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月次計算指標(MCI)と域内の基準値とは

カザフスタンの月次計算指標(MCI)について、毎年の共和国予算法で決まる仕組み、2025年から2027年の値、MCIの倍数で書かれている税制・事業分類・投資優遇の主な閾値、生活最低限や最低賃金との違いを整理し、ウズベキスタンの基準計算額やアゼルバイジャンの生活最低限など域内の同種の基準値と並べて示す。

カザフスタンの法令を読むと、金額がテンゲではなく「月次計算指標(MCI)の何倍」と書かれている条文に頻繁にぶつかる。付加価値税の登録義務が生じる売上高、個人所得税の税率が変わる所得の水準、中小企業と大企業を分ける売上高、投資優遇の対象になる投資額、行政罰の額——いずれもこの倍数で定められている。

MCIは毎年の共和国予算法が定める基準額である。2026年は4,325テンゲ、2025年は3,932テンゲだった。条文の倍数は変わらなくても、MCIが上がればテンゲ建ての閾値は自動的に上がる。したがって、年をまたいで金額を比べるときは、その年のMCIで換算し直さなければならない。逆にいえば、閾値を一斉に動かしたいとき、政府は個々の法律に手を入れる必要がない。

同じ発想の基準額は域内の各国にある。ウズベキスタンには基準計算額があり、大統領令で改定される。アゼルバイジャンは生活最低限を毎年の法律で定め、社会給付の基準に使う。タジキスタンにも予算法で決まる計算指標がある。ジョージアとアルメニアは金額を直接書く方式が中心で、この種の基準額の存在感は薄い。

以下では、カザフスタンのMCIを中心に、決まり方、使われ方、そして似た名前の基準値との違いを整理する。

正式な呼び名月次計算指標(ロシア語表記を翻字すると mesyachnyi raschetnyi pokazatel。日本語では月額計算指標とも訳される)
決まり方予算法典第86条により、共和国予算法案の本文には、最低賃金、最低年金、月次計算指標、生活最低限、国家基礎年金の額を、社会経済発展予測で定めた値として盛り込むことが義務づけられている
2026年の値4,325テンゲ(2025年12月8日の法律第239-VIII号第7条、2026年1月1日から)
2025年の値3,932テンゲ(2024年12月4日の法律第141-VIII号第9条、2025年1月1日から)
2027年の値(案)4,693テンゲ。財務省が公開協議に付した2027〜2029年の共和国予算案(2026年8月31日の第3版)第8条による。成立した法律ではない
同時に決まる他の基準額(2026年)最低賃金8万5,000テンゲ、国家基礎年金の最低額3万5,596テンゲ、最低年金6万9,049テンゲ、生活最低限5万851テンゲ
同(2025年)最低賃金8万5,000テンゲ、国家基礎年金の最低額3万2,360テンゲ、最低年金6万2,771テンゲ、生活最低限4万6,228テンゲ
付加価値税の登録閾値暦年の売上高が1万MCIを超えたとき登録が義務になる(税法典第99条、第101条)。2026年は4,325万テンゲ、2025年は7,864万テンゲ(旧税法典の2万MCI)
個人所得税の累進の境目年間の課税所得8,500MCIまでが10%、超過分が15%(税法典第363条)。2026年は3,676万2,500テンゲ
配当に対する個人所得税の境目23万MCIまでが5%、超過分が15%。2026年は9億9,475万テンゲ
簡易申告に基づく特別税制の上限年60万MCI。2026年は25億9,500万テンゲ
自営業者向け特別税制の上限月300MCI。2026年は129万7,500テンゲ
小企業の定義平均従業員数100人以下かつ年平均所得30万MCI以下(企業家法典第24条第3項)。2026年は12億9,750万テンゲ
零細企業の定義平均従業員数15人以下または年平均所得3万MCI以下(同項)。2026年は1億2,975万テンゲ
大企業の定義平均従業員数250人超および/または年平均所得300万MCI超(同条第6項)。2026年は129億7,500万テンゲ
競争当局への企業結合の届出の閾値当事者の資産の合計または直近年度の販売額の合計が1,000万MCIを超える場合(同法典)。2026年は432億5,000万テンゲ
大規模投資家の定義200万MCI以上の投資を行う個人または法人(同法典)。2026年は86億5,000万テンゲ
デジタルマイニングの免許手数料第I種は2,000MCI。2026年は865万テンゲ
基準日の指定企業家法典の閾値は「当該会計年度の1月1日時点で効力を持つ、共和国予算法が定めた月次計算指標」と書かれている。年の途中でMCIが改定されても、その年の判定には使わない
ウズベキスタンの基準計算額44万スム(2026年6月23日の大統領令第PF-115号により2026年7月1日から。それ以前は41万2,000スム)。同じ大統領令で最低賃金を月136万スム、年金算定の基準額を月50万4,000スムと定めた
アゼルバイジャンの生活最低限2026年は国全体で300マナト、就業年齢の人口317マナト、年金受給者245マナト、子ども260マナト(2025年12月9日の法律、2026年1月1日施行)
タジキスタン毎年の予算法で「計算のための指標」が定められ、預金保険の補償限度などがその倍数で書かれている。2026年の値は公表資料から確認できなかった
キルギス罰金や手数料に用いる計算指標がある。2026年の値は公表資料から確認できなかった
ジョージアこの種の共通の基準額を持たず、税法典なども金額を直接ラリで書く

