重要鉱物(クリティカル・ミネラル)は、経済や安全保障にとって重要でありながら供給が途絶えやすい鉱物を指す。近年この語が頻出するようになったのは、電池、磁石、半導体、防衛装備に使われる金属の供給が特定の国に集中していることが各国の政策課題になったためである。
ただし「重要鉱物」に世界共通の定義はない。何を重要とみなすかは、その国の産業構成、輸入依存の度合い、政策上の優先順位によって変わる。米国は2020年エネルギー法にもとづく60鉱種の一覧を持ち、欧州連合は34の重要原材料と、それとは別に指定される戦略的原材料の二層構造を採る。ある国で重要鉱物とされる金属が、別の国の一覧には入っていないことは普通に起きる。
中央アジア・コーカサスがこの文脈で注目されるのは、二つの理由による。ひとつは、中国以外の供給源を確保したい国々にとって、この地域が地理的にも政治的にも新しい選択肢だからである。もうひとつは、ソ連時代に広域の地質調査が行われながら、独立後の30年間は探査投資が細り、未開発の鉱床が残っているとみられているためである。
もっとも、実際に世界規模の生産があるのは限られた鉱種である。タジキスタンのアンチモンは世界生産の2割を占め、カザフスタンはタングステンの生産を2025年に始めた。一方、希土類とリチウムについては、域内のどの国も米地質調査所の生産・埋蔵量の表に載っていない。探査と計画の段階にあるという意味である。
| 共通の定義 | ない。国と地域ごとに根拠法と選定基準が異なり、一覧の内容も更新の頻度も違う |
|---|---|
| 米国の根拠法 | 2020年エネルギー法。重要鉱物の定義を定め、内務省が米地質調査所を通じて少なくとも3年ごとに一覧を更新することを義務づけた |
| 米国の一覧(2025年版) | 60鉱種。2025年11月7日に官報で確定。2022年版は50鉱種で、ホウ素、銅、鉛、原料炭、リン酸塩、カリ、レニウム、シリコン、銀、ウランが加わった |
| 欧州連合の一覧 | 2023年の第5次一覧で34の重要原材料。2011年14、2014年20、2017年27、2020年30と改定のたびに増えている |
| 欧州連合の戦略的原材料 | 重要原材料とは別に、CRM法(規則2024/1252)が戦略的原材料を指定する。銅とニッケルは重要原材料の基準は満たさないが、戦略的原材料として一覧に含まれる |
| CRM法の2030年目標 | 域内消費に対して採掘10%以上、処理40%以上、リサイクル25%以上を域内で賄い、単一の第三国への依存を65%以下に抑える |
| CRM法の許認可期限 | 戦略事業には採掘27か月、処理・リサイクル15か月の許認可期限が設定される |
| 欧州連合の需要見通し | 希土類の域内需要は2030年に現在の6倍、2050年に7倍。リチウムは2030年に12倍、2050年に21倍(欧州委員会) |
| カザフスタンの制度 | 鉱種の一覧ではなく「戦略的地下資源区画」を政令で指定する方式。2018年6月28日の政令第389号は2026年4月17日の政令第283号で差し替えられた |
| カザフスタンの探査の対象 | 金、銅、多金属、希土類元素、リチウム、タングステン、モリブデンなど。2026年に5万分の1の詳細地質調査20件、対象面積10万平方キロメートル(カザフスタン政府、2026年9月2日) |
| カザフスタンの地質調査の進捗 | 20万分の1の調査済み面積は約204万平方キロメートル。2026年に220万平方キロメートルへ拡大する計画(同) |
| カザフスタンの新規鉱床 | 2024年に35件、2025年に19件を国家登録。うち固体鉱物は40件。国家登録の総数は約1万件(同) |
| カザフスタンの希土類 | 11区画で調査を完了。最有望はカラガンダ州のクイレクティコル区画で、ランタン、セリウム、ネオジム、イットリウムの高い予測評価。予測資源量の合計は93万5,400トン。別にイルギズ地区でC2区分の埋蔵量79万5,800トン(同) |
| カザフスタンの希土類の既存埋蔵量 | 登録埋蔵量の70%はマンギスタウ州のウラン鉱床(メロヴォエ、トマク、タイボガル、タスムルン)に賦存する複合鉱。残りはコスタナイ州のアクブラク鉱床とクンドゥバイ鉱床(地質分野発展構想、政令第1127号、2022年12月30日) |
| カザフスタンの地質予算 | 2024〜2026年の国家予算による地質調査は624億テンゲ。2024年66億、2025年79億、2026年479億テンゲ(カザフスタン政府、2026年9月2日) |
| カザフスタンの探査許可 | 「先願」方式。初期の探査期間は6年で、当初10区画を超える場合は期間終了時に40%以上の区画を返還する義務がある(地質分野発展構想) |
| ウズベキスタンの資源 | 32種の重要鉱物が確認されている(ウズベキスタン大統領府、2024年4月29日) |
