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タウケン・サムルク

カザフスタンの国営鉱業会社。政府系ファンドのサムルク・カズナ傘下で、タングステン、銅、金などの鉱床の探査と開発を担う。外資との合弁では採掘ライセンスの現物出資で参画することが多い。

JSC NC Tau-Ken Samruk
公式サイト ↗

解説 · 2026年9月時点

タウケン・サムルク(АО «НГК «Тау-Кен Самрук»)は、カザフスタンの国営鉱業会社である。国家ファンドのサムルク・カズナが株式の100%を持ち、石油ガスのカズムナイガス、ウランのカザトムプロム、鉄道のカザフスタン・テミル・ジョリと同じグループに属する。担当するのは固体鉱物の分野で、金、銅、鉛・亜鉛、タングステン、希土類元素などを扱う。石油・ガスはカズムナイガス、ウランはカザトムプロムがそれぞれ受け持っている。

同社の事業は二層に分かれる。一つは自ら持つ生産設備、すなわちアスタナの金・銀精錬所とカラガンダ州の金属シリコン工場である。もう一つは、探査から開発の各段階にある鉱山案件と、既存の大手鉱山会社への出資持分である。後者のうち最大のものが、グレンコアと組む亜鉛・鉛大手カズツィンクの29.82%である。

事業の運び方は2017年に「業界の触媒」と呼ぶ型に定められた。国が資本を入れて探査と初期の建設を行い、立ち上がった段階で戦略投資家に売却し、回収した資金を次の案件に再投資する、という考え方である。2025年から2026年にかけて、シャルキヤ、アライグル、北カトパルという主力3案件がいずれも政府の民営化計画にもとづいて売却の準備に入っており、この型が実際に適用される局面にある。

正式名АО «Национальная горнорудная компания «Тау-Кен Самрук»(JSC National Mining Company Tau-Ken Samruk)
設立2009年1月15日のカザフスタン政府決定にもとづき設立
本社カザフスタン・アスタナ市ヌラ地区シガナク通り17/10
株主サムルク・カズナが普通株式の100%を保有。経営会議と取締役会の構成員は1株も持たない
事業固体鉱物の地質探査、採掘、選鉱・冶金処理、鉱山会社の持分管理。自社の生産拠点は金・銀の精錬所と金属シリコン工場
売上高1兆9,415億テンゲ(2025年通期、前年比54%増)
純利益1,227億テンゲ(2025年通期、同74%増)
EBITDA1,276億テンゲ(2025年通期)
総資産9,997億テンゲ(2025年12月31日時点)。自己資本は8,686億テンゲ、借入金は715億テンゲ
精錬実績金57.0トン、銀5.8トン(2025年通期)。金は2024年の54.6トンから増加し、2014〜24年の累計は346.1トン
従業員平均在籍516人(2025年通期、前年583人)。2025年12月31日時点の定員は本社76人、子会社440人
主な子会社タウケン・アルティン(金銀精錬、100%)、カズゲオロギヤ(地質探査、100%)、シャルキヤジンクLTD(亜鉛・鉛、100%)、アライグル(多金属、100%)、北カトパル(タングステン・モリブデン、100%)、タウケン・テミル(金属シリコン、100%)
主な持分カズツィンク29.82%(2013年8月28日にサムルク・カズナから現物出資で移管。グレンコア・インターナショナルと共同で戦略的な管理を行う)
経営陣経営会議議長はナリマン・アブサメトフ氏(2025年2月27日選任)。取締役会は6人で独立取締役の比率33%(2025年)
コーポレートガバナンス評価BBB(2025年。2024年はBB)

沿革

2009年1月15日の政府決定により設立された。同年末には最初の子会社となるタウケン・アルティンの設立が決まり、2010年から2012年にかけて鉱区の権利取得と投資案件の組成が進んだ。2012年7月3日、経済特区「アスタナ・新都市」の工業団地で金・銀精錬所の起工式が行われ、工場は2013年12月に稼働した。同社が黒字に転じたのも2013年で、純利益は16億7,000万テンゲだった。

