GUIDE · 制度・枠組み2026年9月時点

中央アジア・コーカサスの関税と貿易政策とは

8か国の輸入関税の決まり方と貿易政策の枠組みを整理する。共通関税に従う国と独自の税率表を持つ国の違い、世界貿易機関への加盟の進み方、自由貿易協定の網、輸入代替と国内産業の保護、非関税障壁と技術規則、そして関税の逆転という実務上の問題まで。

輸入関税は、貿易の費用のうち政策で直接動かせる部分である。中央アジア・コーカサスでは、この部分の決まり方が国によって根本的に違う。カザフスタン、キルギス、アルメニアの税率は超国家の機関が決め、各国は単独で変えられない。残る5か国は自国の法令で税率表を持つ。したがって「この地域の関税率」という一つの数字は存在しない。

税率の水準にも大きな幅がある。ジョージアは2006年に段階の数を16から3へ減らし、およそ85%の品目で輸入税を撤廃した。同国の関税は0%、5%、12%の三つしかなく、輸出と再輸出には課税しない。一方、共通関税に従う国では、農産品や自動車を中心に高い税率が残り、そこに個別の保護措置が重なる。

世界貿易機関(WTO)への加盟状況も分かれている。8か国のうち5か国が加盟しており、残る3か国は交渉中である。加盟していれば、関税の上限(譲許税率)に拘束され、貿易政策の変更は通報の対象になる。加盟していなければその制約はないが、相手国の市場での扱いも最恵国待遇に依存しない。

以下では、関税の決まり方、WTOと自由貿易協定の網、国内産業の保護に使われる手段、非関税の障壁、そして数字を比べるときの注意点を、法令と当局の公表資料にもとづいて整理する。

輸入関税を誰が決めるかカザフスタン・キルギス・アルメニアは超国家機関の決定に従い、ジョージア・アゼルバイジャン・ウズベキスタン・タジキスタン・トルクメニスタンは各国が定める
共通関税の根拠ユーラシア経済委員会理事会の2021年9月14日決定第80号。品目分類表と共通関税率表を承認する。2026年7月9日決定第76号まで改正が重ねられている
世界貿易機関(WTO)加盟キルギス1998年12月20日、ジョージア2000年6月14日、アルメニア2003年2月5日、タジキスタン2013年3月2日、カザフスタン2015年11月30日
加盟交渉中アゼルバイジャン(申請1997年6月、作業部会1997年7月)、ウズベキスタン(申請1994年12月、作業部会1994年12月)、トルクメニスタン(申請2021年11月、作業部会2022年2月)
ジョージアの輸入税率0%、5%、12%の3段階。2006年9月1日に16段階から3段階へ削減し、およそ85%の品目で輸入税を撤廃した(経済・持続可能発展省の説明)
同・法的根拠ジョージア税法典第28章(第195条から第197条)。第197条が12%の品目群、5%の品目群、酒類の従量税率を列挙する
同・輸出ジョージアからの輸出と再輸出には関税がかからない。1997年9月1日以降、付加価値税は仕向地主義で課され輸出は免税
ジョージアの自由貿易の相手独立国家共同体(CIS)諸国、トルコ、欧州連合、中国、欧州自由貿易連合(EFTA)
EFTAとの協定2016年6月27日署名。アイスランドとノルウェーには9月1日から、スイスとリヒテンシュタインには2018年5月1日から発効
共通関税側の自由貿易協定ベトナム(2015年5月29日署名、2016年10月5日発効)、セルビア(2019年10月25日署名、2021年7月10日発効)、イラン(2023年12月25日署名、2025年5月15日発効。2018年5月17日の暫定協定を置き換え)
署名済みで未発効モンゴルとの暫定貿易協定(2025年6月27日署名、2026年7月22日発効予定)、アラブ首長国連邦との経済連携協定(2025年6月27日署名)、インドネシアとの自由貿易協定(2025年12月21日署名)
交渉中・検討中エジプトとインドは協定を作成中。チュニジアは締結の可否を検討中
非関税の障壁の撤廃例ウズベキスタンとカザフスタンは19分野の品目について関税・非関税の障壁を2026年8月10日から撤廃することで合意(2026年8月5日、タシケントで発表)
関税の逆転への対応ウズベキスタン大統領令UP-250(2025年12月17日)は、原材料の輸入関税が完成品の関税を上回る品目の一覧を作り、2026年3月1日から2027年3月1日まで実験として扱いを変える
アゼルバイジャンの関税収入(2026年予算法)18億1,800万マナト。歳入386億900万マナトの4.7%。輸入付加価値税47億5,000万マナト、輸入物品税2億3,400万マナト、輸入燃料等の道路税6,000万マナトを加えると17.8%
共通関税の収入の扱い連合の対外境界で徴収された輸入関税は、連合条約の定める納付と配分の手続きで加盟国に配分される。各国の予算に入る額は自国の税関が徴収した額と一致しない
原産地証明ジョージアでは歳入庁と商工会議所が発給。ワインと自由工業区域の産品には特恵原産地証明EUR.1が使われる

