解説 · 2026年9月時点
トルクメニスタン国家商品原料取引所は、首都アシガバートに置かれたトルクメニスタンの商品取引所である。1994年7月29日の大統領令により設立され、取引所自身の説明によれば、輸出入取引に対する国家規制の主たる機関としての役割を担う。2014年3月1日の法律「商品原料取引所および取引所取引について」は、この取引所をトルクメニスタンの卸売市場の主たる組織構造と位置づけ、専門分野を限定しない総合取引所として各種の商品を取引に受け入れると定めている。
扱われるのは石油製品、石油化学品、化学肥料、綿製品、農産品といった現物である。売り手は国家コンツェルンや省庁などの国家機関と国内の事業者で、買い手にはトルコ、アラブ首長国連邦、アフガニスタンをはじめとする近隣国・中東の事業者が並ぶ。外国の企業や個人は、ブローカー席を買うか取引所のブローカーと仲介契約を結ばなければ取引に参加できない。取引所はもう一つ、対外貿易契約と国内貿易契約の登録機関でもあり、どの種類の契約を登録の対象とするかは閣僚内閣が定める。
トルクメニスタンは経済統計の公表が乏しい国だが、この取引所は取引のあった日ごとに、成立件数と合計額、品目、買い手の国、売り手の機関を公表している。品目と相手国が分かる形で定期的に出る数少ない情報であり、同国の対外取引の動きを追う手がかりになる。ただし数字はいずれもトルクメニスタン側の発表であり、第三者が確かめる手立てはない。
| 正式名 | Türkmenistanyň Döwlet haryt-çig mal biržasy(英語名 The State Commodity and Raw Materials Exchange of Turkmenistan、略称SCRMET。ロシア語の略称はГТСБТ) |
|---|---|
| 設立 | 1994年7月29日の大統領令による |
| 所在 | トルクメニスタン・アシガバート、アルチャビル通り52 |
| 根拠法 | 2014年3月1日の法律「商品原料取引所および取引所取引について」。1994年9月23日の旧法「商品原料取引所について」は同法により失効した |
| 法律上の位置づけ | 同法第17条により、トルクメニスタンの卸売市場の主たる組織構造と定められている。専門分野を限定しない総合取引所として各種の商品を取引に受け入れ、取引所取引に基づく契約のほか、対外貿易契約と国内貿易契約を登録する |
| 国家規制 | 取引所の活動に対する国家規制は閣僚内閣と授権機関が行う。この取引所でのみ販売できる商品の一覧、登録の対象となる契約の種類、登録手数料の額は閣僚内閣が定める |
| 法定の機能 | 卸売市場の発展の支援、国内生産者の輸出力の向上、取引所取引の開催、取引の登録、需給の分析、価格の建値、取引所価格に影響する要因の研究(法第15条) |
| 取引の種類 | 現物の売買、先渡取引、先物取引、オプション取引、および取引規則が定めるその他の売買(法第8条) |
| 主な商品 | 重油・脱硫ディーゼル留分・基油などの石油製品、ポリプロピレンなどの石油化学品、尿素、綿繊維・綿糸・各種の織物、甘草の根とその抽出物、小麦粉、ポルトランドセメントなど |
| 主な売り手 | 国家コンツェルンのトルクメンネビト、トルクメンヒミヤ、トルクメンガス、トルクメンパグタ、繊維産業省、保健・医療産業省などの国家機関と、国内の事業者 |
| 買い手として現れる国 | 2026年5月から9月までに公表された取引結果ではトルコ、アラブ首長国連邦、アフガニスタンが多く、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンが続く |
| 参加の方法 | ブローカー席を取得するか、取引所のブローカーと仲介契約を結ぶ。取引参加者でない外国法人、合弁企業、外国人および無国籍者は、取引所の仲介者を通じてのみ取引に参加できる(法第20条) |
| ブローカー席の料金 | 非居住者は石油ガス部門とトルクメンヒミヤの商品を買う席が年1万ドル、その他の分野が年5,000ドル。居住者は年1万マナト(2026年9月時点) |
| 保証金 | 取引所の説明では、非居住者は軽工業1万ドル、石油部門15万ドル。居住者は10万マナト(同) |
