の数も資料によって変わる。マースクの年次報告は34か国でゲートウェイ53とハブ7、同社のファクトシートは35か国で61拠点と開発中2件としている。ゲートウェイとハブを合わせるか、開発中の案件を含めるか、共同運営をどう数えるかで結果が動く。拠点数を引用するときは、どの定義かを添える必要がある。

2025年の実績

2025年通期の部門売上高は53億3,900万ドルで前年比20%増、EBITDAは18億4,300万ドルで15%増(マージンは35.9%から34.5%へ低下)、EBITは17億4,700万ドルで31%増、設備投資は5億7,300万ドルだった。投下資本は93億2,500万ドル、投下資本利益率は16.1%(前年13.5%)である。同社はこの年を「過去最高の財務成績」と説明している。

取扱量は8.9%増え、稼働率は78%から86%へ7.7ポイント上がった。1ムーブ当たりの収入は8.2%増の364ドル、費用は8.3%増の279ドルである。費用の内訳は現業労働者の人件費が38%、その他の運営費が22%、販売管理費が16%、減価償却費が14%、コンセッション料が10%で、人件費が費用構造の中心を占める。

取扱量の伸びの内訳には注意がいる。オーシャン部門(自社の海運)からの取扱量は24%増えた一方、外部顧客からの取扱量は1.6%増にとどまった。これは、マースクが従来の2Mアライアンスから、独ハパックロイドと組む新しい東西ネットワーク(ジェミニ協力)へ移行し、自社の寄港地が同社のターミナルへ寄ったためである。それでも収入ベースでは、オーシャン以外の顧客が約63%を占めるとしている。

ポートフォリオの入れ替え

運営権の取得と手放しは、この業種では日常の経営判断である。港ごとに需要の伸びと契約条件が違い、採算の合わない拠点を抱え続ける理由がないためである。

2025年の主な動きとして、クロアチアのリエカ・ゲートウェイターミナルが営業を開始し、ペルーのカヤオ北ターミナルの近代化第3A期が完了した。バングラデシュではQNSコンテナ・サービシズとの間で、5億5,000万ドル規模のラルディア・コンテナターミナルの30年コンセッションに署名した。同国最大級の官民連携事業とされる。

米国では、ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社との間でAPMターミナルズ・エリザベスの賃借契約を2062年まで延長し、アラバマ州港湾局とはモービル港に約400メートルの新バースを建設することで合意した。デンマークではフレデリシア・コンテナターミナルの39%を、フレデリシア・シッピングおよびADPとの合弁で取得した。一方、中国の天津の合弁からは持分を売却して撤退している。メキシコのラサロ・カルデナスでは第2期拡張として電動のARMGクレーン6基を導入し、これまでに1億6,500万ドルを投じた。65ヘクタールを加えて年間能力を220万TEUへ倍増させるとしている。

同社が競り負けた案件もある。ICTSIの2025年年次報告によれば、南アフリカ高等裁判所は2025年10月、国営トランスネットがダーバン・コンテナターミナル第2バースの25年契約をICTSIに与えたことを争ったAPMターミナルズの訴えを退けた。トランスネットとICTSIは同月に提携契約に署名し、2026年1月1日に運営が移っている。

コンセッションという事業の形

ターミナル運営は、港湾を所有する国や港湾当局から一定期間の運営権を得て、そこに設備投資をして回収する事業である。同社の2025年通期のコンセッション料は4億600万ドルで、費用全体の10%を占めた。資産計上した賃借費用はこれとは別に扱われる。

期間は長い。2025年に延長した米国のエリザベスは2062年まで、同年に締結したバングラデシュのラルディアは30年である。既存の運営者が更新で権利を押さえる構図は各地で見られ、競合のICTSIも2026年2月にメルボルン港ウェッブ・ドック東ターミナルの契約を26年延長し、期限を2040年から2066年へ延ばしている。契約が長いほど設備投資を回収しやすい一方、需要が想定を下回っても撤退しにくい。

会計上は、コンセッションの延長がそのまま資産と負債の両建てで貸借対照表を膨らませる。同社の投下資本が2025年に10億ドル増えた主因は、エリザベスのコンセッション延長だった。投下資本利益率(ROIC)を年ごとに比べるときは、この種の一括計上が入っていないかを見る必要がある。