税率は誰が決めるか

共通関税に従う3か国では、品目分類表と税率表がユーラシア経済委員会の決定として定められる。現行のものは同委員会理事会の2021年9月14日決定第80号で、以後ほぼ毎月のように改正が加えられている。2026年に入ってからも1月13日、1月20日、4月7日、5月12日、8月11日の各決定で内容が変わった。税率を変えるには委員会の手続きを経る必要があり、一国の判断で引き上げたり引き下げたりすることはできない。逆に言えば、委員会の決定は加盟国すべてに同時に効く。

ジョージアの制度は対照的である。輸入税は税法典の第28章で規律され、第197条が12%の税率が適用される品目群、5%の税率が適用される品目群、そして酒類について1ヘクトリットルあたりの従量税率を列挙する。一時輸入の場合は、滞在した各月について本来の税額の3%を課し、合計が本来の税額を超えないという上限が置かれている。経済・持続可能発展省は同国の貿易政策を、簡素な通関手続き、低い輸入関税、最小限の非関税規制で特徴づけられると説明している。

アゼルバイジャン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンもそれぞれ独自の税率表を持つ。ウズベキスタンは自国の対外経済活動品目分類表を定めており、関税率と品目分類は政令で改正される。

WTOへの加盟と交渉

加盟の順序は、キルギスが1998年12月20日で最も早く、ジョージアが2000年6月14日、アルメニアが2003年2月5日、タジキスタンが2013年3月2日、カザフスタンが2015年11月30日と続く。キルギスの加盟は独立から7年での早期加盟で、譲許水準は低く抑えられた。カザフスタンは関税同盟に入った後に加盟したため、共通関税とWTOでの約束の差をどう埋めるかという課題を抱えることになった。

交渉中の3か国のうち、ウズベキスタンは1994年12月に加盟を申請して同月に作業部会が設置された最も古い案件である。対外貿易制度に関する覚書は1998年10月に配布され、第1回の作業部会は2002年7月に開かれた。アゼルバイジャンは1997年6月の申請で、作業部会は同年7月に設置されている。トルクメニスタンは2021年11月に申請し、2022年2月に作業部会が設置された。

加盟交渉は国内制度の作り替えを伴う。ウズベキスタンは関税行政の改革を進める大統領令の中に、世界貿易機関との作業を担う省庁間委員会の役割を書き込んでおり、関税構造の見直しをこの枠組みで扱っている。

自由貿易協定の網

共通関税の側では、ベトナムとの自由貿易協定が2015年5月29日に署名され2016年10月5日に発効した最初の例である。セルビアとは2019年10月25日署名、2021年7月10日発効。イランとは2018年5月17日の暫定協定を経て、2023年12月25日署名の本格的な自由貿易協定が2025年5月15日に発効した。

2025年以降は署名が続いている。モンゴルとの暫定貿易協定とアラブ首長国連邦との経済連携協定はいずれも2025年6月27日にミンスクで署名され、モンゴル分は所要の手続きを終えて2026年7月22日に発効する。インドネシアとの自由貿易協定は2025年12月21日にサンクトペテルブルクで署名され、発効に向けた作業が進んでいる。エジプトとインドとは協定の作成中で、チュニジアは締結の可否を検討する段階にある。中国とは特恵を伴わない貿易・経済協力協定が結ばれている。

ジョージアは別の網に属する。同国は独立国家共同体(CIS)諸国、トルコ、欧州連合、中国、欧州自由貿易連合(EFTA)との間で自由貿易の関係を持つ。EFTAとの協定は2016年6月27日に署名され、アイスランドとノルウェーには同年9月1日から、スイスとリヒテンシュタインには2018年5月1日から発効した。原産地の判定規則は相手ごとに異なり、CIS諸国との間ではウズベキスタンとロシアを除いて2000年11月30日のCIS首脳会議の決定が適用される。ウズベキスタンとの間では1993年9月24日の決定が、ロシアとの間では二国間の自由貿易協定の第1条と第2条の基準が使われる。

この違いは、同じ製品を同じ工場で作っても、どの市場へ出すかで必要な証明が変わることを意味する。ジョージアでは原産地証明を歳入庁と商工会議所が発給し、ワインと自由工業区域の産品には特恵原産地証明EUR.1が用いられる。

国内産業の保護に使われる手段

関税は保護の一手段にすぎない。域内では、輸入代替を目的とした個別の優遇が政令の形で積み上がる例が多い。ウズベキスタンでは、ポリマー製品、家具・木材加工といった分野ごとに支援措置を定める大統領令が出されており、対象品目の関税や税の扱いが個別に決められている。

