ホルゴスは、中国とカザフスタンの国境にある物流の集積地である。中間回廊や一帯一路の文脈で頻繁に登場するが、同じ地名が国境の両側にあり、しかも「内陸港(乾港)」「経済特区」「国際国境協力センター」という性格の異なる三つの施設を指して使われるため、どの数字が何を指しているのかが分かりにくい。
さらに紛らわしいのが鉄道の国境駅である。中国側の駅はホルゴスだが、これに接するカザフスタン側の駅はアルティンコルであって、しばしば同列に語られるドストゥクは別のゲートである。統計を突き合わせるときは、この二つを取り違えないことが出発点になる。
| 場所 | 中国・新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州と、カザフスタン・ジェティス州パンフィロフ地区にまたがる国境地帯 |
|---|---|
| 呼び名 | 中国側はホルゴス(霍爾果斯)、カザフ側はコルガス。日本語ではどちらも「ホルゴス」と書かれる |
| 鉄道の国境駅 | カザフ側はアルティンコル。2012年に開通したジェティゲン〜アルティンコル線で国内網につながる |
| もう一つの鉄道ゲート | カザフ側ドストゥク/中国側アラシャンコウ。1990年の接続から2025年までの累計輸送量は4億2,500万トン超 |
| 内陸港 | KTZE・ホルゴス・ゲートウェイ(カザフ側)。カザフスタン鉄道グループが運営し、2017年にCOSCOシッピングと連雲港港口集団が計49%を取得 |
| 内陸港の取扱量 | 37万2,000TEU超(2025年、前年比2%増) |
| 積替能力 | 年54万TEUから80万TEUへ(2025年9月に48%増) |
| 荷役時間 | 1コンテナあたり平均5時間から1時間へ短縮(2025年) |
| 国境の通過量 | アルティンコル〜ホルゴス経由の中国・カザフスタン間貨物1,610万トン、通過したコンテナ列車3,589本(2025年) |
| 経済特区 | ホルゴス東門経済特区。総面積4,591.5ヘクタール(うち乾港129.8、物流区224.9、工業区224.6、残りは予備地) |
| 国際国境協力センター | カザフ側1.85平方キロメートル、中国側3.43平方キロメートル。ビザなしで最長30日 |
同じ名前が国境の両側にある
中国側は新疆ウイグル自治区イリ・カザフ自治州の霍爾果斯(ホルゴス)市、カザフスタン側はジェティス州パンフィロフ地区のコルガスである。日本語ではどちらも「ホルゴス」と書かれるため、写真や統計がどちら側のものかを取り違えやすい。
国境をまたぐ形で「中国・カザフスタン国際国境協力センター」という共同区域があり、両国の側にそれぞれ免税店や商業施設が並ぶ。ここで撮られた写真は、建物の様子だけではどちら側か判別しにくい。「ホルゴス」という地名だけが添えられた写真や統計は、中国側とカザフ側のどちらを指しているのかを説明文で確かめる必要がある。
鉄道のゲートは二つある
カザフスタンと中国を結ぶ鉄道の国境ゲートは二つある。古いほうがカザフ側ドストゥクと中国側アラシャンコウの組み合わせで、両国の鉄道が接続したのは1990年である。カザフスタン鉄道(KTZ)によれば、この開通から2025年までの累計輸送量は4億2,500万トンを超える。
新しいほうがカザフ側アルティンコルと中国側ホルゴスの組み合わせで、2012年にジェティゲン〜アルティンコル線が開通して第二のゲートになった。内陸港も経済特区も、こちらの側にある。
「ホルゴスの取扱量」として引かれる数字は、内陸港のコンテナ処理量(TEU)であることも、国境を通過した貨物の総重量(トン)であることもある。ドストゥク側の数字と合算されている場合もあるので、出典が二つのゲートのどちらを指しているかを確認する必要がある。
内陸港ホルゴス・ゲートウェイ
物流の中核はカザフスタン側の乾港「KTZE・ホルゴス・ゲートウェイ」である。中国は標準軌(1,435ミリ)、旧ソ連圏は広軌(1,520ミリ)と線路の幅が違うため、国境を越える貨物はどこかで積み替えなければならない。この積み替えの能力が、中国と欧州を結ぶ鉄道輸送全体の隘路になってきた。
2025年の取扱量は37万2,000TEU超で前年比2%増だった。同年は広軌の線路が10本増設され、コンテナ1本あたりの積替時間は平均5時間から1時間へ短縮されている。このうち1,520ミリの仕分線9本と車両の解結修繕基地が9月に使えるようになり、積替能力は年54万TEUから80万TEUへ48%引き上げられた。仕分線は換算57両編成の列車を最大9本まで同時に受け入れられる。
出資構成は2017年に変わった。COSCOシッピングと連雲港港口集団が、KTZの保有していた乾港の株式49%を取得したもので、両社の法律顧問だったK&Lゲイツが同年6月に公表している。KTZ側は、この乾港が連雲港の物流基地に次ぐ二番目の中国・カザフスタン共同物流事業だと説明している。
規模の数字は資料によって振れる。運営会社の会社案内は乾港の総面積を102.8ヘクタールとする一方、同社サイトの指標欄と経済特区側の資料は129.8ヘクタールとしている。倉庫2棟の合計1万平方メートル、荷役場所6か所、引込線25キロ、温度管理貨物用の電源供給点180か所というのが同社の示す設備の概要である。
経済特区と国際国境協力センター
乾港は「ホルゴス東門」経済特区の内側にある。特区は2011年に設置され、総面積は4,591.5ヘクタール。内訳は予備地4,012.2ヘクタール、物流区224.9ヘクタール、工業区224.6ヘクタール、乾港129.8ヘクタールである。入居企業は法人所得税・付加価値税・財産税・土地税が0%で、特区内へ搬入する物品には関税がかからない。
