ORGANIZATION · DEVELOPMENT BANK

イスラム開発銀行

イスラム協力機構の加盟国が出資する多国間開発金融機関。

Islamic Development Bank
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解説 · 2026年9月時点

イスラム開発銀行(IsDB)は、イスラム協力機構(OIC)の加盟国が出資して設立した国際開発金融機関である。設立協定は1974年8月12日にサウジアラビアのジッダで署名され、総務会の設立会合を経て1975年10月20日に業務を始めた。本部はジッダ。加盟は57か国で、四大陸にまたがり、世界人口の5人に1人が住む国々を対象とする。ムーディーズ、S&P、フィッチの3社からトリプルAの格付けを2007年以来維持しており、イスラム金融の分野では最大の多国間開発銀行である。

中央アジア・コーカサス8か国のうち、IsDBの対象になるのはカザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャンの6か国である。アルメニアとジョージアはOIC加盟国ではないため、この機関の融資は受けられない。域内6か国へのグループ累計承諾額は146億5,950万ドル・517件で、グループ全体の累計2,225億ドルの6.6%を占める(2026年第2四半期時点)。

他の開発銀行と最も違うのは金融の形式である。イスラム法は利子を禁じるため、IsDBは「資金を貸して利子を取る」契約を使わない。代わりに、発注者に代わって設備や建物を製造・建設して引き渡すイスティスナー、購入した資産を割賦で売る割賦販売、資産を購入して賃貸するイジャーラといった実物取引の形をとる。この結果、案件は発電所、道路、病院、灌漑設備といった実物資産の裏づけを伴うものが中心になる。

正式名Islamic Development Bank(IsDB)
設立設立協定は1974年8月12日にジッダで署名。総務会の設立会合は1975年7月、業務開始は1975年10月20日
本部サウジアラビア・ジッダ
総裁ムハンマド・アルジャーセル(IsDBグループ総裁、理事会議長)
加盟57か国。加盟にはイスラム協力機構(OIC)の加盟国であることが条件になる
会計単位イスラム・ディナール(ID)。国際通貨基金の特別引出権(SDR)1単位に等しい
会計年度1月1日から12月31日。ただし公式の暦はヒジュラ暦である
資本授権資本はID1,000億(1万ディナール額面の株式1,000万株)。応募資本ID656億2,084万、うち払込済みID82億1,590万(2025年12月31日時点)
総資産ID309億3,667万(2025年末)。うち事業資産ID177億4,941万、トレジャリー資産ID115億7,360万
純利益ID6億3,841万(2025年通期、前年比64%増)
資金調達発行済みスクーク(イスラム債)ID172億527万(2025年末)
格付ムーディーズ、S&P、フィッチの3社からトリプルA。2007年以来維持している
グループIsDB本体のほか、IsDB研究所(IsDBI、1981年)、イスラム投資輸出信用保険会社(ICIEC、1994年)、民間セクター開発イスラム協会(ICD、1999年)、国際イスラム貿易金融公社(ITFC、2005年承認)の5機関で構成する
2025年の実績グループの純承諾額158億ドル(2024年131億ドル、20.2%増)、実行額110億ドル、返済額103億ドル。IsDB本体の承諾額は57億ドルで年間目標の103%
累計グループの承諾額は1975年から2026年第2四半期までに総額で2,225億ドル。うち運輸210億ドル、エネルギー898億ドル、農業311億ドル。純承諾額の累計は2025年末で2,096億ドルであり、総額ベースの数字と混ぜて使えない
地域ハブ10か所(アブジャ、アルマトイ、アンカラ、カイロ、ダカール、ダッカ、ジャカルタ、ジッダ、カンパラ、ラバト)。中央アジア5か国はアルマトイ、アゼルバイジャンはアンカラの管轄
ウズベキスタングループの累計承諾額54億9,190万ドル・165件(2026年第2四半期時点)。IsDB加盟は2003年8月27日。応募資本ID1,491万
カザフスタン同42億1,920万ドル・76件。IsDB加盟は1996年5月16日。応募資本ID5,991万で域内最大
アゼルバイジャン同17億7,480万ドル・86件。IsDB加盟は1992年7月4日。応募資本ID6億5,663万で応募資本全体の1.00%を占め、域内では突出して大きい
トルクメニスタン同13億7,660万ドル・27件。IsDB加盟は1994年11月15日。応募資本ID550万
タジキスタン同11億3,390万ドル・91件。IsDB加盟は1997年6月1日。応募資本ID2,015万
キルギス同6億6,310万ドル・72件。IsDB加盟は1993年11月3日。応募資本ID2,867万
域内6か国の合計グループの累計承諾額146億5,950万ドル・517件。グループ全体の累計の6.6%にあたる
対象外アルメニアとジョージアはOIC加盟国ではないため、IsDBの融資対象ではない
年次総会2026年の年次総会は6月にアゼルバイジャンのバクーで開催。主題は「持続可能な繁栄のための地域統合」だった