こうした積み上げは、関税の構造そのものを歪めることがある。原材料にかかる関税が完成品にかかる関税より高くなると、国内で加工するほど不利になる。ウズベキスタンの大統領令UP-250はこの問題を正面から扱い、原材料・資材の輸入関税額が完成品の関税額を上回る品目の一覧を、世界貿易機関との作業を担う省庁間委員会が段階的に作成すると定めた。2026年3月1日から2027年3月1日までの実験として、その一覧に含まれる品目については、国内での加工を経た後の製品に原産国を問わず関税率表どおりの輸入関税を課し、法令上の減免は加工後の製品に適用するという扱いにする。関税委員会が原材料の目的外使用を監視する。

経済特区や自由工業区域を通じた免税も、実質的には保護と誘致の手段である。区域内への搬入に関税をかけない仕組みは域内の多くの国が持つが、区域から国内市場へ出すときの扱いは国ごとに異なる。

非関税の障壁

関税が下がるほど、実務上の障害は非関税の側に移る。技術規則、衛生植物検疫、認証、輸入許可、通関での評価方法がここに含まれる。ジョージア経済・持続可能発展省は、同国の法制には保健、安全、環境保護のために必要な場合を除いて許可制や割当といった非関税の制限を置いていないとしたうえで、二重用途品目、特別な管理下にある医薬品、非ヨウ素添加塩、ワシントン条約の対象種などについて許可が要ると列挙している。

域内貿易では、相互の障壁を政治的な合意で一括して外す例もある。ウズベキスタンとカザフスタンは2026年8月5日、タシケントでのビジネスフォーラムで、19分野の品目について関税・非関税の障壁を8月10日から撤廃すると発表した。対象には生鮮果物・野菜、穀物と穀物加工品、砂糖・菓子、綿花・綿繊維、繊維・衣料、建材、陶磁器、ガラス製品、金属構造物・鉄鋼製品、機械類、電気機器、一部の自動車部品、家具などが含まれる。障壁の問題は両国の首相が出席する政府間委員会で扱われていた。

この事例が示すのは、域内の貿易を制約してきたものが必ずしも関税ではなかったということである。品目分類の解釈、検査の頻度、書類の要求といった運用の積み重ねが、実質的な障壁として働いていた。

関税収入は財政のどこに現れるか

関税は保護の道具であると同時に歳入である。アゼルバイジャンの2026年国家予算法は、歳入を386億900万マナトと定めたうえで、税目ごとの見込額を列挙している。関税(税関手数料を含む輸入関税)は18億1,800万マナトで、歳入全体の4.7%にあたる。ただし国境で徴収されるのは関税だけではない。輸入にかかる付加価値税が47億5,000万マナト、輸入にかかる物品税が2億3,400万マナト、輸入燃料と外国登録車両の所有者が払う道路税が6,000万マナトあり、これらを合わせると68億6,200万マナト、歳入の17.8%になる。同国財務省の2026年上半期の執行報告でも、関税および輸入に係る税は歳入の16.4%(31億4,360万マナト)を占めていた。

つまり国境で徴収される額の大半は関税ではなく、輸入に課される国内税である。関税率を下げても輸入額が変わらなければ、付加価値税と物品税の部分は残る。関税の引き下げが財政に与える影響を見積もるときは、この構成を確かめる必要がある。

共通関税に従う3か国では、事情がもう一段複雑になる。連合の対外境界で徴収された輸入関税は、2014年5月29日の連合条約が定める納付と配分の手続きに従って加盟国の間で配分される。各国の予算に入る額は、その国の税関が実際に徴収した額とは一致しない。輸入の多い国が多く受け取るとは限らず、配分の比率は交渉で決まる。

数字の読み方

第一に、名目の税率と実際に払う額を区別する。特恵の適用を受けられるかは原産地の証明にかかっており、書類が整わなければ最恵国税率が適用される。自由貿易協定があることと、その協定の下で通関できることは別である。

第二に、平均税率の比較には定義が要る。単純平均(品目ごとの税率をそのまま平均する)と貿易加重平均(実際の輸入額で重みをつける)は別の数字になる。無税の品目が多い国では、単純平均は低く出やすい。

第三に、共通関税に従う国の税率は、その国の法令を見ても分からない。適用されるのは超国家の機関の決定であり、改正の頻度も高い。ある時点の税率を引くときは、決定の版を確かめる必要がある。

第四に、経済特区や個別の優遇による免税は税率表に現れない。同じ品目でも、誰が、どこへ、どの目的で輸入するかで実効の税率が変わる。

第五に、関税と国内税を混同しない。輸入時には関税のほかに付加価値税と物品税がかかる。ジョージアのように付加価値税と物品税の税率を国産品と輸入品で同一にしている国では、輸入時の負担の大部分は関税ではなく国内税である。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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