| 主な手数料 | 金融モニタリング部門での登録が非居住者300ドル・居住者1,050マナト。単発の参加が非居住者100ドル・居住者500マナト。仲介の手数料は契約額52万5,001マナト以上で0.1%(同) |
| 執務時間 | 月曜から金曜は9時から18時、土曜は9時から13時 |
| 公表 | 取引のあった日ごとに、成立した取引の件数、外貨建てとマナト建てのそれぞれの合計額、品目、買い手の国、売り手の機関をトルクメン語・ロシア語・英語で公表する |
| 紛争処理 | 取引所仲裁委員会が取引所での紛争を扱う。これは裁判前の解決手続にあたり、決定に不服がある場合はトルクメニスタン仲裁裁判所へ提訴できる(法第27条) |
沿革と法的な位置づけ
設立は独立から3年後の1994年7月29日で、根拠は大統領令である。同年9月23日には法律「商品原料取引所について」が成立し、取引所制度の骨格が定められた。この法律は2014年3月1日に成立した現行法「商品原料取引所および取引所取引について」によって失効している。現行法は、取引所取引の日、取引所手数料、ブローカー、ディーラー、先渡・先物・オプションの各取引、標準契約といった基本概念を定義したうえで、取引所の設立・再編・清算、権利と義務、取引の組織と実施、参加者の範囲、会計と文書の保存、紛争処理までを規定する。
現行法の第17条は、この取引所に他の取引所とは別の地位を与えている。トルクメニスタンの卸売市場の主たる組織構造であり、専門を限定しない総合取引所として各種の商品を取引に受け入れ、取引所取引に基づいて結ばれた契約のほか、閣僚内閣が種類を定める対外貿易契約と国内貿易契約を登録する、という内容である。あわせて閣僚内閣は、この取引所でのみ販売できる商品の一覧、登録の対象となる契約の種類、登録手数料の額を定める。取引所の法的地位と権限、基本的な機能は、閣僚内閣が承認する規程によって決まる。
取引所の法定の機能は第15条に列挙されている。卸売市場の発展の支援、国内生産者の輸出力の向上、取引所取引の開催、取引の登録、需給の分析、価格の建値、そして取引所価格の動きに影響する要因の研究である。取引所自身は設立の目的として、外国の事業者とトルクメニスタンの事業者に等しい条件を用意すること、商品の回転を増やし速めること、国内市場に必要な消費財と生産設備を供給することの三つを挙げている。
取引で生じた紛争は、取引所仲裁委員会が扱う。委員会の権限には、取引所取引で結ばれた取引の取消し、登録されたまま実行されない契約の取消し、取引所取引と契約をめぐる紛争の審理、取引参加者の違反行為の審理が含まれる。この審理は裁判前の解決手続にあたり、決定に納得できない当事者はトルクメニスタン仲裁裁判所に訴えることができる。
何が取引されるか
石油部門の比重が大きい。公表される取引結果には、重油、脱硫ディーゼル留分、基油(SN-180、SN-600)、ポリプロピレン(TPP D 30 S、TPP Z 30 G)、ポリプロピレンフィルム、石油コークスの残さといった品目が繰り返し現れる。生産地としてはトルクメンバシ製油所複合体が上場一覧に記載される。化学品では尿素が大口で、ガラボガズカルバミドとマルイカルバミドの両工場の製品が扱われる。
綿を中心とする繊維も柱である。綿繊維、番手ごとに区分された綿糸、未晒しの生地、クレトンやガバジンといった織物、寝具類が取引される。売り手には繊維産業省と国家コンツェルンのトルクメンパグタ、絹のトルクメンユペクが並ぶ。このほか甘草の根とその濃厚エキス、小麦粉、ポルトランドセメント、機械類なども上場される。
法律上、取引所商品になれるのは、取引所が所定の手続きで取引に受け入れた一定の種類と品質の商品、原料、標準契約である。文化遺産と知的財産の客体、不動産、そして法令によって流通が禁じられた財産は取引所商品になれない(第6条)。
買い手の顔ぶれは公表される取引結果から読み取れる。2026年5月から9月までの公表分では、トルコとアラブ首長国連邦とアフガニスタンの事業者が多く、アゼルバイジャン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンが続く。シンガポール、スイス、ラトビア、ジョージア、インドの事業者が現れる日もある。
誰が参加でき、いくらかかるか