設立と加盟

出発点は1973年12月にジッダで開かれたイスラム諸国財務大臣会議である。ここで設立の意向が宣言され、設立協定は1974年8月12日(ヒジュラ暦1394年ラジャブ21日)に署名された。総務会の設立会合は1975年7月に開かれ、業務開始は同年10月20日(ヒジュラ暦1395年シャウワール15日)である。設立年を1974年とする資料と1975年とする資料があるのは、協定の署名と業務開始のどちらを取るかの違いによる。

加盟の条件は三つある。イスラム協力機構(OIC)の加盟国であること、資本への最低出資額の第1回払込を行うこと、そして総務会が定める条件を受け入れることである。したがってOICに加盟していない国は、地理的にどれだけ近くてもIsDBの対象にならない。中央アジア5か国とアゼルバイジャンはいずれもOIC加盟国で、独立後の1990年代前半から順に加わった。

域内の加盟時期は、アゼルバイジャンが1992年7月4日と最も早く、キルギス1993年11月3日、トルクメニスタン1994年11月15日、カザフスタン1996年5月16日、タジキスタン1997年6月1日、ウズベキスタン2003年8月27日と続く。ただしカザフスタンとタジキスタンについては、同行の国別ページがそれぞれ1995年11月30日、1996年11月27日という別の日付を掲げている。

公式の言語はアラビア語で、英語とフランス語が実務の言語として使われる。会計年度は1月1日から12月31日までだが、公式の暦はヒジュラ暦であり、総務会の決議番号などにはヒジュラ暦の年号が使われる。

イスラム金融の型

IsDBの融資は、契約の形ごとに分類される。2025年12月31日時点の事業資産ID177億4,941万の内訳を見ると、最も大きいのがイスティスナー資産のID78億3,249万である。イスティスナーは、発注者の求めに応じて資産を製造・建設し、完成後に取り決めた価格で引き渡す契約で、道路、橋、発電所、病院といった建設案件に使われる。

次に大きいのが割賦販売(instalment sale)のID53億7,860万で、機関が設備や資材を購入して相手国に割賦で売る形である。第三がイジャーラ(賃貸)資産のID26億4,216万で、資産を保有したまま貸し出し、賃料を受け取る。無利子貸付にあたるカルド(Qard)はID16億743万で、最も貧しい加盟国向けの譲許的な資金として使われる。ムラーバハ(原価加算売買)の債権はID3億1,610万にとどまるが、トレジャリー運用の商品ムラーバハ預け金はID50億9,316万と大きい。

資金調達の中心はスクーク(イスラム債)である。2025年末の発行残高はID172億527万で、総負債ID177億4,435万のほとんどを占める。トリプルAの格付けを背景に国際市場でスクークを発行し、それを実物取引の形で加盟国へ回す構造になっている。

純利益の使い道にも規則がある。設立協定第42条により、年間の純利益は応募資本の25%に達するまで一般準備金へ繰り入れることが求められる。2025年末の一般準備金は応募資本の5.9%にとどまるため、当面は積み増しが続く。そのうえで総務会の決議により、正常化純利益の8%(下限1,000万ドル)が技術支援の贈与に、3%(上限800万ドル)が奨学金事業に配分されている。

