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KEGOC(カザフスタン電力網管理会社)

カザフスタンの国家送電網を保有・運用し、統一電力システムの給電指令を担う会社。サムルク・カズナ傘下でKASEに上場し、同社の開示は国全体の電力需給を追う手がかりになる。

Kazakhstan Electricity Grid Operating Company (KEGOC)
公式サイト ↗

解説 · 2026年8月時点

KEGOC(Kazakhstan Electricity Grid Operating Company)は、カザフスタンの国家送電網を保有・運用し、統一電力システム(UPS)の需給を制御する会社である。発電所や配電会社ではなく、その間をつなぐ「系統」を一手に担う。同社が持つのは220kV以上の基幹送電線と大規模変電所で、地域内の配電は各地の地域送電会社(RNC)の仕事である。

国の電力政策の実行機関という性格を持ちながら、株式はカザフスタン証券取引所とアスタナ国際取引所に上場している。2014年の新規株式公開(IPO)と2023年の追加売り出し(SPO)はいずれも国有企業を国民に開放する「国民IPO」政策の看板案件で、この国の資本市場を語るうえで避けて通れない銘柄でもある。

系統運用者は国全体の発電量・消費量・最大需要を日々測っている立場にあるため、同社の開示はカザフスタンの電力需給を追う一次資料としても使える。

正式名Kazakhstan Electricity Grid Operating Company(KEGOC)JSC
設立1996年9月28日のカザフスタン政府決定第1188号による。国家登録は1997年7月11日
本社アスタナ市タウエルシズディク通り59
事業国家送電網(NPG)の保有・運用、統一電力システム(UPS)の系統運用(システムオペレーター)
発電行わない。発電所も配電網も保有しない
上場カザフスタン証券取引所(KASE、ティッカーKEGC)およびアスタナ国際取引所(AIX)
株主サムルク・カズナが2億3,400万1株を保有し85.00000025%(2026年7月1日時点)
発行済株式数2億7,529万4,118株(2026年7月1日時点)
送電線0.4〜1,150kVの架空送電線399路線、延長2万7,917.64km(回線ベース、2025年末)
変電所35〜1,150kVの83か所、変圧器容量3万9,019.6MVA(2025年末)
支社地域間電力網(MES)9支社と全国給電指令所(NDC SO)
従業員4,472人(2025年)
送電量183億9,000万kWh(2025年)
NPG利用サービス780億5,000万kWh(2025年)
技術給電指令1,167億5,000万kWh(2025年)
需給調整の取りまとめ2,283億kWh(2025年)
本業からの収入3,977億3,671万テンゲ(2025年通期)
EBITDA1,526億テンゲ(2025年通期)
純利益708億テンゲ(2025年通期、前年比19%増で過去最高)
総資産1兆1,370億2,100万テンゲ(2025年末)
格付フィッチBBB、ムーディーズBaa1、S&P BB+(いずれも2025年に確認、見通しは安定的)
子会社・出資先エネルゴインフォルム(100%)、バティス・トランジット(20%)、グリーン・コリドー・アライアンス

沿革

ソ連期のカザフスタンでは、発電・送電・配電が一体で運営されていた。独立後、政府は1996年9月28日の決定第1188号「カザフスタンの電力システム管理の構造改革に関する若干の措置について」で送電部門を切り出し、国家送電網を一元的に管理する会社としてKEGOCを設けた。国家登録は1997年7月11日である。以来、同社は発電と小売から分離された中立の系統運用者という位置づけを保ってきた。

2006年までは株式の100%を国が直接保有していた。同年、大統領令第50号に基づく政府決定により、国の持ち株は国有資産管理持株会社サムルクへの出資に振り替えられた。2008年10月、サムルクと持続的発展基金カズナの合併で政府系ファンドのサムルク・カズナが発足し、同社がKEGOCの支配株主を引き継いだ。

2014年12月18日、サムルク・カズナ傘下企業の株式を市場に出す「国民IPO」プログラムの一環として、2,599万9,999株がKASEで公募された。2023年には2021〜2025年の包括民営化計画に基づいてSPOが行われ、サムルク・カズナの持分は85%へ下がった。

