解説 · 2026年8月時点
アゼルバイジャン中央銀行(CBAR)は、アゼルバイジャンの中央銀行であり、同時に金融市場全体の監督当局である。1992年2月11日の大統領令により国立銀行として設立され、2009年3月18日の憲法改正で現在の名称になった。本部はバクーにある。
職務は金融政策と為替政策の策定・実施、通貨の発行と流通の管理、銀行間決済システムの規制と整備、金・外貨準備の保有と運用である。加えて2019年以降は、銀行・保険・証券・決済の全分野にわたる免許付与、規制、監督、そして投資家と金融サービス利用者の保護を担っている。
| 正式名 | Central Bank of the Republic of Azerbaijan(CBAR) |
|---|---|
| 設立 | 1992年2月11日の大統領令により国立銀行として設立。発効日の2月12日を創立記念日とする |
| 改称 | 2009年3月18日の憲法改正で「アゼルバイジャン共和国中央銀行」へ |
| 本部 | アゼルバイジャン・バクー(R.ベフブドフ通り90番) |
| 通貨 | マナト(AZN)。1992年8月15日に流通開始、1994年1月1日から唯一の法定通貨 |
| インフレ目標 | 4%(±2%) |
| リファイナンス金利 | 6.5%。金利回廊は下限5.5%、上限7.5%(2026年8月時点) |
| 年間インフレ率 | 5.8%(2026年7月) |
| 監督対象 | 銀行、ノンバンク信用機関、信用組合、保険会社・再保険会社と保険仲介業者、証券市場と投資会社、電子マネー機関、決済機関、両替所 |
| 免許を受けた銀行 | 20行と外国銀行の支店1つ(2026年8月時点)。うち5行がシステム上重要な銀行 |
沿革
アゼルバイジャンの中央銀行業務は20世紀初頭に遡る。1918年5月28日に成立したアゼルバイジャン人民共和国は、1919年3月7日に国家銀行の設立を決め、同年9月16日に議会が定款を採択、9月30日に開業した。1920年4月28日の共和国崩壊後、この銀行は人民銀行に改組され、1923年には中央銀行としての機能を失った。以後1991年末まで、ソ連国家銀行のアゼルバイジャン支部が置かれていた。
独立回復後、1991年5月25日の「経済的独立の基礎に関する憲法的法律」が独立した銀行制度と自国通貨流通の法的根拠を定め、1992年2月11日の大統領令で国立銀行が設立された。1992年8月7日に最初の国立銀行法が採択され、同年12月1日に定款が承認された。マナトは1992年8月15日に流通に入り、1994年1月1日から唯一の法定通貨となった。2005年2月7日のデノミ令により、2006年1月1日から新マナトが導入された(旧5,000マナト=新1マナト)。
監督権限は二度動いている。2016年3月4日の中央銀行法改正で、銀行の免許付与・規制・監督は新設の別機関へ移され、CBARは金融政策、為替政策、マクロ経済・金融の安定、決済システム、現金流通に専念することになった。その後2019年11月28日の大統領令「金融サービス市場における規制・監督体制の管理の改善について」により、金融市場監督当局の権限がCBARへ戻された。
金融政策
CBARはインフレ目標を4%(±2%)と定め、リファイナンス金利を政策手段とする。金利回廊は下限と上限で構成され、2026年8月時点の水準は下限5.5%、上限7.5%、リファイナンス金利6.5%である。年間インフレ率は2026年7月時点で5.8%と、目標帯の上限に近い。
無担保の銀行間短期金融市場の指標としてAZIR(Azerbaijan Interbank Rate)を算出・公表しており、金融政策の波及を測る材料になっている。
アゼルバイジャンは石油・ガス収入の変動に経済が大きく左右されるため、為替の安定が金融政策の実質的な焦点になってきた。国家石油基金(SOFAZ)による外貨供給と中央銀行の準備運用が、マナトの対ドル相場を支える構造にある。
統合監督機関としての役割
CBARが所管する業態は幅広い。信用機関では銀行、ノンバンク信用機関、信用組合、銀行の決済代理店。資本市場では証券取引所、国立預託センター、投資会社、投資サービスを提供する銀行、清算機関、投資ファンドとその運用会社、専門資格の認定。保険では保険会社と再保険会社、保険仲介業者、外国の保険ブローカー、損害査定人、アクチュアリー。決済では電子マネー機関、決済機関、決済システム運営者、決済代理店、国営郵便事業者、両替所である。
2026年8月時点で免許を受けた銀行は20行と外国銀行の支店1つ(バンク・メリー・イラン・バクー支店)である。2026年のシステム上重要な銀行には、アゼルバイジャン国際銀行、バンク・レスプブリカ、カピタルバンク、パシャ銀行、ユニバンクの5行が指定されている。
無免許業者に対する注意喚起も監督の一環である。2026年8月21日、CBARは国内で免許を持たない外国の投資プラットフォームについて警告を出し、外国の規制当局の免許はアゼルバイジャン国内で投資サービスを提供したり宣伝したりする権利を与えないと明示した。同時点で中央銀行の免許を持つ投資会社は12社である。
決済システムと戦略
CBARは国内の決済インフラを運営・監督する。中核は即時グロス決済システム(AZIPS)と小口決済のクリアリング・決済システムで、これに即時決済システム(IPS)、銀行間カードセンター(ICC)、政府決済ポータル(GPP)が加わる。国内QR規格AZQRの整備とISO20022への移行も進めている。
政策文書としては「金融部門開発戦略2024-2026」があり、その進捗報告が公表されている。このほかデジタル決済戦略、オープンバンキングのロードマップ、金融市場のサイバーセキュリティ戦略、マイクロファイナンス・モデルの戦略的枠組み、監督技術(サプテック)のロードマップ2024-2029を持つ。
決済分野の免許は登録簿として公開されており、2026年8月時点で電子マネー機関の登録が進んでいる。無免許の事業者に対する警告と、免許を持つ事業者の一覧の公開が、利用者保護の両輪になっている。
参考資料
- Central Bank of the Republic of Azerbaijan(公式サイト) ↗
- History(アゼルバイジャン中央銀行) ↗
- Banks(免許を受けた銀行の登録簿) ↗
- Investment companies(投資会社の登録簿) ↗
- Information notice: Central Bank warns investors about unlicensed foreign investment platforms(2026年8月21日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。