解説 · 2026年9月時点
ウズベキスタン鉄道(O'zbekiston temir yo'llari、UTY)は、同国の国有鉄道会社である。1994年11月7日の大統領令により、旧ソ連の中央アジア鉄道のうちウズベキスタン領内にあった部門を基礎として設立された。インフラと車両を同じ会社の帳簿に持つ垂直統合型で、法人格を持つ6つの地域鉄道結節局を傘下に置く。
この会社を特徴づけるのは、中央アジアで唯一の高速鉄道を運行していること、そして域内で最も高い水準の電化率を持つことである。2025年の営業キロ4,724.2キロに対し、電化区間は2,405.3キロで、比率にすると50.9%になる。電力供給に余裕のある国の条件を生かした選択であり、輸入燃料への依存を減らす意味も持つ。
もう一つの前提が、ウズベキスタンが世界に2か国しかない「二重内陸国」の一つだという点である。隣接するすべての国もまた内陸国であるため、海に出るには最低でも2か国を通過しなければならない。国境をまたぐ鉄道の整備がこの国の対外経済の条件を直接左右するという構図が、同社の事業計画の底流にある。
| 正式名 | O'zbekiston temir yo'llari JSC(ウズベキスタン鉄道、UTY) |
|---|---|
| 設立 | 1994年11月7日の大統領令UP-982号により、旧中央アジア鉄道のウズベキスタン領内の部門を基礎として設立 |
| 法人形態の変遷 | 2001年に国有単一企業から国が100%を保有する公開型株式会社へ改組。2015年4月24日の大統領令UP-4720号を受け、同年4月30日の決定第59号で現在の社名の株式会社となった |
| 本社 | ウズベキスタン・タシケント |
| 株主 | ウズベキスタン国有 |
| 経営 | 理事会議長 Z.ナルズラエフ(2026年7月時点) |
| 事業 | 鉄道貨物・旅客輸送、鉄道インフラの保有と運営、車両の製造・修理。軌間1,520ミリ |
| 組織 | インフラと車両を同一の貸借対照表に持つ垂直統合型。法人格を持つ6つの地域鉄道結節局を傘下に置く |
| 営業キロ | 4,724.2キロ(2025年。2024年は4,838.9キロ) |
| 電化区間 | 2,405.3キロ(2025年)。営業キロに対する比率は50.9% |
| 鉄道網(別基準) | 6,950キロ(2026年、EBRD開示)。国内貨物輸送の最大40%を担うとされる |
| 貨物 | 発送7,602万5,000トン(2025年、2.8%増)、輸送1億577万2,000トン(同3.0%増) |
| 貨物回転量 | 279億2,700万トンキロ(2025年、1.7%増) |
| 旅客 | 発送1,013万4,000人(2025年、3.1%増)、輸送1,046万人(同4.5%増) |
| 旅客回転量 | 43億200万人キロ(2025年、5.6%増) |
| 高速鉄道 | アフラシャブ(タルゴ250)。最高速度は時速250キロ。2011年に運行開始 |
| 従業員 | 5万4,700人超(公式の会社概要。基準時点の記載はない) |
| 国際的な地位 | 1993年から鉄道協力機構(OSJD)の加盟事業者。国際鉄道連合(UIC)や国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)とも関係を持つ |
| CKU鉄道 | 中国国家鉄路集団、キルギス鉄道とともに事業会社を設立した3社の一つ。ウズベキスタンの拠出額は2億5,500万ドル |
沿革
1994年11月7日の大統領令UP-982号により、ウズベキスタン領内にあった鉄道の各部門と付属企業を統合して「ウズベキストン・テミル・ユラリ」が設立された。2001年、大統領令と閣僚会議決定に基づく鉄道再編の国家プログラムのもとで、国有単一企業から国が全株を保有する公開型株式会社へ改組された。このとき、インフラ、統一運行指令センター、機関車部門、輸送書類の処理と事故復旧の部門は民営化の対象外と定められ、貨物・旅客の運送と付随サービスは競争の下に置くという線引きがなされた。
2002年の再編では、コンテナ輸送のウズテミルユルコンテイネル、冷蔵輸送のユルレフトランス、旅客輸送のウズテミルユルユロフチ、貨車修理のウズテミルワゴン、タシケント車両製造修理工場といった株式会社が切り出された。2015年4月24日の大統領令UP-4720号と同月30日の決定第59号により、現在の社名の株式会社となっている。
独立後は新線の建設も進んだ。キズィルクム砂漠を抜けるナヴォイ〜ウチクドゥク〜スルタンウイズダグ〜ヌクス線、アムダリヤに架かる鉄道道路併用橋、そして山岳地帯を貫くタシュグザル〜ボイスン〜クムクルガン線が代表例である。ヤンギエル〜ジザク線、ヤンギエル〜ファルハド線も完成した。既存路線の側では、アジア開発銀行の借款でタシケント〜サマルカンド〜ブハラ間の軌道更新が行われ、ケレス〜ブハラ間には600キロを超える光ファイバー通信線が敷設された。