2013年8月28日、サムルク・カズナが保有していたカズツィンクの29.82%が同社の資本金へ移された。これにより同社は国内最大級の亜鉛・鉛事業に対する持分を持つことになり、以後の連結利益はこの持分法投資の損益に大きく左右されるようになる。2014年には亜鉛・鉛鉱床シャルキヤを持つシャルキヤジンクLTDの株式100%が資本金へ移され、鉄鉱石のマサリスキーGOKの93%持分を取得した。同じ年、長く止まっていたシリコン工場の電気炉1号機が動き出し、10月15日に金属シリコンが得られている。2015年には北カトパル社を取得した。

2017年、同社は2017〜26年の開発戦略で「業界の触媒」という事業モデルを採り、建設・立ち上げ・売却・再投資という循環を掲げた。2018年11月には中国のタングステン大手、厦門タングステン(Xiamen Tungsten)と北カトパルに関する主要条件書を結び、2019年にはオーストラリアのフォーテスキューと地質探査の共同事業契約を結ぶなど、外国の事業会社を引き込む動きが続いた。2023年には取締役会の決定で2024〜33年の開発戦略が改定されている。

売上のほぼ全部は金の精錬から出る

2025年通期の売上高は1兆9,415億テンゲで、前年の1兆2,633億テンゲから54%増えた。ただしこの数字は鉱山の規模を表さない。同社の説明によれば、売上のおよそ99%は金の販売であり、売上原価のおよそ99%は金を含む原料の買い付け費用である。精錬所は外部から原料を買って精錬し、製品を売る。買値と売値の差が収益なので、売上総利益率は2025年で0.7%、2024年で0.8%にとどまる。売上高の増減は、金相場と取扱量の増減をほぼそのまま映したものと読むほうが正確である。

2025年の精錬実績は金57.0トン、銀5.8トンで、金は2024年の54.6トンを上回った。2014年から2024年までの累計は金346.1トン、銀67.7トンである。生産量にはもう一つ注意点がある。2025年の金183万2,000オンスのうち、自社で買い付けた原料からの分は104万8,000オンスで、残る78万4,000オンスは委託加工(他社の原料を預かって精錬する取引)である。したがって精錬量は同社が所有する金の量ではない。

2025年の純利益1,227億テンゲは前年比74%増だが、同社はその主因を持分法適用会社からの持分利益の増加としている。金相場について同社は、2024年の1オンス2,437ドルから2025年には3,545ドルへ上がったとし、2026年第1四半期は2,845ドルから4,885ドルへ上がったとしている。いずれも同社の資料が「市場価格」として示す値で、算出の基準は書かれていない。グレンコアは年次報告書で2024年の平均2,390ドル、2025年の平均3,445ドル(44%上昇)としており、発表元で数字が違う。第1四半期の売上高は5,667億テンゲ(前年同期比102%増)、純利益は270億テンゲである。

金属シリコンを作るタウケン・テミル(100%、カラガンダ州)は、設計能力が年2万4,000トンで、独SMSジーマークの電気炉2基(各1万2,000トン)を備える。カザフスタンで唯一の工業用シリコンの生産者である。原料の石英は同社の別の子会社シリコン・マイニングが持つアクタス鉱床から供給される。ただし2019年以降の市況悪化を受けて経営会議が操業停止を決め、鉱山と工場はともに保守休止に入った。2025年の年次報告書は、この電気炉を再稼働させたと記している。

開発案件と民営化

シャルキヤ(クズロルダ州)は同社の最大の建設案件である。運営会社シャルキヤジンクLTD(100%)は年400万トンの鉱石処理を設計能力とし、亜鉛精鉱24万6,000トンと鉛精鉱6万5,000トンを年産する計画で、鉱山の稼働年数は29年とされる。2017年6月12日にはEBRDが3億5,000万ドルのシンジケートローンの供与契約を結んだ。2025年には採掘とX線選別の試験が進み、同年の年次報告書は2026年の計画に選鉱工場の設計見直しとあわせて資産の民営化を挙げている。

アライグル(カラガンダ州)は年90万トンの鉱石処理で鉛精鉱6万5,000トンを作る計画の多金属案件で、送電線や道路といった基盤は整備済みである。2025年時点で政府の民営化計画にもとづく売却手続きに入っている。

北カトパル(カラガンダ州シェト地区)は、同名の鉱床と上部カイラクトゥイ鉱床を対象とするタングステン・モリブデンの案件である。運営会社の北カトパル社は2015年に同社の傘下に入り、北カトパルが年300万トン、上部カイラクトゥイが年700万トンの採掘を計画している。露天採掘の稼働年数はそれぞれ20年と30年とされる。この資産も民営化計画の対象で、2025年11月6日に米国系のコーブ・カズ・キャピタル・グループと拘束力のある主要条件書を結んだ。2026年2月には一連の取引文書が署名され、事業会社はコーブ側70%、タウケン・サムルク30%の持分となった。タウケン・サムルクは採掘権を現物で出資しており、現金は拠出しない。

