GUIDE · 経済・金融2026年9月時点

外貨準備と国際準備(中央アジア・コーカサス8か国)

国際準備(外貨資産、金、SDR、IMFリザーブポジションの合計)の定義と、各国中央銀行の公表の仕方、カザフスタンで国民基金が国際準備と別建てである理由、金の比率が極端に高い国と持たない国、そして「輸入何か月分」という読み方を、各中央銀行の統計にもとづいて整理する。

外貨準備は、通貨当局が支配し、いつでも使える状態にある対外資産のことである。国際収支の赤字を埋めたり、為替市場で介入したり、自国通貨への信認を支えたりする目的で保有される。国際的に比較するときは「国際準備(準備資産)」という広い定義が使われ、外貨建ての資産に加えて、金、IMFの特別引出権(SDR)、IMFのリザーブポジションを含む。

この地域では、外貨準備の水準が格付けや通貨の評価に直結する。輸出が資源に偏り、送金の流入に依存する国が多く、外的なショックが来たときに何か月持ちこたえられるかが問われるためである。ジョージアでは、2026年に3社の格付会社がそろって評価を改善したが、S&Pもフィッチも見通しを改善した主因として国際準備の積み上がりを挙げた。

一方で、8か国の準備の中身は驚くほど違う。カザフスタンとキルギスでは準備の4分の3以上が金だが、アルメニアは金を保有していない。カザフスタンは国際準備とは別に、これを上回る規模の国民基金を持つ。数字を並べるときは、何を含む定義なのかを先に確かめる必要がある。

なお公表の頻度と粒度も国によって違う。月次で内訳まで出す国、総額だけを出す国、そして公表を確認できない国がある。トルクメニスタンについては、国際準備の水準を公表資料から確認できなかった。

国際準備の定義通貨当局が支配し、対外的な支払いに直ちに利用できる対外資産。外貨建て資産(証券、現金・預金)、金、SDR保有額、IMFリザーブポジション、その他の準備資産で構成される
外貨準備との違い「外貨準備」は狭くは外貨建て資産だけを指すが、報道や当局の告知では国際準備の総額を指して使われることも多い。内訳を見て判断する
カザフスタン(2026年7月末)総国際準備633億2,400万ドル。うち金481億7,300万ドル、外貨資産151億5,200万ドル。純国際準備は613億3,300万ドル
カザフスタンの金の比率総国際準備の76.1%(2026年7月末)
カザフスタン国民基金(2026年7月末)661億2,100万ドル。国際準備とは別建てで公表される
キルギス(2026年7月末)総国際準備81億4,336万ドル
キルギスの内訳(2026年6月30日)公的準備資産78億4,826万ドル。うち金63億334万ドル(80.3%)、交換可能通貨の準備資産11億8,739万ドル、SDR3億165万ドル、IMFリザーブポジション66万ドル、その他5,520万ドル
アルメニア(2026年7月)総国際準備61億8,857万ドル。うち外貨61億7,126万ドル、SDR1,710万ドル、IMFリザーブポジション20万ドル。金の保有はゼロ
アゼルバイジャン(2026年7月末)中央銀行の公的外貨準備137億6,792万ドル。国全体の対外資産にはこのほか国家石油基金(SOFAZ)の資産が加わる
ジョージア(2025年末)国際準備62億ドル。財・サービス輸入の3.6か月分
ジョージアの2026年の動き国立銀行による外貨の純買い入れが2026年1〜6月に約21億ドル。S&Pはこれを見通し引き上げの主因に挙げた
ウズベキスタン・タジキスタン2026年9月時点の水準を各中央銀行の公表資料から確認できなかった
トルクメニスタン国際準備の水準を公表資料から確認できなかった
輸入カバー月数国際準備を月あたりの財・サービス輸入で割った値。3か月が経験的な目安として使われる
公表の頻度カザフスタンとアゼルバイジャンは月次、アルメニアは月次、キルギスは月次(内訳はIMFの様式で四半期ごとの基準日)。ジョージアは月次の統計に加え年次の主要指標表を公表する