路線と電化
2025年の営業キロは4,724.2キロで、前年の4,838.9キロから2.4%減った。同社の統計はこの減少の理由を説明していない。一方で電化区間は2,404.8キロから2,405.3キロへわずかに伸びている。
電化の歴史は1971年に直流方式で始まった。その後、交流方式への転換と新規電化が進み、トゥキマチ〜アングレン区間の電化が完了した時点で電化延長は1,601キロに達したと同社の沿革は記している。現在の2,405.3キロはそこからさらに8割ほど伸びた水準にあたる。マロカンド〜カルシ、カルシ〜テルメズの電化と、新設の電化路線アングレン〜パプの建設が続いてきた。トゥキマチ〜アングレンの電化では、給電系統が時速160キロの運転を前提に設計され、運行費用が1.8分の1に下がったと同社は説明している。
路線延長の数字は出所によって異なる。同社の統計は営業キロ(エクスプルアタツィオン延長)として4,724.2キロを示すのに対し、欧州復興開発銀行(EBRD)は2026年の融資の発表で「同社が保有・運営する6,950キロの鉄道網」と記している。前者は営業線の延長、後者は側線などを含むより広い定義とみられ、単純に比べられない。どちらの数字を引くかで規模の印象が5割近く変わるため、出所を添える必要がある。
高速鉄道アフラシャブ
2011年、タシケントとサマルカンドを結ぶ高速列車「アフラシャブ」の運行が始まった。車両はスペインのタルゴ製のタルゴ250で、最高速度は時速250キロ、車体傾斜(チルト)機構により曲線通過速度を最大25%高められる。軌間1,520ミリの既存線に対応した設計であり、新しい高速新線を建設せずに所要時間を縮めるという考え方をとっている。
車両の導入は3段階に分かれる。最初の2編成(客車9両)は2009年に発注され2011年から営業運転に入った。2015年に11両編成の2本が追加され、2017年から走り始めた。2019年5月30日には、さらに2編成の追加発注が確定した。契約額は5,700万ユーロで、スペインの企業国際化基金(FIEM)が資金を供与し、2021年の営業運転開始を予定していた。この契約には既存の9両編成に増結する客車4両の製造も含まれ、最終的な陣容は11両編成6本となる計画である。
運行区間はタシケント〜サマルカンドを軸に、カルシ、ブハラ、ヒヴァへ広がった。中央アジアで高速列車を営業運転している事業者は同社だけであり、観光と国内移動の形を変えた事業として知られる。夏に摂氏40度、冬に氷点下25度を下回る気候条件に対応した仕様になっている。
近郊輸送でも車両の更新が進む。2026年6月17日のタシケント国際投資フォーラムで、近郊輸送を担う子会社シャハル・アトロフィダ・ヨロフチ・タシシュとチェコのシュコダ・トランスポーテーションが電車10編成の供給契約を結んだ。国内に保守の合弁会社を設ける計画も含まれている。
貨物輸送と数字の読み方
2025年の貨物は、発送ベースで7,602万5,000トン(前年比2.8%増)、輸送ベースで1億577万2,000トン(同3.0%増)だった。貨物回転量は279億2,700万トンキロで1.7%増である。
この二つの系列の違いは押さえておく必要がある。発送は同社の路線で積み込まれた貨物、輸送は同社の路線を通った貨物であり、後者には他国から入ってきた貨物と通過貨物が含まれる。2025年の差は約3,000万トンで、輸送量の3割近くが自国内で発送されたものではないことになる。「ウズベキスタン鉄道の貨物量」として引用される数字は、どちらの系列かを確かめないと比較にならない。
同社が国内の貨物輸送に占める位置については、EBRDが2026年の融資の発表で「国内貨物の最大40%を担う」としている。会社の沿革のページには「年間の貨物回転量は全輸送手段の約90%を占める」という記述も残るが、これは回転量(トンキロ)ベースの記述であり、輸送量(トン)ベースの比率とは別の指標である。
旅客も伸びている。2025年の輸送人員は1,046万人で4.5%増、旅客回転量は43億200万人キロで5.6%増えた。回転量の伸びが人員の伸びを上回っており、長距離の利用が増えたことを示す。
国際接続
東側では、建設中の中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道(CKU鉄道)に事業会社の設立株主として参加する。事業会社は中国国家鉄路集団、キルギス鉄道、同社の3社がキルギス法に基づいて2024年9月に設立した有限会社で、キルギス領内の区間の資金調達、設計、建設、運営、保守を担う。ウズベキスタン側の拠出額は2億5,500万ドルで、復興開発基金が同社へ段階的に融資する形をとる(期間15年、据置7年、年利5%)。開通すれば同国東部のアンディジャン方面から中国へ抜ける直行路ができる。