カズツィンクの29.82%

同社は2013年からカズツィンクの持分29.82%を保有している。カズツィンクはカザフスタン最大級の亜鉛・鉛・銅・金の生産者で、グレンコアは2025年の年次報告書でカズツィンクを持分69.7%の連結子会社として扱い、非支配持分の比率を2025年12月31日時点で30.3%と記している。開示する法人と基準日が違うため、29.82%と69.7%を足しても100%にはならない。同社は2025年の年次報告書で、カズツィンクの29.82%とあわせて持株会社カズツィンク・ホールディングスの29.97%を資産構成図に掲げ、カズツィンクの持分の管理は受託会社カズツィンク・ホールディングスを通じて行うと記している。主要な経営事項はグレンコア・インターナショナルと共同で決めると同社は説明している。

この持分は連結の損益に直接効く。2025年の利益増の主因として同社が挙げた「持分法適用会社からの持分利益の増加」は、実質的にこの持分を指している。自社の精錬事業が薄い利ざやで回っているのに対し、利益の相当部分は出資先の鉱山事業から来る構造になっている。

地質探査と国際提携

地質探査は子会社カズゲオロギヤ(100%、2011年6月21日設立、定員110人)が担う。2025年には掘削部門をカズゲオロジー・ドリリングとして別法人に切り出し、ジョサバイ、カラタス、クイレクティコリの各鉱区で掘削を再開した。豪ALSリミテッドの子会社との合弁である地化学分析ラボは、2025年4月に国際認定を取得している。カズゲオロギヤは、国家による地質調査計画のもとで無人機を使った空中物理探査も手がけている。同計画で調べた有望区域は2027年から投資家向けのオークションに出される予定だと、産業建設省が2026年9月に公表している。

提携先は多い。銅・金ではカザフムスとエサン(トルコ)、金ではソリッドコア・リソーシズ、IC Asia、トレジャー・リミテッド、希土類元素ではコーブ・キャピタル(アクブラク案件)、地質探査ではディスカバリー・ベンチャーズ・カザフスタンと、それぞれ合弁や共同事業を組んでいる。公的機関との協力も進めており、2025年12月20日には日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と協力協定を結んだ。2026年9月15日には、トカエフ大統領の韓国訪問にあわせてソウルでPOSCOホールディングスおよび韓国地質資源研究院(KIGAM)と文書を交わしたと公表した。前者は希土類元素の高純度分離・精製と二次原料からの回収を含む加工鎖の形成、後者はリチウムの共同探査を対象とする。

資産の入れ替えも続く。2025年にはトパズNSの売却を完了し、報告期間の後にはジェティス・ゴールド・リミテッドの10%とカザフ・ニッケル社の25%を取得した。

数字の読み方

同社の売上高と利益は、鉱山の操業規模を表す指標ではない。売上高の99%は精錬所が買った金を精錬して売る取引から生じ、利益の増加分の多くは出資先からの持分利益である。事業の進み具合を見るには、売上高よりも鉱山案件の段階(探査、投資前、実施)と民営化の進捗を追うほうが実態に近い。

金相場の数字は発表元で違ううえ、同社の資料のなかでも2024年の値が2,437ドル(2024年通期の資料と2025年の年次報告書)と2,347ドル(2025年通期以降の資料の図)に割れている。相場を引くときは、どの発表元の、どの基準の値かを添える必要がある。

精錬量も「同社が採掘した金」ではない。委託加工分が含まれるため、2025年の57.0トンのうち相当部分は他社の原料である。カザフスタンの金生産量と同社の精錬量を直接比べることはできない。

鉱床の規模を示す数字は、資源量と埋蔵量のどちらを指すかで大きく変わる。北カトパルと上部カイラクトゥイについて「三酸化タングステン約140万トン」と「鉱石埋蔵量41万トン」という二つの数字が並ぶのはこのためで、前者はJORC基準の鉱物資源量、後者は採掘して回収できると確認された部分である。設計能力や稼働年数も最終可能性調査の前は確定値ではない。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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