韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は9月16日、ソウルで第1回「中央アジア・韓国」首脳会議を主宰した。カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5か国の大統領が出席した。韓国大統領室によると、韓国政府が中央アジア諸国と開く初めての多国間の首脳会議である。会議ではソウル宣言が採択され、韓国と5か国の間で産業・供給網の協力に関する覚書(MOU)が結ばれ、産業相の協議体が新設された。
キルギス大統領府が掲載した宣言の本文によると、首脳会議は今後2年に1度開く。その間は外相級の「韓国・中央アジア協力フォーラム」を開き、前回の首脳会議の成果の実施を点検して次回の議題を準備する。このフォーラムは2007年に外務次官級で発足し、2019年に外相級へ引き上げられていた。次回の議長国は外交協議を通じてコンセンサスで決め、得られなければ英語の国名のアルファベット順による輪番で決めることもできる。宣言は、カザフスタンが2028年にアスタナで第2回を開く用意を示し、他の国が支持したと記している。李大統領も、2年後にカザフスタンで再び会うことを期待すると述べた。
韓国大統領室によると、双方は産業・供給網の覚書を結んで、産業政策、製造業、インフラ、重要鉱物・エネルギー、デジタル転換の分野で協力を深めることにした。AI・科学技術と、気候・エネルギー・環境の2つのイニシアチブも採択された。宣言で首脳らは、中央アジア各国の政府に韓国企業の支援窓口(コリアデスク)を設けることと、税関分野の協力・相互支援の協定を結ぶことが、貿易手続きの簡素化や投資の促進につながると認めた。重要鉱物とエネルギーの具体的な協力は「関心を表明した」という書き方で、金額や貿易額の目標は宣言に無い。
貿易の規模は首脳の演説に出てくる。カザフスタンのトカエフ大統領は、中央アジアと韓国の貿易が昨年初めて100億ドルを超えたと述べた。ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、産業・通商相の会合の場を設ける構想を支持し、こうした措置によって域内諸国と韓国の貿易を2030年までに200億ドルにする目標に届くと述べた。2人の数字が同じ集計に拠るかは、発表に書かれていない。
首脳会議に先立ち、李大統領は14〜16日に5か国の大統領とそれぞれ会談した。成果は次のとおりである(文書の件数と成果は韓国大統領室の発表。件数の括弧内は各国の大統領府の発表、カザフスタンの商業上の合意はカザフスタン側の発表)。
| 国 | 会談日(形式) | 協定・MOUの件数 | 主な成果 |
|---|---|---|---|
| ウズベキスタン | 9月14日(国賓) | 13件 | ウズベキスタン政府内に韓国企業の窓口「コリアデスク」を開設、両国の経済人協議会が発足 |
| トルクメニスタン | 9月15日(国賓) | 13件 | 投資保障協定に署名(締結を目指してから16年)、税関の相互支援協定、化学産業・プラントとインフラの協力MOU |
| カザフスタン | 9月15日(国賓) | 13件(カザフスタン大統領府の一覧は12件) | 関係を17年ぶりに「未来志向の包括的戦略パートナーシップ」へ格上げ、原油協力の基本約定、希少金属技術協力センターの設立などを通じた供給網の協力の拡大で一致。このほかトカエフ大統領が、訪問中に約80件・約190億ドルの商業上の合意が署名されたと発言(韓国産業通商部は企業・機関の間の協力覚書84件の締結を発表したが、金額は示していない) |
| タジキスタン | 9月16日(公式訪問) | 17件(タジキスタン大統領府の発表は15件) | 初めて「包括的パートナーシップ」を樹立、鉄道分野のMOU、コリアデスクを設けることで一致 |