南側では、アフガニスタン方面の鉄道整備に長く関わってきた。2003年6月、アフガニスタン、イラン、ウズベキスタンの3大統領の間で、トランス・アフガン輸送回廊の創設に関する合意が結ばれた。同社はアフガニスタン政府との契約に基づき、国境の駅ハイラトンからマザリシャリフまでの単線鉄道を建設した。2010年1月22日に着工し、同年11月4日に発注者へ引き渡している。路線延長は75キロ、構内線を含む軌道の敷設延長は105キロ(うち構内線20キロ)で、5つの駅と34の構造物が建設された。砂の吹き寄せを防ぐ設備も設けられている。同社にとってはウズベキスタン国外で実施した最初の事業だった。
構想としては、ハイラトンからマザリシャリフを経てヘラート、カンダハルへ至る路線と、マザリシャリフからカブールを経てパキスタンへ抜ける路線が語られてきた。実現すればアフガニスタンが、北のウズベキスタン・トルクメニスタン・カザフスタン・ロシア、東のパキスタン・インド、西のイランという三方向とつながることになる。ただし着工済みなのはハイラトン〜マザリシャリフ間だけである。
西側では、カスピ海を渡る中間回廊(カスピ海横断輸送ルート)に接続する。EBRDは2026年の融資について、この回廊沿いの貨物と旅客の流れを円滑にする狙いを挙げている。
近代化と資金調達
2026年6月、EBRDは同社に対して最大3,840万ユーロを融資すると発表した。資金は列車の運行と輸送を管理するソフトウェアの導入と、国際的な基準に沿ったサイバーセキュリティ体制の整備に充てられる。配車、運行計画、運行制御といった従来は人手に頼っていた業務をシステムに置き換える内容で、EBRDはこれをウズベキスタンにおける同種の公共部門案件として初のものと位置づけている。
車両の分野では、自社の工場で客車と貨車を製造してきた実績がある。空調付きのコンパートメント客車、石油製品用のタンク車、無蓋車などを量産し、独立国家共同体(CIS)各国の路線を走る車両の規格と品質管理の認証を取得している。旅客用電気機関車の更新事業では非同期電動機を備えた15両を導入し、運転速度を時速100キロから160キロへ引き上げたと同社は説明する。
国際金融機関との関係も長い。同社は世界銀行、アジア開発銀行、国際協力機構(JICA)、EBRD、ドイツのKfW、中国輸出入銀行を資金の出し手として挙げている。
論点
第一に、公表統計の薄さである。同社が公表する年次の統計は、貨物と旅客の量、営業キロ、電化延長といった項目に限られ、従業員数の欄は2025年分が空欄のままである。会社概要には5万4,700人超という数字が載るが基準時点の記載がなく、収益や利益の系列は公表されていない。財務の姿を外から追うのは難しい。
第二に、路線の性格の変化である。CKU鉄道が開通すれば中国からの直行路ができ、トランス・アフガン方向が動けば南アジアへの出口ができる。いずれも二重内陸国という条件を和らげる事業だが、前者は工期6年の山岳路線、後者は着工に至っていない構想であり、時間軸が大きく異なる。
第三に、電化と車両更新の資金である。電化率は域内で最も高い水準にあるが、残る半分の路線の電化、車両の置き換え、運行管理の電子化はいずれも資本を要する。国際金融機関の融資と国外メーカーとの契約が近年の発表の中心を占めるのは、この構図の反映である。
参考資料
- O'zbekiston temir yo'llari(公式サイト) ↗
- 統計データ — ウズベキスタン鉄道(公式。2025年の輸送実績、営業キロ、電化延長) ↗
- 会社概要 — ウズベキスタン鉄道(公式。設立年と従業員数の記載) ↗
- 沿革 — ウズベキスタン鉄道(公式。設立の大統領令、2002年の再編、ハイラトン〜マザリシャリフ線、電化の経過) ↗
- 国際活動 — ウズベキスタン鉄道(公式。加盟機関と協力先) ↗
- EBRD supports digital transformation of Uzbekistan Railways — EBRD(2026年6月) ↗
- Uzbekistan acquires two additional Talgo 250 trains for its high-speed fleet — Talgo(2019年5月30日。編成数と導入年、最高速度) ↗
- シュコダ・トランスポーテーションと電車10編成の供給契約 — ウズベキスタン鉄道(公式ニュース、2026年6月17日) ↗
- CKU鉄道の事業会社の第1回参加者総会(設立3社とBOT方式) — キルギス鉄道(2024年10月11日) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。