何が国際準備に入るのか

国際準備に算入できる資産には条件がある。通貨当局の支配下にあること、対外的な支払いに直ちに使えること、そして相手方が非居住者であることである。したがって国内の銀行に預けた自国通貨や、使途が特定の事業に縛られた資金は入らない。

構成要素は5つに分かれる。第一に外貨建ての準備資産で、外国政府の債券などの証券と、外国の中央銀行・国際決済銀行・IMFや外国の商業銀行に置いた現金・預金からなる。第二にIMFのリザーブポジション、第三にSDRの保有額、第四に金(金の預金やスワップに置かれた金を含む)、第五にその他の準備資産である。キルギス国立銀行が公表する様式は、この区分にそのまま従っている。

金は重量(純トロイオンス)と評価額の両方で示される。評価額は市場価格で毎月洗い替えられるため、金の保有量が変わらなくても価格が上がれば国際準備は増える。金の比率が高い国では、準備の増減の大部分が金価格の変動で説明できる月がある。

8か国の直近の水準

カザフスタンの総国際準備は2026年7月末で633億2,400万ドルだった。1月末の714億6,500万ドルから減っているが、この間の動きは金の評価額に強く連動しており、2月末に733億9,100万ドルまで増えたあと6月末に618億2,900万ドルまで下がるという振れ方をしている。純国際準備は613億3,300万ドルである。

キルギスの総国際準備は2026年7月末で81億4,336万ドルだった。同国の準備はこの数年で急速に増えており、2024年末の50億8,808万ドルから2025年末には86億314万ドルへ、1年で69%増えている。2026年1月末には101億7,718万ドルの高水準を付け、その後は80億ドル台で推移している。

アルメニアの総国際準備は2026年7月時点で61億8,857万ドルである。2026年4月の57億2,371万ドルから4か月連続で増えた。アゼルバイジャン中央銀行の公的外貨準備は2026年7月末で137億6,792万ドルで、3月末の116億5,679万ドルから4か月で18%増えた。

ジョージアの国際準備は、国立銀行が公表する主要指標の表で2025年末に62億ドル、財・サービス輸入の3.6か月分とされている。2026年に入っても増加が続き、S&Pは2026年8月、1月から6月の国立銀行による外貨の純買い入れが約21億ドルにのぼったことを見通し引き上げの根拠に挙げた。

ウズベキスタンとタジキスタンについては、2026年9月時点の水準を各中央銀行の公表資料から確認できなかった。トルクメニスタンについても同様である。

金の比率 — 4分の3の国と、ゼロの国

この地域の準備構成で最も目を引くのが金の比率である。カザフスタンでは2026年7月末の総国際準備633億2,400万ドルのうち481億7,300万ドルが金で、比率は76.1%にのぼる。キルギスも同様で、2026年6月30日時点の公的準備資産78億4,826万ドルのうち63億334万ドルが金であり、比率は80.3%である。

両国はいずれも国内に金の生産がある。中央銀行が国内で産出された金を自国通貨で買い取れば、外貨を使わずに準備を積み増せる。金は特定の国の信用に依存せず、制裁の対象にもなりにくいという性質も、この地域で選好される理由として挙げられる。

対照的に、アルメニアの準備に金は含まれていない。2026年7月時点の61億8,857万ドルのうち61億7,126万ドルが外貨資産で、残りはSDRとIMFリザーブポジションである。中央銀行が金を持たないという選択も、この地域では例外ではない。

金の比率が高いことは、流動性の面では両刃である。金は市場で売れるが、外国政府の短期債のように即座に額面で換金できるわけではない。価格の変動も大きい。金の比率が7割を超える国の準備を、外貨建て資産中心の国の準備と同じ「即時に使える緩衝材」として比較すると、実力を読み違えることがある。