事業の内容

同社が法令上担うのは、国家送電網による電力の送電、国家送電網の利用サービスの提供、系統への供給と消費に関する技術給電指令、そして発電と消費の需給調整の取りまとめである。これら4つはいずれも自然独占法の適用を受ける規制サービスで、料金は国が決める。

組織は、地域ごとに送電設備を運用・開発する9つの地域間電力網(MES)支社と、全国の給電指令を行う全国給電指令所(NDC SO)支社からなる。NDC SOの下に9つの地域給電指令所が直属し、運転計画の立案、需給の均衡、市場参加者の調整を行う。従業員は2025年時点で4,472人である。

同社が発電も小売もしない点は、卸電力市場の設計を見ると分かりやすい。カザフスタンの卸市場では、電力の一元的な買い取りと再販は「単一買い手」(RES支援決済金融センター)が担い、集中取引の運営はKOREMが担う。KEGOCの役割はシステムオペレーターとしての系統サービスの提供、需給調整市場のシステムの保有・運用、そして不均衡の物理的な精算であって、電気そのものを売買して利ざやを取る事業者ではない。

情報通信インフラを担う子会社エネルゴインフォルムを100%保有するほか、西部の州間送電線を建設・運営するバティス・トランジットに20%出資している。2024年11月のCOP29でカザフスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタンの3か国首脳が署名した戦略的パートナーシップ協定に基づき、2025年にはアゼルエネルジ、ウズベキスタン国家送電網との合弁グリーン・コリドー・アライアンスを設立・登記した。カスピ海の海底ケーブルを含む越境の再生可能エネルギー送電を扱う枠組みである。

設備と2025年の需給

2025年末時点の国家送電網は、0.4〜1,150kVの架空送電線399路線・延長2万7,917.64km(回線ベース)と、35〜1,150kVの変電所83か所・変圧器容量3万9,019.6MVAで構成される。電圧別では220kVが1万5,767.33km、500kVが8,281.13km、330kVが1,862.94km、1,150kVが1,421.22kmを占める。1,150kVの送電線と変電所は旧ソ連が建設した超高圧系統の遺産で、現在も国土を東西に結ぶ幹線として使われている。

2025年のカザフスタンの発電量は1,231億1,090万kWhで前年比4.4%増、消費量は1,246億650万kWhで3.8%増だった。最大需要は12月18日の1万7,724MW、最大発電量は1万7,273MW(前年比7%増)である。消費が発電を上回る分はロシアからの受電で埋めており、2025年のロシアとの受電超過は24億7,930万kWh(輸出21億5,950万kWh、輸入46億3,880万kWh)だった。

地域別に見ると、需要の伸びは西部と南部に偏る。2025年の消費増加は北部ゾーンが2億530万kWh(0.3%増)にとどまったのに対し、西部ゾーンは21億4,160万kWh(13.2%増)、南部ゾーンは22億6,410万kWh(8.0%増)だった。州別ではアティラウ州が20億3,240万kWh(24.7%増)で最大の伸びを示している。

再生可能エネルギーは2025年に170施設・設備容量3,746.3MWが稼働し、発電量は86億5,220万kWh、総発電量に占める比率は7.0%だった。同年に13施設・計707.7MWが新たに運転を開始している。

国民IPOとSPO

2014年12月18日のIPOでは、当時の発行済株式2億6,000万株の10%にあたる2,599万9,999株が、1株505テンゲでKASEにおいて公募された。国有企業の株式を国民が直接持てるようにするという政策目的が前面に出た案件で、カザフスタンの「国民IPO」の代表例として繰り返し引き合いに出される。

2023年9月28日から11月2日にかけて実施されたSPOでは、1,529万4,118株が1株1,482テンゲでKASEとAIXの両方に売り出された。応募は計画量の1.5倍を超え、11月10日にAIXで流通取引が始まっている。SPOを経て発行済株式総数は2億7,529万4,118株となり、サムルク・カズナの持分は90%から85%へ下がった。2026年7月1日時点で同ファンドは2億3,400万1株、85.00000025%を保有する。

