解説 · 2026年9月時点
ダヴル銀行(Davr Bank)は、ウズベキスタンの民間商業銀行である。中央銀行の登録簿では2001年9月29日開設で、同じ登録簿に載る35行の商業銀行の一つである。個人向けの小口業務と中小企業向け融資を柱としてきた。
2026年、この銀行はアゼルバイジャン最大の銀行であるアゼルバイジャン国際銀行(ABB)の傘下に入った。ABBは9月10日に共和国証券取引所「トシケント」で普通株5,100万株を取得し、資本の51%を握った。ABBはこの案件を、2026〜28年の開発戦略に掲げた地理的拡大の第一歩と位置づけている。
取引後の行名は「ABB Davr」となる予定で、ABBの頭取は2026年9月3日の同行サイト掲載のインタビューで、行名変更の手続きが終わりしだいブランドを切り替え、10月ごろには見られるだろうと述べた。2026年9月下旬時点で、ABBは名称変更の完了を発表していない。
| 正式名 | «Davr-bank» xususiy aksiyadorlik tijorat banki(私的株式商業銀行ダヴル銀行)。略称 "Davr bank" XATB |
|---|---|
| 開設 | 2001年9月29日(ウズベキスタン中央銀行の商業銀行本店登録簿) |
| 免許 | 中央銀行の免許第71号、免許日は2021年12月25日。同じ免許日の銀行は登録簿に16行並ぶ |
| 本店 | 100021 タシケント市シャイハンタフル地区ナヴォイ・ザルカイナル通りブロックA |
| 納税者番号 | 203709707 |
| 事業 | 商業銀行業務。個人向けと中小企業向けが中心 |
| 発行済株式 | 普通株式1億株(2026年6月8日の年次株主総会の議決権数。定足数100%)。額面は1株5,000スム |
| 上場 | 共和国証券取引所「トシケント」(銘柄コードDRBK、ISIN UZ7050240009)。企業情報開示ポータルの登録では銘柄コードをDVRBと記載している |
| 純利益 | 6,673億3,994万6,000スム(2025年通期。年次株主総会に報告された額)。うち5%の333億6,699万7,300スムを予備基金へ繰り入れ、残る6,339億7,294万8,700スムを未処分利益に留保。配当は決議されていない |
| 外部監査 | グラント・ソントン(2025年通期) |
| 支配株主 | アゼルバイジャン国際銀行(ABB)が51%(2026年9月10日に5,100万株を取得)。取引額は1兆6,463億4,528万スム、1株32,281.28スム |
| 創業者 | ルトフッラ・ハイルラエヴィチ・ウバエフ氏(監督理事会議長)。2026年6月の総会資料では4,686万株を保有 |
| 頭取 | アブドゥマジド・アブドゥヴァヒトヴィチ・サマドフ氏(2026年6月の総会で雇用契約を1年延長) |
| 規模 | 顧客200万超、従業員1,800人超、支店・サービスセンター43か所、資産20億マナト超(いずれもABBの発表。基準日は示されていない) |
| 格付け | S&Pの長期信用格付けはB+、見通し安定的(ABBが2026年9月11日に公表。Bからの引き上げ) |
銀行としての位置づけ
中央銀行の商業銀行本店登録簿では、区分は「株式商業銀行」で、正式名は私的株式商業銀行ダヴル銀行である。開設日は2001年9月29日で、同じ時期に開設された民間行にはユニバーサル銀行(2001年3月)、カピタルバンク(2001年4月)、オクトバンク(2001年6月)がある。ウズベキスタンでは1990年代前半に国有銀行が相次いで設立された後、2000年代初頭に民間の株式商業銀行が生まれた時期があり、同行はその一群に属する。
免許は第71号で、登録簿に記載された免許日は2021年12月25日である。この日付は同じ登録簿で16行に共通しており、個別の設立時期ではなく免許の一斉再交付を示している。銀行の設立時期を知りたいときは、免許日ではなく開設日の欄を見る必要がある。
2026年9月3日時点の登録簿に載る商業銀行は35行で、ダヴル銀行はそのうち22番目に記載されている。ウズベキスタンの銀行部門は国有銀行が資産の大半を占める構造にあり、同行のような民間行は中小企業向けの融資と個人客の獲得で規模を伸ばしてきた。