カザフスタン — 国際準備と国民基金は別建て

カザフスタンについて特に注意が要るのは、国の対外的な緩衝材が二段構えになっていることである。国立銀行が管理する国際準備とは別に、石油収入を積み立てる国民基金があり、両者は別々に公表される。

規模でいえば国民基金のほうが大きい。2026年7月末の国民基金は661億2,100万ドルで、同時点の総国際準備633億2,400万ドルを上回る。フィッチは2026年6月の格付けの告知で、2026年5月末の国民基金の外貨資産を664億ドル、GDPの18%相当とし、前年から68億ドル増えたとしている。

両者は目的が違う。国際準備は為替と対外支払いのための資産であり、国民基金は世代間の貯蓄と財政の緩衝を目的とする。ただし国民基金からの移転や外貨売却は為替市場の需給に効くため、国立銀行はその規模を月ごとに公表している。「カザフスタンの外貨準備は何億ドルか」という問いには、どちらを指すのかで倍近く違う答えが返る。

同じ構造はアゼルバイジャンにもある。中央銀行の公的外貨準備は2026年7月末で137億6,790万ドルだが、国全体の対外資産にはこのほかに国家石油基金の資産が加わる。この国で「戦略外貨準備」と呼ばれる数字は両者の合計を指すことが多く、中央銀行の準備だけを見たときの数倍になる。

輸入何か月分という読み方

国際準備の水準を評価する最も広く使われる物差しが、輸入カバー月数である。国際準備を1か月あたりの財・サービスの輸入額で割ると、輸入だけを続けた場合に準備が何か月分に相当するかが出る。経験的には3か月が目安とされ、これを下回ると対外的な支払い能力への懸念が出やすい。

ジョージア国立銀行の主要指標の表では、この指標が年ごとに示されている。2020年の5.2か月から2024年の2.8か月まで下がり、2025年に3.6か月へ戻った。準備の絶対額(2024年44億ドル、2025年62億ドル)と合わせて見ると、2024年の低下と2025年の回復がはっきり出る。

ただしこの物差しには限界がある。輸入が急増している国では、準備が増えていてもカバー月数は下がる。逆に景気が悪く輸入が縮めば、準備が減っていてもカバー月数は改善する。短期の対外債務に対する比率や、経常赤字の規模とあわせて見るのが通例である。

対外債務との対比も有効である。短期の対外債務を準備が何倍カバーしているかは、資金が流出する局面での耐久力を見るうえで輸入カバー月数より直接的な指標になる。国際準備は絶対額だけで評価せず、輸入、対外債務、経常収支と並べて読むのが標準的なやり方である。

数字の読み方

第一に、グロスとネットの区別である。多くの国はグロス(総額)とネット(純額)の両方を公表する。ネットは中央銀行の対外負債を差し引いた値で、通常グロスより小さい。カザフスタンの2026年7月末はグロス633億2,400万ドルに対しネット613億3,300万ドルだった。報道が「外貨準備」と書くときにどちらを指しているかは明示されないことが多い。

第二に、定義の違いである。同じ国の同じ月について、当局が公表する「国際準備」と、格付会社が用いる「国際準備」が一致しないことがある。ジョージアについて、フィッチは2025年11月の格付けの告知で2025年10月時点の国際準備を56億ドルとしたが、国立銀行の年次の指標表は2025年末を62億ドルとしている。基準日が2か月違うことと、集計の範囲が同じとは限らないことの両方が効いている。

第三に、評価替えの影響である。金と非ドル通貨で保有する部分は、価格と為替の変動でドル建ての評価額が動く。保有量が変わらなくても総額が増減するため、「準備が増えた」ことが必ずしも当局が買い入れたことを意味しない。金の比率が7割を超えるカザフスタンとキルギスでは、この効果が特に大きい。

第四に、基準日である。月末値と月中の平均値、四半期末の様式にもとづく値は同じ月でも一致しない。キルギスの場合、月次の系列は月末値で、IMFの様式にもとづく内訳は四半期末が基準日である。系列をつなぐときは、どの基準日で揃えるかを先に決める必要がある。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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