配当は年2回の支払いを続けており、カザフスタン市場では数少ない安定配当銘柄とされる。2025年通期は純利益の62.93%が配当に充てられ、下期分は1株81テンゲ、総額約223億テンゲが2026年6月12日から支払われた。上場以来の配当支払い総額は3,498億テンゲにのぼる(2026年6月時点)。株価は2025年末で1株1,555テンゲ(前年1,527テンゲ)だった。

料金と規制

同社の主要サービスは自然独占法の対象で、料金は国民経済省の自然独占規制委員会(CRNM)が承認する。算定方式は「コストプラス固定利益」で、一定期間の運営費・財務費用の見積もりに資本に対する適正な収益率を上乗せする。2013年からは複数年をまとめた上限料金の承認に移行しており、会社は投資計画を長い時間軸で立てられる一方、投資家は料金の先行きを見通せる。

2025年12月時点の料金は、送電サービスが1kWhあたり4.958テンゲ(2025年10月1日〜2026年3月31日)、国家送電網の利用サービスが2.860テンゲ、技術給電指令が0.456テンゲ、需給調整の取りまとめが0.086テンゲである。2026年4月1日からは送電が5.012テンゲ、網利用が2.892テンゲに改定された。2024年10月からの1年半で送電料金は3.492テンゲから5.012テンゲへ、4割以上上がった計算になる。

料金の改定に先立って、同社は消費者を集めた公聴会を開くことが法令で義務づけられている。2025年には3月と6月に公聴会が開かれ、料金見積もり、投資計画の執行、規制サービスの品質・信頼性指標の遵守状況が報告された。現行の5年間の料金期間は2021年10月1日から2026年9月30日までで、2026〜2031年の料金と投資計画の承認が2026年の重点課題に挙げられている。

業績

2025年通期の連結収入は4,158億600万テンゲ、うち本業からの収入は3,977億3,671万テンゲで前年比24%増えた。規制サービスの料金改定と取扱量の増加で641億2,300万テンゲ、需給調整市場での電力販売で111億3,500万テンゲの増収要因があった。

一方、売上原価は2,880億6,400万テンゲと26%増えた。需給調整市場で購入する電力の平均価格が1kWhあたり18.43テンゲから27.44テンゲへ上がったことが主因で、人件費の増加も重なった。営業利益は957億6,800万テンゲ(前年比34%増)、EBITDAは1,526億テンゲ(前年1,315億テンゲ)、純利益は708億テンゲ(前年比19%増)で過去最高となった。

2025年末の総資産は1兆1,370億2,100万テンゲ(前年比4%増)、自己資本は7,961億7,500万テンゲ、負債合計は3,408億4,700万テンゲである。資産の87.5%が有形固定資産で、送電設備という重い資産を抱える会社の姿がそのまま貸借対照表に出ている。

経営陣は2026年の重点として、大型インフラ案件の実行、2026〜2031年の料金と投資計画の承認、人工知能を使った案件の推進、南部ゾーンの強化と西部ゾーンの統一電力システムへの統合、そして産業安全の強化を挙げている。デジタル化率は2025年に52%に達し、2032年までに自動化率90%を目標に掲げる。ESG評価はS&Pグローバルの企業サステナビリティ評価で2023年の51点から2025年の62点へ上がった。

論点

第一に、設備の更新である。同社は220〜500kVの送電線のうち標準耐用年数に達した路線の再建設を第2期・第3期に分けて計画しており、対象は第2期が48路線・4,236km、第3期が44路線・4,332kmにのぼる。いずれも実行可能性調査の段階にあり、実際の投資と料金への転嫁はこれからである。

第二に、再生可能エネルギーの連系と系統の制約である。太陽光と風力は南部と西部に偏って建設される一方、既存の大型火力は北部に集中しているため、南北の潮流が細ければ新設案件は系統に受け入れられない。同社は南北連系の送電容量を2,000MWへ引き上げる直流送電線の建設、南部ゾーンの強化(500kVのシュー〜ジャンブィル線とジャンブィル〜シムケント線の建設と3変電所の拡張)、西部ゾーンとUPSの接続(オルケ変電所、カラバタン変電所と500kVオルケ〜カラバタン線)を進めている。長期にはカラガンダ〜ジェズカズガン〜クズロルダ〜シムケントの500kV線や、アルマトイ州・ゼティス州の系統開発も検討対象に挙がる。送電網の空きが発電投資の上限を決めるという構図は、この国の再エネ案件を読むときの前提になる。