法律は、所有形態を問わない企業・組織と、トルクメニスタンおよび他国の国民が、ブローカー席を取得するか取引所のブローカーと仲介契約を結ぶことで取引に参加できると定める。取引に参加できるのは仲介者(取引所の会員)、現物・契約・オプションの売り手と買い手、そして来場者である。取引参加者でない外国法人、合弁企業、外国人および無国籍者は、取引所の仲介者を通じてのみ参加できる(第20条)。来場者のうち単発の参加者は、自己の名と計算で現物取引だけを行える。
取引所が示す手続きは三段階である。まず金融モニタリング部門で登録を受ける。次に、取引所の長に宛てた申請書、会社の代表者が押印・署名した誓約書、代表者(ブローカー)の委任状、ブローカーと会社代表者の旅券の写し、ブローカーの写真1枚、定款など設立関係書類の写しを提出する。最後に相互決済部門で請求書を受け取り、支払う。
費用は居住者と非居住者で分かれている。非居住者のブローカー席は、石油ガス部門とトルクメンヒミヤの商品を買う席が年1万ドル、それ以外の分野が年5,000ドルである。取引所の説明では、これに加えて保証金が石油部門で15万ドル、軽工業で1万ドル必要になる。居住者はブローカー席が年1万マナト、保証金が10万マナトである。金融モニタリング部門での顧客登録は非居住者300ドル、居住者1,050マナト。ブローカー席を持たない単発の参加は非居住者100ドル、居住者500マナトで、この場合は取引所での売買の許可を伴わない。仲介契約の手数料は、契約総額が52万5,000マナトまでなら非居住者150ドル・居住者525マナト、52万5,001マナト以上なら契約総額の0.1%である。数字はいずれも2026年9月時点のものである。
ブローカーの資格を失う事由も定められている。席の閉鎖の申請、期限内に年会費を払わないこと、年会費の支払いの拒否、仲裁委員会の決定、法人の活動の停止または清算である。取引所には資金洗浄とテロ資金供与への対策として内部統制の規則が置かれ、担当者が顧客から得た情報を業種と取引の内容に照らして確認し、リスクの区分を割り当てる仕組みになっている。
値段はどう決まるか
取引所が掲げる取引の原則は四つである。取引所取引の公開性、取引所取引における価格形成の自由、取引を結ぶことの任意性、参加者にとって参加条件が平等であること。これらは取引規則に具体化され、規則には建値の手続き、参加者どうしの決済の手続き、価格の急激な上下や作為的な高騰・低下、談合、価格に影響を与えるための虚偽の噂の流布を防ぐための統制措置、輸出入される商品の世界価格と取引所価格を監視する方法までが含まれる(第18条)。
実際の値付けには国際的な指標が使われる。取引所が上場一覧に付した注記によれば、取引に出される綿製品と石油製品の価格は国際的な建値に従って日々変動し、綿はリバプールの情報機関コットン・アウトルック、石油製品はプラッツ、ポリマー製品はICISの建値による。
上場される商品の一覧には、ロット番号、品目、単位、数量、引渡条件(FCA、EXW、FOBなど)、引渡地、生産国、売り手のブローカー、所在地、支払条件、通貨が記され、そのロットが国内市場向けか外部市場向けかも示される。輸出向けの一覧は日付ごと、輸入向けの一覧は月ごとに公表される。
このほか取引所は、品目ごとの直近の値と前回からの変化を通貨とともに示す建値の欄を置いている。ただしここには数量の単位が併記されないため、同じ数字でもトン当たりなのか重量や長さの別の単位当たりなのかは、この欄だけでは判別できない。
取引所取引と契約登録
この取引所には性格の異なる二つの仕事がある。一つは商品を上場して売買を成立させる取引所取引で、もう一つは契約の登録である。後者は法第17条に基づくもので、取引所取引から生まれた契約だけでなく、閣僚内閣が種類を定める対外貿易契約と国内貿易契約が登録の対象になる。登録手数料の額も閣僚内閣が定める。
取引所が示す登録の流れは、9時から17時までの書類受付に始まり、価格分析・市場調査部門、法務人事管理部門、登録部門、相互決済部門を経て、幹部の署名に回るというものである。商品を取引に出すには、上場の許可を求める申請書、所定の様式に記入した売却の申請書、取引所の要件に沿った商品の仕様書、事業活動を行う権利を証する書類、商品の原産を証する書類が要る。