株式と株主
発行済みの普通株式は1億株である。2026年6月8日に開かれた年次株主総会は定足数100%で、各議案の賛成票が1億であったことから確認できる。額面は1株5,000スムで、額面ベースで計算した資本金は5,000億スムになる。
2026年6月の総会に提出された監督理事会の候補者の資料では、監督理事会議長のルトフッラ・ウバエフ氏が4,686万株(46.86%)、ミルコディル・ミルザヤトフ氏が979万株(9.79%)を保有していた。ウバエフ氏は同行の創業者で、ABBの発表でも創業者兼監督理事会議長と紹介されている。
同じ総会は、ABBへの株式売却についても決議している。議案13は、資本の51%にあたる株式の売却の可能性についてABBとの交渉を続け、取引条件を詰めることを承認した。あわせて、その後の両者の合意により、ABBがさらに23%の株式を取得する権利を持つオプションの仕組みを協議することも承認している。この23%のオプションは、2026年9月時点で行使や合意の有無が公表されていない。
ABBによる51%取得
経緯は2026年前半から段階を追って公表された。ウズベキスタン中央銀行は6月23日、第5回タシケント国際投資フォーラムの機会にABBのアッバス・イブラヒモフ頭取らと中央銀行の担当部署が会談し、ABBによる51%取得の計画を話し合ったと公表した。8月22日にはタシケントで開かれた第4回ウズベキスタン・アゼルバイジャン地域間フォーラムで、イブラヒモフ頭取とウバエフ氏が支配株式の取得に関する合意書に署名した。翌23日には、アゼルバイジャンのアリエフ大統領とウズベキスタンのミルジヨエフ大統領がオンラインで参加して「ABB Davr」事業の開所式が開かれている。
株式の移転は9月10日に共和国証券取引所「トシケント」で行われた。13時39分から13時55分までの間に普通株の売買が6件成立し、価格はいずれも1株32,281.28スム、株数の合計は5,100万株、売買代金の合計は1兆6,463億4,528万スムだった。取引所の記録に売り手と買い手の名は載らず、買い手がABBであることはABBの発表による。ABBは翌11日、取引の完了と総額1.646兆スム(約1億4,000万ドル)を発表した。
この価格を全株に当てはめると、銀行全体の評価額は約3兆2,281億スムになる。2025年の純利益6,673億スムに対しておよそ4.8倍にあたる。ただし取引は支配株式の売買であり、通常の市場価格とは条件が異なる。
ABBの頭取は9月3日のインタビューで、取引に必要な許認可はすべて取得済みだとし、両国の中央銀行、アゼルバイジャン経済省、ウズベキスタン投資・産業・貿易省、ウズベキスタン競争発展・消費者権利保護委員会の支援を挙げている。
事業と規模
ABBの発表によれば、ダヴル銀行は顧客200万超、従業員1,800人超、首都と地方に支店とサービスセンター43か所を持ち、資産は20億マナトを超える。中小企業への融資で積極的な姿勢をとってきたとされる。これらの数値に基準日は付されていない。
ABBは同行を普遍的な銀行(ユニバーサルバンク)として運営する方針を示し、個人、中小企業、大企業の三層に幅広い銀行サービスを提供するとしている。優先分野として挙げているのは中小企業向け業務、デジタルバンキング、決済、荷為替(信用状などの書類取引)、法人向け金融である。ABBはアゼルバイジャンで蓄積したデジタルサービスと人工知能を用いた仕組みの移植も掲げているが、市場ごとの差を踏まえて商品を現地に合わせるとも述べている。
ABBは、両国間の事業の担い手としての役割にも言及している。同行の説明では、ウズベキスタンにはアゼルバイジャン資本の企業が470社超、アゼルバイジャンにはウズベキスタン資本の企業が130社超あり、決済、貿易金融、書類取引の需要がある。買収により、ABB金融グループが扱う顧客は約550万人になるとしている。
格付けと財務情報の所在
ABBは2026年9月11日、S&Pがダヴル銀行の長期信用格付けをBからB+へ引き上げ、見通しを安定的としたと発表した。ABBの説明では、S&Pは必要な場合に同行がより高い格付けを持つABB金融グループから相当の支援を受けられる点を挙げ、今後1年も小口業務と中小企業向け融資が中心であり続けるとみている。またS&Pの見解として、ダヴル銀行がABB金融グループの総資産のおよそ10〜12%を占めると記している。S&Pが格付けを変更した日付は、ABBの発表には書かれていない。