| ウズベキスタンの体制 | 2024年4月29日の会議を受けて技術金属コンビナートを株式会社として設立。科学技術研究と地質探査を対象に34件・4,000万ドルの事業を策定(同、2024年7月9日) |
| 希土類の世界生産(2025年推計) | 39万トン(酸化物換算)。中国27万トン、米国5万1,000トン、オーストラリア2万9,000トン、ミャンマー2万2,000トン。埋蔵量は世界7,500万トン超のうち中国4,400万トン(米地質調査所、2026年) |
| アンチモンの世界生産(2025年推計) | 11万トン。中国4万トン、ロシア3万2,000トン、タジキスタン2万2,000トン、ボリビア5,000トン、ミャンマー4,500トン、カザフスタン800トン、キルギス700トン(同) |
| アンチモンの埋蔵量 | 世界200万トン超。中国83万トン、ロシア35万トン、ボリビア31万トン、キルギス26万トン、タジキスタン6万トン(同。カザフスタンは非公表) |
| リチウム | カザフスタンの測定・指示資源量は4万5,000トンで、同資料が国別に挙げるなかで最小。鉱山生産の実績はない(同) |
| 中国の輸出管理 | 2025年4月にサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの合金・化合物・金属・酸化物を対象に追加。10月にユウロピウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムへ拡大し、11月に10月分を1年間停止(同) |
| 欧州連合との枠組み | カザフスタンとは2022年11月7日に原材料・電池・再生可能水素の戦略的パートナーシップの覚書、ウズベキスタンとは2024年4月5日に重要原材料の覚書を署名 |
「重要鉱物」に共通の定義はない
重要鉱物という語は、便宜的な政策上の区分であって、地質学や化学の分類ではない。どの国も同じ二つの物差しを使う点は共通している。ひとつは供給が途絶えるリスク(生産国の集中、地政学的な条件、代替の難しさ)、もうひとつはその国の経済にとっての重要度である。しかしこの二つをどう測り、どこに線を引くかは国によって違う。
一覧が固定されないことも共通している。米国の2025年版一覧は「恒久的な一覧ではなく、供給・需要・生産の集中に関する現在のデータおよび政策上の優先順位を反映して、少なくとも半年に一度は更新される動的なもの」と自ら明記している。欧州連合は少なくとも3年ごとの更新を約束し、実際に2011年の14品目から2023年の34品目まで、改定のたびに範囲が広がった。
結果として、同じ金属について国ごとに扱いが違う。ウランは米国の2025年版一覧に加わったが、欧州連合の重要原材料の一覧にはない。原料炭とリン酸塩は米国が加えた一方、これらの選定には他省庁の勧告が働いている。銅は米国が2025年に加え、欧州連合では重要原材料の基準を満たさないものの戦略的原材料として一覧に入れられた。
読み手にとって実務上の意味は明確である。ある鉱物が「重要鉱物である」という記述を見たときは、どの国のどの一覧を指しているのかを確かめる必要がある。補助金、許認可の優遇、輸出管理のいずれも、根拠となる一覧が違えば適用の範囲も違う。
米国と欧州連合の枠組み
米国の一覧は2020年エネルギー法にもとづく。同法は重要鉱物の定義を定め、内務長官が米地質調査所を通じて少なくとも3年ごとに一覧を更新すること、草案と最終版を官報に掲載し公衆の意見と省庁間の審査を経ることを義務づけた。2025年8月26日に54鉱種の草案が示され、11月7日に60鉱種の最終版が確定した。2022年版の50鉱種と比べ、ホウ素、銅、鉛、原料炭、リン酸塩、カリ、レニウム、シリコン、銀、ウランの10鉱種が加わった。
欧州連合の枠組みは重要原材料法(CRM法、規則2024/1252)である。2023年の第5次一覧で34の重要原材料が示され、法はそれとは別に戦略的原材料を指定する。戦略的原材料は、脱炭素、デジタル、防衛、航空宇宙に用いる戦略技術にとってとくに重要な材料と定義される。
CRM法の中心は数値目標である。2030年までに、戦略的原材料について域内消費の10%以上を採掘、40%以上を処理、25%以上をリサイクルで賄い、単一の第三国からの供給が域内消費の65%を超えないようにする。この最後の項目が、供給元の分散を求める根拠であり、中央アジアとの関係の背景になっている。
手続きの面では、戦略事業に指定されると資金へのアクセス支援と許認可期限の短縮を受けられる。期限は採掘の許可が27か月、処理とリサイクルの許可が15か月である。加盟国は地質資源の探査に関する国内プログラムを策定する義務も負う。