生産性と脱炭素

同社が運営の指標として重視するのが、1時間当たりの荷役本数(PMPH、Port Moves Per Hour)である。船が岸壁にいる時間が短くなれば、船会社は航海速度を落として燃料を節約でき、定時性も上がる。同社は港での滞船時間の短縮を目標に掲げており、この指標の改善を顧客価値の中心に置いている。

脱炭素では、2020年から2030年までに絶対量の排出を70%減らし、2040年に実質ゼロにするという目標を掲げる。ターミナル運営者としては野心的な部類に入る。手段は荷役機械の電動化と、再生可能エネルギー由来の電力の調達である。マースクの2025年年次報告によれば、同社の使用電力に占める再生可能エネルギーの比率は2024年の46%から2025年に約62%へ上がり、2030年に100%を目指している。上昇の主因はモロッコのタンジェ(TC1およびMEDPortタンジェ)を対象とする電力購入契約だった。ターミナル部門のスコープ1・2の絶対排出量は、2022年を基準に2025年で16%超の減少になったとしている。

コーカサスでの事業

同社がこの地域に持つ唯一の拠点が、ジョージアのポチ港である。2011年4月にポチ海港会社の経営権を取得し、以後、岸壁と荷役設備、鉄道・トラックの搬出入設備、穀物ターミナルの整備を進めてきた。運営の詳細と投資額、コンテナ取扱量はAPMターミナルズ・ポチの項に譲る。

グループの立場から見ると、ポチは欧州地域の303万6,000ムーブ(2025年通期)のなかに埋もれる規模である。マースクの年次報告は、2025年の欧州地域の伸びをイタリアのバドとデンマークのオーフスの寄与と説明し、ポチには触れていない。ポチ自体の取扱量はTEUで別途公表されるため、グループの地域数字からポチの動きを読み取ることはできない。

同じ黒海岸では、バトゥミ港をICTSI傘下のバトゥミ国際コンテナターミナルが運営し、さらにジョージア政府が大水深のアナクリア港を建設している。中間回廊の貨物が伸びても、それがどの港に落ちるかは別の問題であり、ポチの位置づけはこの3港の関係のなかで決まる。

親会社との関係

A.P.モラー・マースクの2025年通期の連結売上高は539億8,800万ドル、EBITDAは95億3,000万ドル、EBITは35億ドル、当期純利益は29億ドルだった。運賃の下落で海運のオーシャン部門の利益が大きく落ち込むなか、ターミナル部門は増益で全体を支えた。グループのEBITに占めるターミナル部門の比率は、2025年に約半分に達している。

四半期でも同じ傾向が出ている。2025年第4四半期のターミナル部門は売上高13億5,300万ドル、EBITDA4億4,000万ドル、EBIT3億2,100万ドルで、オーシャン部門がEBITで1億5,300万ドルの赤字だったのと対照的だった。

ターミナル部門の収益が海運の市況と逆に動くとは限らない。荷動きが増えれば両方が伸び、減れば両方が落ちる。ただし運賃はスポット市場で急激に動くのに対し、ターミナルの収入は長期のコンセッションと取扱本数に紐づくため、変動が緩やかである。2025年に両部門の成績が反対を向いたのは、この時間差が表れたものと読める。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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ポチ港のコンテナ取扱が40万TEU超、7%増。一般貨物は60%増と中間回廊の伸びを映す2026.08.14ジョージア西部のポチ港を運営するAPMターミナルズ・ポチが2026年1〜7月の実績を公表した。コンテナ取扱は40万4,760TEUで前年同期比7%増、一般貨物は27万446トンで60%増、フェリー貨物も9万7,761トンから12万7,163トンへ伸びた。アナクリア深水港の建設が進む。ベルギーのヤン・デ・ナル「大型船の入港を制限せず費用効率を確保」2026.08.12ジョージア西部のアナクリア深水港について、施工を担うベルギーのヤン・デ・ナルのジョージア支店長が、泊地と航路の設計により大型船の入港を制限せずに港の全能力での稼働を保証できると述べた。オランダのロイヤル・ハスコニングDHVが設計顧問を務める。ポチ港が新型ハーバークレーンを導入、処理能力65万TEUへ。2025年は63.6万TEUで過去最高2026.06.25APMターミナルズ・ポチが多目的モバイルハーバークレーンを新たに調達する。2026年末までに納入され、コンテナ処理能力は65万TEU超、非コンテナ貨物を含めた処理能力は約50万トン増える。同港はジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン向け海上コンテナ貨物の約8割を扱う。