ログンダムは、タジキスタンがヴァフシュ川に建設している水力発電ダムである。計画どおり高さ335メートルで完成すれば世界一高いダムとなる。ソ連時代の1976年に着工したものの崩壊で中断し、独立後のタジキスタンが国家の威信をかけた事業として再開した。同国の電力不足を解消し、余剰電力を南アジアへ輸出する構想(CASA-1000)の前提でもある。
| 所在 | タジキスタン・ヴァフシュ川(アムダリヤ水系) |
|---|---|
| 計画高さ | 335メートル(完成すれば世界一) |
| 発電能力 | 378万キロワット(3,780MW) |
| 年間発電量 | 約144億キロワット時(同国の現在の総発電量の約7割に相当) |
| 事業費 | 90億ドル超(さらに64億ドルの追加を要するとの民間試算もある) |
| 世界銀行 | 2024年12月に3億5,000万ドルの無償資金を承認。その後、債務返済計画の提出まで拠出を一時停止 |
なぜ国家事業なのか
タジキスタンは冬季に深刻な電力不足に陥る。国土の9割が山地で化石燃料に乏しく、電力の大半を水力に頼るが、渇水期の冬に発電量が落ちるためである。ログンが完成すれば発電量は現在の総量の7割に相当する規模が上乗せされ、季節を通じた供給が可能になる。
政府はダム建設のために国民に株式購入を事実上義務づけ、国際市場では2017年に5億ドルのユーロボンドを発行するなど、資金調達に総力を挙げてきた。それだけに事業費の膨張は財政リスクとして繰り返し指摘されている。
下流との水争い
最大の争点は水である。ヴァフシュ川はアムダリヤの支流で、その水は下流のウズベキスタンとトルクメニスタンの綿花地帯を潤している。ダムに水を貯める期間は下流への流量が減るため、両国は長年強く反対してきた。
世界銀行の査察パネルは2025年、フル稼働時にアムダリヤの流量が25%以上減り、下流の最大1,000万人の生活が脅かされうると指摘した。世銀は2024年12月に3億5,000万ドルの無償資金を承認していたが、その後、債務返済計画と商業的な採算性の証明を求めて拠出を止めている。
ウズベキスタンは近年、ミルジヨエフ政権のもとで対話姿勢に転じ、共同運用の可能性も議論されるようになった。とはいえ、上流国が水を制御する装置を持つという構図自体は変わらず、中央アジアの水と電力の配分をめぐる根本的な緊張の象徴であり続けている。
参考資料
- World Bank support Rogun Hydropower Project(2024年12月) ↗
- World Bank seems to be having second thoughts about Rogun Dam — Eurasianet ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。