| キルギス | 9月16日(公式訪問) | 18件 | ビシケクにKOTRA貿易館を開き、大統領直属の国家投資庁にコリアデスクを置くことで一致、ハラル認証の相互承認 |
ウズベキスタンとの会談では、ソウルでの両国のビジネス会合でも協議された重要鉱物について、両首脳が「韓国・ウズベキスタン希少金属センター」を基盤に、探査・開発・加工など全段階で供給網の協力を強めることで一致した。
トカエフ大統領は16日のビジネス・サミットで、訪問中にカザフスタンと韓国の間で約80件・総額約190億ドルの商業上の合意が署名されたと述べ、「単なる意向表明や空文ではなく、具体的な計画だ」とした。同じ数字は15日に国家福祉基金サムルク・カズナが発表している。同基金によると、カザフスタン・韓国ビジネス評議会の枠内で約80件・約190億ドルの合意が署名され、基金グループが署名した合意は総額約110億ドルに達した。110億ドルが190億ドルに含まれるかは、発表に書かれていない。同基金が9月9日に大統領へ報告した2027〜29年の38事業・21兆テンゲの計画との関係は、発表に書かれていない。韓国産業通商部は、カラチャガナクのガス処理プラントの建設やサムスンE&Aのパヴロダル製油所の拡張への協力を含め、両国の企業・機関の間で84件の協力覚書が結ばれたと発表したが、金額は示しておらず、約80件との関係も書かれていない。
サムルク・カズナが挙げた文書には、パヴロダル石油化学工場(製油所)を年900万トンの規模に拡張する事業についてのカズムナイガスとサムスンE&Aの協定、トルキスタン州の出力1,000MWのコンバインドサイクル発電所の建設事業でカザフスタン開発銀行が融資枠を開く協定(斗山エナビリティが参加)、韓国地質資源研究院(KIGAM)などとのリチウム鉱床での共同掘削を含む共同研究の枠組み協定、POSCOホールディングスとのレアアース処理の技術協力の覚書が並ぶ。文書ごとの金額は示されておらず、190億ドルが投資額なのか取引額なのかも、どの発表にも書かれていない。
同基金が最初に挙げたのは、カラチャガナク油ガス田の原料ガスを年50億立方メートル処理する工場の建設事業について、QazaqGazと現代エンジニアリングが結んだ合意である。現代エンジニアリングによると、同社は5月にQazaqGazから落札通知書を受け取っており、15日に結んだのは事業の実施に関する合意書で、今後の本契約(EPC)の交渉に弾みがつくと見込んでいる。トカエフ大統領も15日のカザフスタン・韓国ビジネス円卓会議で、同社がすでにこの工場の建設で中核的な役割を担っていると述べていた。
政府間の文書の件数は、韓国と相手国の発表で食い違う。タジキスタンとの会談では、韓国大統領室が17件、タジキスタン大統領府が15件の協力文書を挙げている。カザフスタンとの会談では、韓国大統領室は会談後に13件のMOUが結ばれたと発表し、カザフスタン大統領府は交換した政府間・省庁間の文書として12件を列挙した。大統領府の一覧は、石油分野の協力の枠組み協定、原子力の平和利用の覚書2件、雇用許可制(EPS)による労働者の送り出しと受け入れの覚書などで、金額は記されていない。EPSは、韓国がカザフスタンを送り出し国に加えた際に、両国がまず覚書に署名する必要があるとされていた。韓国大統領室は、原油協力の基本約定を、4月に韓国の大統領特使団がカザフスタンを訪れた際に決めた原油1,800万バレルの導入推進の後続措置と位置づけている。
韓国財政経済部によると、同じ15日の円卓会議では、韓国輸出入銀行がフォルテバンクに7,000万ドルの転貸融資の枠を設けるMOUも結ばれた。韓国製品を輸入する現地企業に輸入代金や運転資金を貸す仕組みである。
宣言には会合の枠組みのほか、韓国企業の交通インフラ事業への参加を後押しすることなどの合意も並ぶが、金額は無い。カザフスタン側が示した約190億ドルは、発表に案件ごとの金額が無く、サムルク・カズナが最初に挙げた文書は、5月に落札通知書が出ていた工場の建設事業の実施に関する合意書だった。
