資料写真:キルギスの山並みと湖/Igor Tverdovskiy(Unsplash License)出典

運輸・インフラ

中国、キルギスに240時間(10日間)の通過ビザ免除。対象は57か国に拡大、中央アジアからは初

中国国家移民管理局が8月20日、キルギスとベトナムを240時間の通過ビザ免除と海南省の30日間入境ビザ免除の対象に加えた。通過免除の対象は57か国、海南は61か国に。中央アジアの国が通過免除の対象になるのは初めてで、条件は第三国行きの連続航空券である。

この記事が扱う国。国境は Natural Earth(パブリックドメイン)、点は各国の首都の位置。

中国国家移民管理局(NIA)は8月20日付の公告(2026年第4号)で、キルギスとベトナムの国民を240時間(10日間)の通過ビザ免除と、海南省の30日間入境ビザ免除の対象に加えた。適用は同日から。これで240時間の通過ビザ免除の対象国は57か国、海南省の30日間免除は61か国になった。

通過ビザ免除の条件は、本人の普通旅券と、日付と行程が確定した第三国・地域行きの連続航空券を持つことである。この条件を満たせば、北京・上海を含む24の省・自治区・直轄市にある65の対外開放口岸のいずれからもビザなしで入国でき、定められた区域内で240時間まで滞在できる。滞在中に認められるのは観光・商用・訪問・親族訪問といった短期の活動で、就労・留学・取材など事前の承認が要る活動には従来どおり事前のビザが必要になる。

制度の性格は「通過」である点にある。対象はあくまで中国を経由して第三国・地域へ向かう旅客であり、ビシュケクから中国へ飛んでそのままキルギスへ戻る往復の旅程は、この免除では通らない。中国そのものを目的地とする渡航には引き続きビザが要る。

海南省の免除は別枠で、条件が異なる。海南省の対外開放口岸から入り、海南省の行政区域内にとどまる限り30日まで滞在でき、第三国へ向かうという要件はない。対象の事由は観光・商用・訪問・親族訪問に加えて医療・展示会・スポーツ競技までを含み、就労と就学は除かれる。

項目240時間の通過ビザ免除海南省の30日間入境ビザ免除
対象国57か国61か国
滞在の上限240時間(10日間)30日
第三国行きの連続航空券必要不要
入国できる口岸24省・65の対外開放口岸海南省のすべての対外開放口岸
移動できる範囲対象24省の認められた区域海南省の行政区域

今回の指定は単発の措置ではない。中国は2024年12月17日、それまで72時間と144時間に分かれていた通過ビザ免除の滞在時間を一律240時間に延ばし、適用される口岸を39から60へ、適用される省を19から24へ広げた。この時点の対象は54か国だった。2025年6月12日にインドネシアが加わって55か国となり、今回の2か国で57か国になっている。口岸も現在は65に増えた。制度の枠を先に広げ、そのうえで対象国を足していく段階に入っている。

対象国の顔ぶれの偏りも見ておきたい。インドネシアが加わった2025年6月時点の内訳は欧州40か国、米州6か国、大洋州2か国、アジア7か国(韓国、日本、シンガポール、ブルネイ、アラブ首長国連邦、カタール、インドネシア)で、中央アジアの国は一つも入っていなかった。今回ベトナムとキルギスが加わってアジア枠は9か国になり、キルギスは中央アジアで初めてこの制度の対象になった。

一方的なビザ免除とは区別が要る。中国外務省の公表をもとにNIAが掲げる一方的ビザ免除の対象国は、2026年2月17日時点で欧州35か国、アジア7か国、米州6か国、大洋州2か国の計50か国で、こちらにも中央アジアの国は入っていない。キルギスが得たのは中国を目的地とする一方的な免除ではなく、通過と海南省という限られた枠での免除である。ただし海南省の61か国の名簿にはカザフスタンが以前から載っており、今回キルギスが並んだ形になる。

NIAは英語版の発表で、この2か国への拡大を高水準の対外開放を着実に進め、周辺国との運命共同体の構築を促す実務的な措置と説明し、観光・商用・訪問・投資をより便利で効率的にするとしている。ベトナムとキルギスはいずれも中国と国境を接する隣国である。

制度が実際に使われていることは出入国の実績に表れている。NIAが7月10日に公表した2026年上半期の統計では、出入国者は延べ3億6,900万人で前年同期比10.8%増と過去最高になった。うち外国人は4,591万人で20.6%増、外国人の入国は2,291万人で20.4%増。そのうち1,782万人がビザ免除での入国で、外国人の入国全体の77.7%を占め、前年同期比では30.6%増えている。中国に来る外国人の4人に3人以上が、すでに何らかのビザ免除の枠を使って入っている計算になる。

キルギスと中国の間では、物と人の動線が同時に太くなっている。中国とウズベキスタンをキルギスの山中で結ぶ中国・キルギス・ウズベキスタン鉄道は工事が進み、中国国境のトルガルト検問所でも検査施設と貨物エリアの拡張が続いている。今回の措置が動かすのは貨物ではなく人の側で、商用の渡航にかかる手間と費用を下げる。240時間の枠で入った旅客は対象24省の認められた区域内であれば省をまたいで移動できるため、10日間という長さは複数の都市を回る商談や買い付けには足りる。

もっとも、制度の対象になることと実際に使われることの間には距離がある。連続航空券が条件である以上、キルギスから中国を経由して第三国へ抜ける航空路線がどれだけ設定されるかが、この免除の効き方を決める。海南省の30日間免除も、海南までどう行くかという問題を伴う。開いたのは制度であって、路線ではない。

この記事の日付 2026年8月20日 は、出典が発表された日です。

本サイトでの初出 2026年8月22日 22:33

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