これとは別に、国境をまたぐ「国際国境協力センター」がある。カザフスタン側の運営主体は特区管理会社で、同社の説明によれば、カザフ側の区域は1.85平方キロメートル、中国側は3.43平方キロメートル。カザフ側は2005年に会社が設立されてインフラ整備が始まり、2017年10月6日の政府決定第624号で経済特区の地位を与えられた。インフラが行き届いた区域は608.56ヘクタールとされる。
センターの性格は、通商と観光を兼ねた買い物・商談の場である。カザフスタンとユーラシア経済連合の国民はビザなしで最長30日滞在でき、持ち出せる物品は25キログラム・500ユーロまでが免税の枠になる。開場は毎日7時から19時まで、入場には通行証が要る。鉄道で行く場合の最寄り駅はアルティンコルである。中国側の区域は貿易交渉、商品の展示販売、倉庫・輸送、宿泊・飲食、金融など七つの機能を担うとされ、そこから中国国内へ持ち込む物品には中国側の免税枠が適用される。
どれだけ通っているか
KTZによれば、2025年にアルティンコル〜ホルゴスの国境を通過した中国・カザフスタン間の貨物は1,610万トンで、鉄道協力機構(OSJD)の枠組みで合意された計画を9%上回った。うち中国向け輸出は530万トンで計画比20%増。同じ国境を通って欧州・ロシア・中央アジアへ向かったコンテナ列車は3,589本だった。
2026年に入っても増勢は続いている。KTZが4月に公表した集計では、年初からの中国・カザフスタン間の鉄道輸送は9.3%増、カザフスタン産品の輸出は17%増、中国発でカザフスタンを通過する貨物は27%増だった。カスピ海横断の経路では、第1四半期に中国発のコンテナ列車125本が送り出され、前年同期比34.4%増となっている。
隘路を外す工事が続く
アルティンコルから国内網へ向かう区間の改良も進んだ。KTZは2026年4月、アルティンコル〜ジェティゲン間293キロの近代化を予定より8か月早く終えたと発表した。行き違いのできる施設を12か所(新設5、全面改築7)整え、区間の通過能力は80%増えた。先行して工事を終えたイインタル〜タスカラス間68.4キロでは、1日18対から33対へ列車を増やせるようになっている。
古いほうのゲートでも工事が続く。ドストゥク〜モインティ間の複線化は運転を開始し、ドストゥク〜アラシャンコウ間の複線と、ドストゥク駅の貨物ターミナル改築、アルティンコル駅のコンテナターミナル拡張が課題として挙げられている。第三の国境通過点となるバフティ〜タチェンの整備も動いている。
つまりホルゴスは、単体の施設ではなく、国境駅・乾港・特区・国境協力センターが重なった地域の名前である。数字を引くときは、どの層の話なのかを確かめるのが早道になる。
参考資料
- Через переход Алтынколь – Хоргос в 2025 году перевыполнен план грузоперевозок(カザフスタン鉄道、2026年1月14日) ↗
- Вектор роста: Транзитный потенциал Khorgos Gateway увеличился в 2025 году(同、2026年2月6日) ↗
- Новые сортировочные пути увеличили мощность терминала Khorgos Gateway на 48%(同、2026年7月13日) ↗
- КТЖ подвело итоги работы на пограничной станции Достык(同、2026年1月22日) ↗
- Казахстан и Китай укрепляют железнодорожное сотрудничество(同、2026年1月23日。ドストゥク〜アラシャンコウの累計輸送量) ↗
- Завершена модернизация железнодорожного участка Алтынколь – Жетыген(同、2026年4月24日) ↗
- Железнодорожные перевозки между Казахстаном и Китаем сохраняют устойчивый рост(同、2026年4月16日) ↗
- О нас — ТОО «KTZE-Khorgos Gateway»(乾港の会社案内) ↗
- О СЭЗ «Хоргос - Восточные ворота»(経済特区の公式サイト。面積の内訳) ↗
- О центре — МЦПС «Хоргос»(国際国境協力センター公式サイト。沿革と面積) ↗
- Особенности СЭЗ — МЦПС «Хоргос»(同。政府決定第624号と優遇措置) ↗
- Памятка туриста — МЦПС «Хоргос»(同。ビザなし30日と免税の枠) ↗
- K&L Gates Advises COSCO Shipping and Lianyungang Port on Kazakhstan Investment(2017年6月22日。乾港49%の取得) ↗
- История — АО «НК «Қазақстан темір жолы»(ジェティゲン〜アルティンコル線の開通年) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。