域内との具体的な接点は覚書の形をとる。欧州連合は2022年11月7日にカザフスタンと原材料・電池・再生可能水素の戦略的パートナーシップの覚書を、2024年4月5日にウズベキスタンと重要原材料の覚書を署名した。前者は署名から6か月以内に具体的な共同行動を定めた行程表を作ることを約束し、後者も署名後に実施行程表を作る形をとる。いずれも覚書であって条約ではなく、法的な引き渡し義務を生じるものではない。
中国の集中と輸出管理
重要鉱物の議論が政策になった直接の理由は、生産と加工の集中である。希土類では、2025年の世界の鉱山生産39万トン(酸化物換算)のうち中国が27万トンを占め、およそ7割にあたる。埋蔵量でも世界7,500万トン超のうち中国が4,400万トンで6割近い。米国の希土類化合物・金属の輸入元は2021年から2024年の平均で中国が71%を占めた。
2025年には輸出管理が相次いだ。米地質調査所の整理によれば、中国は2025年4月に希土類元素の輸出管理を強化し、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの合金・化合物・金属・酸化物を対象に加えた。10月にはユウロピウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムへ拡大し、11月にその10月分の管理を1年間停止した。4月の管理は継続しており、選ばれた輸出者には一般許可が発給され始めた。
同様の措置はタングステンでも2025年2月に導入されており、対象は品目と製造技術に及ぶ。禁輸ではなく許可制だが、供給の予見可能性が下がったことで買い手は調達先の分散を急いだ。
中央アジアへの関心が強まった直接の背景はここにある。ただし、鉱石を掘る段階と、精製・分離して使える形にする段階は別である。希土類の分離精製能力は中国に大きく偏っており、域内で鉱石が採れるようになっても、加工先が確保されなければ供給網の分散にはつながらない。この点は各国の政策文書でも認識されており、カザフスタンが個別の契約に国内加工の条件を組み込んでいるのは同じ問題への対処である。
カザフスタン — 鉱種ではなく区画を指定する
カザフスタンには、米国や欧州連合のような「重要鉱物の一覧」に相当する法令上の区分がない。かわりに、政令で「戦略的地下資源区画」を指定する方式をとる。2018年6月28日の政令第389号がその一覧を定め、2026年4月17日の政令第283号で差し替えられた。指定されると、権益の譲渡に国の優先権がかかるなど、通常の区画と異なる規律が適用される。
政策文書のレベルでは重要鉱物という考え方が使われている。2022年12月30日の政令第1127号で承認された地質分野発展構想は、世界の鉱物市場の傾向として、非鉄・貴金属に加えて希少金属・希土類金属・リチウムなど、炭素中立への移行に重要な金属への需要が伸びていること、資源をめぐる国どうしの結びつきと投資競争が強まっていることを挙げている。
同構想は自国の状況も率直に記している。ダイヤモンド、錫、タングステン、タンタル、ニオブ、ニッケル、ホウ素、マグネサイト、マグネシウム塩・カリウム塩の9種類は、これまで一度も開発されていない。多くの優先鉱種で、採掘によって減る埋蔵量が探査による増加を上回っている。鉄、マンガン、金、亜鉛で得られた工業カテゴリーの埋蔵量の増加は、主に既知の鉱床の再評価と追加調査によるものである。
希土類については、登録埋蔵量の70%がマンギスタウ州のウラン鉱床(メロヴォエ、トマク、タイボガル、タスムルン)にあり、ウランと希土類のほかにリン、バナジウム、硫黄を含む複合鉱である。希土類はイットリウム族とセリウム族が1対3の比率で含まれる。これらの鉱床は権利が設定されていない状態にある。残りの登録埋蔵量はコスタナイ州のアクブラク鉱床とクンドゥバイ鉱床に集まる。
探査は拡大している。2026年9月2日の政府の説明によれば、20万分の1の地質・地球物理調査の済んだ面積は約204万平方キロメートルで、2026年に220万平方キロメートルへ広げる。並行して5万分の1の詳細調査20件が始まり、対象面積は10万平方キロメートルである。対象は金、銅、多金属、希少・希土類金属、リチウム、タングステン、モリブデンで、航空物理探査、地球化学探査、衛星観測データが用いられる。国家予算による地質調査の資金は2024年66億テンゲ、2025年79億テンゲ、2026年479億テンゲで、3年で624億テンゲである。
希土類の探査では11区画で調査が終わり、最有望とされたのはカラガンダ州のクイレクティコル区画である。ランタン、セリウム、ネオジム、イットリウムの含有量について高い予測評価が得られた。各区画の予測資源量の合計は93万5,400トン、これとは別にイルギズ地区でC2区分の埋蔵量79万5,800トンが算定されている。ケンクドゥク、ルジャバヤ・ソプカ、ミロリュボフスキー、ボカイ、クネオイの各区画でも見込みが評価された。