第三に、系統そのものの安定性である。2026年8月14日14時37分、500kVのアガドゥイル〜ウルケン線2回線とアクトガイ〜タルドゥコルガン線が相次いで遮断され、カザフスタンUPSの南部ゾーンと中央アジア統一電力系統が分離して単独運転に入った。同社の速報では中央アジア側からの急激な電力の流入が原因で、約2,810MWの需要が遮断された。10分後にカラガンダ州・アバイ州・ウルタウ州で295MWが復旧している。中央アジアの系統は相互に接続されているため、隣国の事故がそのままカザフスタンの停電になる。

第四に、2026〜2027年の冬季の需給である。同社は2026年8月25日の政府会合で、今冬の最大需要を約1万8,200MW(前年比480MW・2.7%増)と予測した。南部ゾーンの最大負荷は5,100MWで前年より700MW増える見込みだが、ゾーン内の発電は新規稼働分を含めて約2,800MWにとどまり、残りは北部・東部からの潮流で賄う。アルマトイCHPP-2・CHPP-3とトルキスタン複合火力の第1期が予定どおり稼働するかが焦点になる。

最後に、子会社の民営化がある。同社はエネルゴインフォルムの株式100%を電子オークションで売却しようとしたが、2026年7月24日の入札に続き、8月26日の再入札も応札がなく不成立となった。売却の代替手段はサムルク・カズナと協議中とされている。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

MENTIONED IN

先週の中央アジア・コーカサス:EBRDがウズベキスタンの2026年成長率予測を7.5%へ上方修正、シルダリヤ州の新設火力で1,600メガワットが緊急停止(9月21日〜27日)2026.09.28EBRDが9月24日に公表した地域経済見通しで、中央アジア・コーカサス8か国のうち6月版から予測が動いたのはウズベキスタン(2026年を7.5%へ)とジョージア(6.5%へ)の2か国だけだった。25日にはシルダリヤ州の試運転中の火力発電所で1,600メガワットが緊急停止したとウズベキスタン・エネルギー省が発表した。カザフスタンでも合計962メガワットの負荷が遮断されたと、KursivがKEGOCのデータとして伝えている。ウズベキスタン大統領府はカラカルパクスタンとアンディジャンの事業を相次いで公表し、カザフスタンの銀行部門の1〜8月の純利益は13.6%減った。ウズベキスタンの新設火力で1,600メガワットが緊急停止。KEGOCのデータではカザフスタンで962メガワットの負荷遮断2026.09.25ウズベキスタン・エネルギー省は9月25日、シルダリヤ州にあるEDF社の新しい火力発電所で05時05分に1,600メガワットが緊急停止したと発表した。試運転中の発電所で、発表に原因の記載はない。カザフスタンでは962メガワットの負荷が遮断されたと、KursivがKEGOCのデータとして伝えた。4か国大停電の原因でカザフとキルギスが食い違う。トクトグル発電所か、カザフ国内の送電線か2026.08.178月14日に4か国へ広がった停電の原因について、カザフスタンとキルギスの説明が一致していない。KEGOCはキルギスのトクトグル水力発電所で計60万キロワットの2基が緊急停止し、南北連系線が過負荷で遮断されたと説明する。キルギス側はカザフスタン国内の南北を結ぶ高圧送電線で外部障害が起きたと述べている。旧ソ連期に一体で設計された系統が、いまも国境をまたいで連動していることを示した。アルマトイで大規模停電、ビシケクとドゥシャンベにも波及。500kV送電線3本が同時遮断2026.08.14カザフスタン最大都市アルマトイで2026年8月14日午後、大規模な停電が起きた。KEGOCの500キロボルト送電線3本が予期せず停止し、南北送電系統の保護装置が作動したためで、ほぼ同時刻にキルギスとタジキスタンでも停電が報告された。