MCIはどう決まるか

MCIは、毎年の共和国予算法の条文で額が定められる。2026年については2025年12月8日の法律第239-VIII号第7条が、2026年1月1日から適用する五つの値を並べている。最低賃金8万5,000テンゲ、国家基礎年金の最低額3万5,596テンゲ、最低年金6万9,049テンゲ、月次計算指標4,325テンゲ、生活最低限5万851テンゲである。

この五つを予算法に書くこと自体が法律で義務づけられている。予算法典第86条は、共和国予算法案の本文に、歳入・歳出・赤字などの金額とともに、最低賃金、最低年金、月次計算指標、生活最低限、国家基礎年金の額を、社会経済発展予測で定めた値として盛り込むと定める。つまりMCIは独立の政策として決まるのではなく、予算編成の前提となるマクロの見通しから導かれ、予算の審議と一体で決まる。

直近の推移を見ると、2025年が3,932テンゲ、2026年が4,325テンゲで、増加率は10.0%である。財務省が公開協議に付した2027〜2029年の予算案(2026年8月31日の第3版)は、2027年のMCIを4,693テンゲとしている。2026年からの伸びは8.5%で、生活最低限、最低年金、国家基礎年金の最低額も同じ8.5%で引き上げる案になっている。一方で最低賃金は8万5,000テンゲに据え置かれており、この案が成立すれば4年続けて同額となる。予算案は成立した法律ではない。

何がMCIで書かれているか

MCIの倍数で書かれる閾値は、税制、事業の分類、投資優遇、行政罰の四つの領域に集中している。

税制では、まず付加価値税の登録義務が挙げられる。税法典は暦年の売上高が1万MCIを超えた事業者に登録を義務づけており、2026年のテンゲ建ての額は4,325万テンゲになる。2025年は旧税法典の2万MCI(3,932テンゲの2万倍)で7,864万テンゲだったから、倍率と基準額の両方が動いて閾値は45%下がったことになる。個人所得税では年間の課税所得8,500MCI(2026年で3,676万2,500テンゲ)が10%と15%の境目、配当は23万MCI(同9億9,475万テンゲ)が5%と15%の境目である。特別税制では、簡易申告に基づくものが年60万MCI(同25億9,500万テンゲ)、自営業者向けが月300MCI(同129万7,500テンゲ)を上限とする。

事業の分類では、企業家法典第24条が小・中・大の区分をMCIで定める。小企業は平均従業員数100人以下かつ年平均所得30万MCI以下、零細企業は15人以下または3万MCI以下、大企業は250人超および/または300万MCI超である。中企業は小と大のいずれにも当たらないものとして定義される。2026年のMCIで換算すると、小企業の上限が12億9,750万テンゲ、大企業の下限が129億7,500万テンゲになる。この区分は統計だけでなく、政府の支援策の対象範囲や検査の頻度にも使われる。

同じ法典は、競争当局への企業結合の届出が必要になる規模を1,000万MCI(2026年で432億5,000万テンゲ)、大規模投資家の定義を200万MCI以上の投資(同86億5,000万テンゲ)と定める。投資優遇の類型ごとの最低投資額も、20万MCI、100万MCI、200万MCI、500万MCIといった形で書かれている。

行政罰も同じ方式である。カザフスタンの行政違反法典の罰金はMCIの倍数で定められており、法令の改正なしに毎年の予算法だけで実質的な水準が動く。

生活最低限・最低賃金との違い

予算法が同時に定める五つの値は、役割が違う。

MCIは、税制と行政の閾値を書くための目盛りである。生計費との対応関係はなく、給付の水準を直接に決めるものでもない。2026年の4,325テンゲという額そのものに経済的な意味はほとんどなく、意味を持つのは倍数を掛けた後の金額である。

生活最低限は、基礎的な社会給付の算定に使われる。2026年は5万851テンゲで、2027年予算案の説明資料は国家基礎年金の最低額をこの70%に置くとしている。社会扶助の受給要件もここに連動する。

