中央アジア統一電力系統(CAPS: Central Asian Power System)は、カザフスタン南部、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタンの送電網を結ぶ国際連系である。ソ連期に、当時は国内線だった境界をまたいで各共和国の電力を一体運用するために設計された。
この系統は単なる送電網ではなく、水とエネルギーの交換の仕組みでもあった。上流のキルギスとタジキスタンが夏に水力発電のため放流すると、その水が下流のウズベキスタンとカザフスタンの灌漑を潤す。冬は下流が化石燃料の電力を上流へ送る。国境ができた後もこの相互依存は残った。
ソ連崩壊後、各国は1999年に並列運転の協定を結んだが、系統は徐々にほどけていく。トルクメニスタンは2003年に離脱し、タジキスタンは2009年12月にウズベキスタンとの接続を切られて孤立した。転機は2018年の両国関係の改善で、電力取引の協定を経て、2024年6月にタジキスタン南西部の系統がCAPSへ再接続された。北部の接続は2026年7月時点でなお整備中である。
つながっていることの利点と危うさは表裏一体である。2026年8月14日、キルギスのトクトグル水力発電所の2基停止(カザフスタン側の説明)または カザフスタン国内の送電線障害(キルギス側の説明)を発端に、停電がカザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタンの4か国へ波及した。アルマトイでは地下鉄が止まり、原因をめぐる両国の説明はいまも食い違っている。
投資の観点では、この系統の状態は立地判断に直結する。データセンターや工場を検討する側にとって、1つの発電所の事故が国境を越えて波及する系統は、自家発電や蓄電の追加費用を意味する。一方で、世界銀行やADBが送電網の近代化に資金を投じ続けているのは、この地域の電力融通が再生可能エネルギーの導入余地とセットで評価されているためである。
このサイトでは、停電、送電網への投資、電力輸出の動きを各国のエネルギー記事とテーマ「域内統合」で追っている。