IsDBグループの構成

IsDBは5つの機関からなるグループの中核である。1981年に設立されたIsDB研究所(IsDBI)は研究と研修を担い、1994年設立のイスラム投資輸出信用保険会社(ICIEC)は輸出信用保険と投資保険を提供する。1999年設立の民間セクター開発イスラム協会(ICD)は民間企業への投融資を、2005年に総務会が設立を承認し2006年に協定が整った国際イスラム貿易金融公社(ITFC)は貿易金融を担当する。このほか世界ワクフ基金(2001年)とイスラム連帯開発基金(ISFD、2007年)がある。

案件の性格によって窓口が変わるため、「IsDBが融資した」と報じられるものが実際にはITFCやICDの取引であることがある。グループの累計の承諾額のうち、IsDB本体の通常資本財源(OCR)が35.4%、ITFCが43.7%、ICDが3.4%を占め、残り17.5%はISFDやワクフ基金などその他の基金から出ている。件数と金額の大半を貿易金融が占める点が、この機関を他の開発銀行と分けている。

2025年のグループの純承諾額は158億ドルで、前年の131億ドルから20.2%増えた。内訳はITFCが93億ドル、IsDB本体(OCR)が57億ドル、ICDが5億5,560万ドルである。ICIECはこれとは別に、178億ドルの取引に保険を付けた。実行額は110億ドルで純承諾額の69.7%、返済額は103億ドルだった。

IsDB本体の2025年の承諾額を分野別に見ると、運輸が46.2%で最大、上下水道・都市サービスが20%、保健が16.1%と続く。保健の比率は2024年の3.7%から大きく上がった。気候関連の資金は総コミットメントの42%を占め、同行が自ら定めた35%という目標を上回っている。

域内での活動

域内で最大の相手はウズベキスタンである。2003年8月27日の加盟と遅かったにもかかわらず、2026年第2四半期までのグループ累計承諾額は54億9,190万ドル・165件に達し、IsDBグループの累計承諾額の2.5%を占めて加盟57か国のうち第10位に入る。分野別では金融が84件・18億2,140万ドルと件数・金額とも最大で、農業17件・13億6,280万ドル、運輸7件・7億8,540万ドル、保健14件・5億1,610万ドル、エネルギー9件・5億470万ドルが続く。実施中の案件が84件・34億6,770万ドルと、完了した81件・20億2,420万ドルを上回っており、関与が近年になって急速に増えたことが読み取れる。

カザフスタンは42億1,920万ドル・76件である。農業が21件・21億1,560万ドルと突出し、鉱工業7件・13億1,580万ドル、運輸12件・3億9,740万ドルが続く。IsDBグループは2026年7月2日、アスタナで開かれた第38回外国投資家評議会に出席し、トカエフ大統領から評議会のオブザーバーとして受け入れられた。同日、アルジャーセル総裁はドスティク勲章(第2級)を授与されている。同行は「加盟以来の累計承諾額は42億4,000万ドルを超えた」と説明し、持続可能なインフラ、輸送の接続性、水の安全保障、経済の多角化、民間部門の開発、イスラム金融、人的資本を柱とする新たな加盟国パートナーシップ戦略の策定を進めているとしている。

アゼルバイジャンは17億7,480万ドル・86件だが、応募資本ではID6億5,663万・全体の1.00%と、域内6か国のなかで突出して大きい。ほかの5か国の応募資本がID550万からID5,991万の範囲にあることを考えると、桁が違う。分野別では農業15件・6億5,600万ドル、エネルギー7件・4億9,500万ドル、上下水道・都市サービス3件・2億6,520万ドル、金融36件・2億2,900万ドルである。

トルクメニスタンは13億7,660万ドル・27件で、件数は少ないが1件あたりの規模が大きい。運輸8件・4億7,090万ドル、エネルギー2件・4億ドル、情報通信2件・2億7,550万ドル、保健5件・1億7,900万ドルという構成である。タジキスタンは11億3,390万ドル・91件で、エネルギー16件・4億7,640万ドル、運輸10件・2億1,200万ドル、教育14件・1億6,490万ドル、農業17件・1億6,420万ドルと、件数の割に小口の案件が多い。キルギスは6億6,310万ドル・72件で、エネルギー8件・1億7,940万ドル、運輸12件・1億8,030万ドルが柱である。