最低賃金は、雇用主が支払うべき賃金の下限である。2024年1月1日に7万テンゲから8万5,000テンゲへ引き上げられたあと、2025年、2026年と据え置かれている。2027年の予算案でも同額が置かれており、名目で据え置けば実質では目減りする。

国家基礎年金の最低額と最低年金は年金給付の下限で、2026年はそれぞれ3万5,596テンゲ、6万9,049テンゲである。

この五つのうち、税制の閾値に使われるのはMCIだけである。「最低賃金の何倍」で税制の閾値が書かれることはない。

域内の同種の基準値

ウズベキスタンには基準計算額がある。国家手数料、罰金、各種の控除、税制の閾値の算定に使われる点でMCIと役割が近い。2026年6月23日の大統領令第PF-115号は、2026年7月1日から基準計算額を44万スムとした。それ以前は41万2,000スムである。同じ大統領令は最低賃金を月136万スム、年金算定の基準額を月50万4,000スムと定めており、カザフスタンが予算法で一括して決めるのに対し、ウズベキスタンは大統領令で決める点が違う。改定の時期も年初とは限らず、7月1日からの適用となっている。

アゼルバイジャンは生活最低限を毎年の法律で定める。2025年12月9日の法律は、2026年の生活最低限を国全体で300マナト、就業年齢の人口について317マナト、年金受給者について245マナト、子どもについて260マナトと定め、2026年1月1日から施行するとした。社会人口学的な集団ごとに額が分かれる点が特徴で、社会給付の対象範囲の判定に使われる。

タジキスタンにも毎年の予算法で決まる計算のための指標があり、預金保険の補償限度などがこの倍数で書かれている。キルギスにも罰金や手数料に用いる計算指標がある。いずれも2026年の値を公表資料から確認できなかった。

ジョージアはこの種の共通の基準額を持たない。税法典の閾値は、付加価値税の登録義務が生じる10万ラリのように、金額を直接ラリで書く方式である。基準額を持たない制度では、閾値を動かすのに法律の改正が要る。

改定の時期と、実務への波及

カザフスタンのMCIは1月1日に改定される。予算法の条文が「2026年1月1日から次のとおり定める」という形をとるためで、年度の途中で動くことは通常ない。ウズベキスタンの基準計算額は年初とは限らず、2026年は7月1日から新しい額が適用された。改定の時期が違うと、同じ暦年でも前半と後半で閾値が変わる。

改定が実務に及ぶ経路は三つある。第一が税務の届出義務で、付加価値税の登録閾値が上がれば、前年に登録が必要だった規模の事業者が対象から外れることがある。第二が事業の区分で、年平均所得が30万MCIや300万MCIの線をまたぐと、支援策の対象や検査の頻度が変わる。第三が行政罰で、罰金がMCIの倍数で書かれているため、条文が変わらなくても実際に払う額が毎年動く。

したがってカザフスタンで事業を営む側にとって、毎年12月の予算法の成立は、翌年の税率だけでなく、自社がどの区分に入り、どの届出義務を負うかを確定させる出来事になる。予算法典は共和国予算を議会が当年12月1日までに承認すると定めており、翌年の目盛りはこの時点でほぼ固まる。

数字の読み方

第一に、MCIで書かれた条文をテンゲに換算するときは、適用される年のMCIを使う。企業家法典の閾値は「当該会計年度の1月1日時点で効力を持つ、共和国予算法が定めた月次計算指標」と明記されている。年の途中でMCIが改定されても、その年の判定には1月1日の値を使う。

第二に、年をまたいだ比較では、倍率が変わったのかMCIが変わったのかを分ける。付加価値税の登録閾値は2025年から2026年にかけて7,864万テンゲから4,325万テンゲへ下がったが、これは倍率が2万MCIから1万MCIへ半減したためで、MCI自体は3,932テンゲから4,325テンゲへ上がっている。テンゲ建ての金額だけを並べると、何が起きたのか読めない。

第三に、生活最低限の法文上の表現に注意する。2025年の予算法は「基礎的な社会給付の額を算定するための生活最低限の値」と書き、2026年の予算法は「生活最低限の額」と書いている。同じ指標だが、条文の表現が年によって変わる。

第四に、名称の訳語がぶれる。同じ指標が日本語では月次計算指標とも月額計算指標とも訳される。英語でもMCI、MRP、monthly calculation index などの表記が混在する。原語の条文で額を確かめるのが確実である。

第五に、複数の基準額を混同しない。カザフスタンの予算法は五つの値を並べて定めており、そのうち税制の閾値に使われるのはMCIだけである。給付の水準を語るときは生活最低限と年金の最低額、賃金を語るときは最低賃金と、指標を使い分ける必要がある。

参考資料

この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。

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