同行の財務の公表資料は限られている。スム建ての通期の純利益は、年次株主総会の決定として企業情報開示ポータルに載る。2025年通期は6,673億3,994万6,000スムで、うち5%が予備基金へ、残りが未処分利益に留保され、配当は決議されていない。2025年の外部監査はグラント・ソントンが担当した。一方、総資産、預金、貸出残高といったスム建ての貸借対照表の数値は、ここで参照した公表資料からは確認できなかった。
経営体制は2026年6月の総会で1年の任期をもって決まっている。監督理事会はウバエフ氏、ミルザヤトフ氏、オゾダ・アブドゥラフマノワ氏、シャフカト・ギヤソフ氏、アドハム・アリモフ氏の5人、経営会議議長(頭取)はアブドゥマジド・サマドフ氏である。
数字の読み方
取引所の銘柄ページに出る価格は、この銘柄では実勢を表さない。日次の終値の系列は5,000スム、すなわち額面のまま並び、直近の約定日は2019年10月31日と表示される。9月10日の6件の約定は、日付を指定した取引結果の記録には1株32,281.28スムで残っているが、銘柄ページの終値には反映されていない。価格を確かめるときは日付指定の取引結果を見る必要がある。
銘柄コードも資料によって違う。取引所の記録と取引結果はDRBKを使うが、企業情報開示ポータルの登録では銘柄コードがDVRBと書かれている。ISIN(UZ7050240009)で照合するのが確実である。
資産の規模がアゼルバイジャン・マナトで示されている点にも注意が要る。ABBの発表はロシア語版もアゼルバイジャン語版も「20億マナト超」と書いており、ウズベキスタンの通貨であるスムではない。取得額はスム(1兆6,463億スム)とドル(約1億4,000万ドル)で示されており、三つの通貨が混在する。比較するときは換算の基準日をそろえる必要がある。
参考資料
- Частный акционерный коммерческий банк «Давр-банк» — ウズベキスタン中央銀行 商業銀行本店登録簿 ↗
- Головные офисы коммерческих банков(登録簿の一覧、2026年9月3日時点のxlsx) ↗
- Fact 6. Решения высшего органа управления("Davr-bank" XATB、2026年6月8日の年次株主総会。openinfo.uz) ↗
- Информация о ценной бумаге DRBK(UZ7050240009)— 共和国証券取引所「トシケント」 ↗
- Итоги торгов(UZ7050240009 DRBK、10.09.2026)— 共和国証券取引所「トシケント」 ↗
- В Центральном банке обсудили планы банка АВВ по приобретению доли в Davr Bank(ウズベキスタン中央銀行、2026年6月23日) ↗
- При участии президентов Азербайджана и Узбекистана состоялось открытие проекта банка «ABB Davr»!(ABB、2026年8月24日) ↗
- «Проект ABB Davr — это выход азербайджанского финансового бренда, технологий и банковского опыта на более широкую географию»(ABB、2026年9月3日) ↗
- Сделка между Банком ABB и Davr Bank завершена!(ABB、2026年9月11日) ↗
- После перехода в состав ABB международные рейтинги Davr Bank были повышены(ABB、2026年9月11日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。