キルギス財務省の公表では、2026年6月30日時点の対外公的債務52億1,515万ドルのうちIsDBは2億565万ドルで3.9%を占め、多国間の譲許的な債権者としては国際開発協会(IDA)、アジア開発銀行、ユーラシア開発銀行に次ぐ4位である。

貿易金融ではITFCが目立つ。2026年7月21日、ITFCはウズベキスタンのハムコルバンクと1億ドルのシンジケート方式の融資枠に署名した。同社はこれを「ウズベキスタンで最大の単独のイスラム貿易金融枠」としており、中小企業、女性起業家、グリーン金融、食料安全保障に関わる取引に充てられる。ITFCは2008年の活動開始以来、OIC加盟国へ920億ドル超を供給したと説明しており、2025年の承諾額は93億5,000万ドル、実行額は75億3,000万ドルだった。

2026年のバクー年次総会

2026年のIsDBグループ年次総会は、アゼルバイジャンのバクーで開かれ、6月19日に閉幕した。主題は「持続可能な繁栄のための地域統合」で、4日間に32の高級会合と知識共有の催しが行われ、78か国から4,400人超(うち機関の長は46人)が参加したとアルジャーセル総裁は述べている。

総会に合わせて、10の加盟国、複数の地域機関、民間企業との間で67件・総額60億ドルの協定が署名された。またIsDB本体が9か国の9件の事業に28億ドルの新規融資を承認した。開催国アゼルバイジャンとの間では、カラバフ灌漑用水路の再建事業に4億3,600万ドルの融資協定と、包括的な国別関与枠組みの覚書が結ばれ、アブシェロン半島の33の集落に上下水道を整備する事業の覚書も署名された。

2025年の年次総会はアルジェで開かれ、そこで「IsDBグループ10年戦略枠組み(2026〜2035年)」が総務会に承認された。これを実行に移す5か年の企業戦略(2026〜2030年)が2026年から動き始めており、バクー総会はその初年度にあたる。同じ時期に、最も脆弱な加盟国向けの譲許的資金を扱う「IsDB譲許基金(ICF)」も設けられた。

数字の読み方

IsDBの数字を読むうえで最初に押さえるべきは会計単位である。財務諸表はイスラム・ディナール(ID)建てで、1IDは国際通貨基金の特別引出権(SDR)1単位に等しい。SDRは通貨バスケットなのでドルとの換算率は日々動き、同じ金額でも公表の時点によってドル表示が変わる。同行の一般向けページが掲げるドル建ての応募資本額と、監査済み財務諸表のID建ての応募資本額が一致しないのはこのためである。ドルの数字を比べるときは、いつの換算かを確かめる必要がある。

国別の「累計承諾額」はグループ全体の数字であり、IsDB本体の融資だけではない。ITFCの貿易金融やICDの民間投資が含まれるため、貿易金融の比重が大きい国では金額が大きく出る。またICIECの「引受保険額」(business insured)は保険であって融資ではないので、承諾額に足し合わせてはいけない。カザフスタンの場合、グループ累計承諾額42億1,920万ドルとは別に、ICIECの新規引受コミットメント22億9,930万ドル、引受保険額84億7,830万ドルが公表されている。

件数はIsDBの資料のあいだで食い違う。ウズベキスタンは国別ページで249件、四半期資料の加盟国ファクトシートで165件である。同様にカザフスタンは91件と76件、タジキスタンは144件と91件、キルギスは92件と72件、トルクメニスタンは32件と27件、アゼルバイジャンは92件と86件となっている。金額はいずれも一致するので、規模を比べるときは金額を使うほうが確実である。

加盟日も資料によって異なる記載がある。カザフスタンは1995年11月30日と1996年5月16日、タジキスタンは1996年11月27日と1997年6月1日の二通りが公表されている。

国別ページに載る人口や1人あたりGDPなどの背景説明は更新が止まっていることがあり、2017年から2021年の数値が残っている。国別の統計を引くときは、この欄ではなく各国の統計機関の公表値を使うのが確実である。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。

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