ウズベキスタンと、実際に生産のある鉱種
ウズベキスタンでは2024年4月29日に大統領が重要鉱物を主題とする会議を開き、国内で32種の重要鉱物が確認されていること、電気自動車・再生可能エネルギー・電機産業の需要でモリブデン、テルル、セレン、黒鉛の価格が上がっていることが示された。欧州連合との重要原材料の合意が直前に成立したことも言及され、希土類金属について5億ドル規模の有望事業のプログラムを外国の専門家と投資家の参加で作ることが指示された。
これを受けて、技術金属を専門とする株式会社が設立され、科学技術研究と地質探査を対象に34件・4,000万ドルの事業が策定された(2024年7月9日の報告)。同国の鉱業地質省は2025年8月6日、中国の金鉱大手との覚書に署名し、貴金属と重要鉱物の有望区画の地質探査、鉱床の開発、高付加価値製品の生産、技術移転、人材育成、事業の資金供与で協力するとしている。
域内で実際に世界規模の生産がある重要鉱物としては、まずアンチモンが挙げられる。米地質調査所の2026年版によれば、2025年の世界の鉱山生産11万トンのうちタジキスタンが2万2,000トンで、中国(4万トン)、ロシア(3万2,000トン)に次ぐ第3位である。埋蔵量ではキルギスが26万トンで世界第4位、タジキスタンが6万トンとされる。アンチモンは難燃剤、鉛蓄電池の合金、半導体、弾薬に用いられ、代替が容易でない。
タングステンでは、カザフスタンの生産が2025年に推計2,400トンとして初めて計上された。同国では大型の鉱床が国内一貫加工を条件に開発される計画で、生産は2020年代末に始まる見通しである。モリブデンではカラガンダ州のコクテンコル鉱床と上部カイラクトゥイ鉱床、北カトパル鉱床、アバイ州のアイダルルイ鉱床が主要な対象とされる。
一方で、注目される二つの鉱種については域内の実績が乏しい。米地質調査所の希土類の生産・埋蔵量の表には、中央アジア・コーカサスのどの国も掲載されていない。リチウムでは、カザフスタンの測定・指示資源量が4万5,000トンとされ、同資料が国別に列挙するなかで最小である。鉱山生産の実績もない。域内のリチウム・希土類は、資源の存在が語られる段階と、統計に載る段階の間にある。
探査から生産までの時間
重要鉱物の供給を増やすうえで最大の制約は時間である。地質調査で有望な区画を絞り込み、掘削で鉱体を確認し、資源量を推定し、可能性調査で経済性を検討し、最終投資決定を経て建設に入る。この各段階に数年ずつかかる。
カザフスタンの制度は、この時間の長さを前提にしている。地下資源法典は探査許可に「先願」方式を採り、初期の探査期間を6年としたうえで、当初10区画を超える場合には期間の終了時に40%以上の区画を返還する義務を課す。これは投資家に区画を長期に抱え込ませない仕組みであり、逆に言えば6年をかけても結論が出ない案件が多いことを制度が織り込んでいる。
欧州連合が戦略事業に置いた許認可期限(採掘27か月、処理・リサイクル15か月)は、行政手続きに要する時間だけを指す。探査、可能性調査、資金調達、建設はこの外側にある。許認可の短縮だけでは供給は早まらない、という前提で設計されている。
カザフスタンのタングステン事業は、この工程の具体例になる。2023年4月に可能性調査が完了し、2026年7月に現地の準備作業が始まり、最終可能性調査は2027年末まで、本体工事は2028年開始、試運転は2029年からとされている。鉱床そのものはソ連時代から知られていたものであり、それでも生産開始まで数年を要する。
希土類の場合はさらに条件が加わる。掘って選鉱するだけでは製品にならず、元素ごとに分離する化学工程が要る。分離精製の設備は建設に時間がかかり、技術と操業の経験も要る。鉱石の埋蔵が確認されてから、市場に出せる酸化物や金属になるまでの距離は、他の金属より長い。
数字の読み方
資源量と埋蔵量を混同しない。地質的な確からしさの順に区分される「資源量」のうち、採掘計画と経済性の検討を経て回収できると確認された部分だけが「埋蔵量」である。同じ鉱床について二つの数字が並ぶのは、この区別によるもので、どちらかが誤りというわけではない。
さらに、この地域では二つの体系が併存する。国際的に用いられるJORC規準などのCRIRSCO系の分類と、旧ソ連から引き継いだA・B・C1・C2の区分である。カザフスタンの希土類について「予測資源量93万5,400トン」と「C2区分の埋蔵量79万5,800トン」という二つの数字が並ぶのは後者の体系によるもので、JORC規準の測定・指示・推定資源量とは対応しない。単純に足したり比べたりできない。
単位も確かめる。希土類は「酸化物換算(REO)」のトンで示されるのが通例だが、金属換算で書かれることもある。タングステンは三酸化タングステンのトンと金属含有量のトンでおよそ1.26倍の差がある。アンチモンやリチウムでも同様に、金属換算か化合物換算かで数字が変わる。