日ごとに公表される取引結果は、このうち取引所取引の結果だけを示している。契約登録の件数や金額はそこに含まれない。したがって、公表される取引額をトルクメニスタンの貿易額そのものとして読むことはできない。
日ごとの公表と週ごとのまとめ
取引所は取引のあった日ごとに結果を公表する。文章の型はおおむね決まっており、曜日と日付に続けて、外部市場ではどの国の事業者がどの売り手からどの品目を買ったか、国内市場ではどの機関からどの品目が買われたかを述べ、最後に成立した取引の件数と合計額を示す。公表は月曜から土曜にわたり、日曜の分は出ない。
これとは別に、国営通信TDHが週に一度、その週の取引をまとめて伝える。品目と買い手の国、外貨建てとマナト建ての合計額という構成は日ごとの公表と同じである。
ただし両者は常に一致するわけではない。週ごとのまとめは対象期間を「先週」としか書かないことがあり、日ごとの公表を合計した額と合わない週がある。期間を特定できるのは日ごとの公表のほうなので、週単位の数字を扱うときは、どの日からどの日までを足したものかを確かめる必要がある。
数字の読み方
外貨建てとマナト建ての合計は別々に示され、取引所は両者を足した額を公表していない。トルクメニスタン中央銀行が示す公定レートは1ドル=3.50マナトである(2026年9月時点)が、取引所自身が合算していない以上、この率で換算して足した額は取引所の公表値ではない。
通貨で市場を分けることもできない。マナト建て=国内市場、外貨建て=外部市場という対応は成り立たず、外部市場向けの取引がマナト建てのこともある。たとえば2026年8月26日の公表分は、外部市場でトルコの事業者が綿繊維を買った1件だけで、金額は547万4,600マナトだった。品目ごとに市場と通貨を読み分ける必要がある。
日ごとの公表には、取引ごとの数量も単価も載らない。金額が前週より増えたとして、それが数量によるものか価格によるものかは、この公表だけでは判別できない。数量と引渡条件は上場のロット一覧に、価格の水準は建値に載るが、どのロットのどの取引が成立したかを突き合わせる手立ては公表されていない。
そして、これらの数字はいずれもトルクメニスタン側の発表である。同国には独立した統計や報道による検証の手立てがないため、金額を引用するときは発表主体を明示するのが確実である。
オンラインの窓口
取引所は、デジタル経済の発展に関する国の計画の枠組みで、顧客向けの個人ページ(Şahsy otag)を試験運用として開いたと説明している。利用者は口座の登録、契約の状況・取引所との決済・金融モニタリングの状況を一覧する画面、通知の受け取り、連絡先や通知の設定の管理を行える。
取引所の説明によれば、今後は契約の事前確認と登録の申請、金融モニタリングのための質問票の提出、取引所への参加を求める申請書の提出、売却の申込み、取引履歴の閲覧といった機能を順次加える計画である。利用には登録が要る。
参考資料
- О бирже — Государственная товарно-сырьевая биржа Туркменистана(設立の経緯と目的) ↗
- Правила биржевой торговли(取引の原則、参加の要件、ブローカー席の手続き) ↗
- Тарифы и сборы(居住者・非居住者別の料金表) ↗
- Закон Туркменистана «О товарно-сырьевых биржах и биржевой торговле»(2014年3月1日。同取引所が公開する全文) ↗
- Новости(日ごとの取引結果) ↗
- Котировки(上場されるロットの一覧と建値) ↗
- Регистрация договоров(契約登録の流れと必要書類) ↗
- The total amount of transactions at the SCRMET auctions amounted to over 46 million 412 thousand USA dollars — トルクメニスタン国営通信(2026年8月24日、週ごとのまとめ) ↗
- Türkmenistanyň Merkezi banky(トルクメニスタン中央銀行。公定レート) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。