国別の順位は基準日と資料でずれる。米地質調査所の年次資料は前年の推計を含み、翌年の版で改訂されることがある。域内の生産量には推計値(e)が付いているものが多く、政府の公表統計が乏しい国ほど推計の幅が大きい。「世界第3位」といった順位は、資料と年次を添えて読むべき情報である。
事業の見通しは、可能性調査の段階では確定値ではない。年産何トンという数字は既存の調査にもとづく潜在能力であって、最終可能性調査と最終投資決定を経なければ確定しない。投資額と雇用の見込みについても同様である。
「重要鉱物の埋蔵がある」という表現と、「生産されている」という事実は別である。ウズベキスタンの32種、カザフスタンの探査対象一覧はいずれも前者に属する。統計に載る生産があるのはアンチモン、タングステン、ウランなど限られた鉱種であり、資源の存在から生産までの距離を踏まえて読む必要がある。
参考資料
- Final 2025 List of Critical Minerals(米内務省・米地質調査所、2025年11月7日。60鉱種の一覧、2020年エネルギー法にもとづく手続き、2022年版からの追加) ↗
- Critical Raw Materials Act(欧州委員会。CRM法の2030年目標、戦略的原材料、許認可期限、需要見通し) ↗
- Critical raw materials(欧州委員会。一覧の改定の経緯、2023年の34品目、銅とニッケルの扱い) ↗
- Mineral Commodity Summaries 2026: Rare Earths(米地質調査所、2026年。世界の生産と埋蔵量、中国の輸出管理の経緯、米国の輸入元) ↗
- Mineral Commodity Summaries 2026: Antimony(同。タジキスタン、キルギス、カザフスタンの生産と埋蔵量) ↗
- Mineral Commodity Summaries 2026: Lithium(同。カザフスタンの測定・指示資源量と探査段階の位置づけ) ↗
- 「Послание Президента: за два года в Казахстане открыто 54 новых месторождения」(カザフスタン政府、2026年9月2日。地質調査の面積と予算、新規鉱床、希土類の予測資源量と有望区画) ↗
- 「Об утверждении Концепции развития геологической отрасли Республики Казахстан на 2023 - 2027 годы」(カザフスタン政令 2022年12月30日 第1127号。希土類の賦存状況、未開発の9鉱種、探査許可の先願方式と区画返還の義務) ↗
- 「Об утверждении перечня стратегических участков недр」(カザフスタン政令 2018年6月28日 第389号。戦略的地下資源区画の指定と、2026年4月17日の政令第283号による差し替え) ↗
- 「Рассмотрены планы в области геологии и горно-металлургической промышленности」(ウズベキスタン大統領府、2024年4月29日。32種の重要鉱物、価格動向、希土類の5億ドル事業プログラムの指示) ↗
- 「Доложено о проводимой работе в сфере геологии」(同、2024年7月9日。技術金属コンビナートの設立と34件・4,000万ドルの事業) ↗
- 「Подписан Меморандум о взаимопонимании с компанией China National Gold Group」(ウズベキスタン鉱業地質省、2025年8月6日。重要鉱物の探査・開発・加工に関する覚書) ↗
- Strategic Partnership between the European Union and Kazakhstan on sustainable raw materials, batteries and renewable hydrogen value chains(欧州委員会、2022年11月8日。覚書の対象範囲と行程表) ↗
- EU establishes strategic partnership with Uzbekistan on critical raw materials(欧州対外行動庁、2024年4月5日。覚書の署名者と協力分野、既存のパートナーシップ一覧) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。