解説 · 2026年9月時点
ライオン・ファイナンス・グループ(Lion Finance Group)は、ロンドン証券取引所に上場する銀行持株会社である。中核子会社はジョージア2大銀行の一つバンク・オブ・ジョージアで、2024年にアルメニアの有力行アメリアバンクを買収してコーカサス2カ国体制となり、2025年2月にグループ名を現在のものに改めた。2026年3月23日付でFTSE100の構成銘柄となっている。
コーカサスの銀行としては例外的に、ロンドン市場の開示基準で四半期ごとに財務を公表する上場企業である。決算はラリ建てで、ジョージア事業、アルメニア事業、その他事業の3部門に分けて開示される。
| 正式名 | Lion Finance Group PLC |
|---|---|
| 旧称 | Bank of Georgia Group PLC(2025年2月に社名変更) |
| 登記 | イングランド・ウェールズ、会社番号10917019。登記上の住所はロンドン |
| 上場 | ロンドン証券取引所のメインマーケット(ティッカーBGEO)。2026年3月23日付でFTSE100の構成銘柄 |
| 上場の経緯 | 2006年に預託証券で上場、2012年にプレミアム上場へ移行してFTSE250入り |
| 最高経営責任者 | アルチル・ガチェチラゼ |
| 会計監査人 | プライスウォーターハウスクーパース |
| 事業部門 | ジョージア金融サービス(GFS)、アルメニア金融サービス(AFS)、その他事業 |
| 主な子会社 | バンク・オブ・ジョージア、ゴールト・アンド・タガート、アメリアバンク、ベラルーシ人民銀行(BNB)、デジタル・エリア |
| 総資産 | 658億2,054万ラリ(2026年6月末)。2025年末は608億6,986万ラリ |
| 融資残高 | 444億2,904万ラリ(2026年6月末)。2025年末は400億6,566万ラリ |
| 顧客預金・債券 | 436億6,475万ラリ(2026年6月末)。2025年末は386億2,997万ラリ |
| 利益 | 21億9,280万ラリ(2025年通期、一時項目を除く。前年比20.9%増)。報告ベースは21億6,320万ラリ |
| 自己資本利益率 | 28.4%(2025年通期、調整後)。報告ベースは28.0% |
| 1株当たり配当 | 10.50ラリ(2025年通期、前年比16.7%増) |
| 従業員 | 1万3,343人(2026年6月末) |
| 中期目標 | 融資残高の年成長率約15%、自己資本利益率20%以上、配当と自社株買いで年間利益の30〜50%を還元 |
沿革
グループが公表する年表は1994年のバンク・オブ・ジョージア設立から始まる。ジョージア企業登記簿では、株式会社バンク・オブ・ジョージア(識別番号204378869)の登記日は1995年11月29日である。1996年にジョージアで初のプラスチックカードを発行し、1998年には同国初のATMを設置するとともに、欧州復興開発銀行(EBRD)が株主に加わった。2004年には当時第9位の銀行トビルユニバーサルバンクとカード決済会社ジョージアン・カードを買収している。
2006年、バンク・オブ・ジョージアは預託証券(GDR)の形でロンドン証券取引所に上場し、インターネットバンキングとモバイルバンキングを開始した。2007年には2億ドルのユーロ債を発行しており、ジョージア企業として初の国際債だった。2012年に持株会社BGEOがロンドン証券取引所のプレミアム上場へ移行し、コーカサス地域の企業として初めてFTSE250に採用された。
2018年、BGEOは銀行業と投資事業を二つの上場会社に分割し、銀行側がバンク・オブ・ジョージア・グループ、投資側がジョージア・キャピタルとなった。2024年3月、アルメニア最大級の銀行アメリアバンクの株式約90%を取得し、同年には子会社バンク・オブ・ジョージアが3億ドルの永久劣後債(利率9.5%、その他Tier1)を発行している。
2025年2月、グループ名をライオン・ファイナンス・グループへ変更した。2カ国での事業展開を反映させたもので、バンク・オブ・ジョージアとアメリアバンクはそれぞれの市場で従来の商号を使い続けている。2026年3月23日付でFTSE100の構成銘柄となり、指数採用時の時価総額は47億ポンドだった。2006年の上場時の時価総額は約4億4,000万ドルで、同社はこの20年間で総資産が50倍を超えたと説明している。
グループの構成
事業はジョージア金融サービス(GFS)、アルメニア金融サービス(AFS)、その他事業の3部門で開示される。GFSはバンク・オブ・ジョージアと投資銀行ゴールト・アンド・タガートからなり、AFSはアメリアバンクである。その他事業には、ベラルーシで個人と中小企業を相手にするベラルーシ人民銀行(BNB)、電子商取引のExtra.ge、チケット販売のBiletebi.ge、加盟店向けソフトウェアOptimoを運営するデジタル・エリア、持株会社本体などが含まれる。
2025年12月末のグループ総資産に占める比率は、ジョージア69%、アルメニア27%、その他4%だった。2025年通期の一時項目を除く利益の内訳は、GFSが78%、AFSが21%、その他が1%である。2026年6月末の部門別総資産はGFSが444億9,902万ラリ、AFSが190億2,302万ラリ、その他が22億9,850万ラリとなっている。
傘下の投資銀行ゴールト・アンド・タガートは、ジョージアとアルメニアの経済に関する調査レポートを公表しており、国際機関や報道で広く引用される。調査元が市場参加者である銀行グループの一部門である点は、レポートを読む際に念頭に置く必要がある。
ジョージア事業
ジョージアの銀行セクターは同グループとTBCバンクの2強である。ジョージア国立銀行が公表する銀行別の財務指標によれば、2026年7月末時点でバンク・オブ・ジョージアの市場シェアは総資産39.3%、貸出38.5%、預金41.2%、個人預金45.3%であり、TBCバンクと合わせると総資産の75.0%を占める。1〜7月の純利益ではバンク・オブ・ジョージアが50.6%、TBCバンクが36.9%と、上位2行で業界全体の87.5%に達した。同期間のバンク・オブ・ジョージア単体の総資産は446億130万ラリ、純利益は11億1,812万ラリ、総資産利益率4.47%、自己資本利益率30.8%である。
グループ自身の集計では、2025年通期のジョージアにおける貸出シェアは37.8%(前年比0.2ポイント上昇)、預金シェアは41.0%(同0.4ポイント低下)だった。同部門の一時項目を除く利益は17億870万ラリ(9.8%増)、自己資本利益率は32.0%である。
強みはリテールのデジタル化と決済にある。2026年6月末のバンク・オブ・ジョージア単体のリテール月間アクティブ利用者は227万5,300人、うちデジタル利用者は192万2,100人で、日次のデジタル利用者は初めて100万人を超えた。加盟店決済(アクワイアリング)の取扱高シェアは56.7%、支店は206店である。バンク・オブ・ジョージアは2024年と2025年に米誌グローバル・ファイナンスから「世界最優秀デジタルバンク」に選ばれている。
アルメニア事業
アメリアバンクは2024年3月に買収した。EBRDが発行済株式の10%を保有し続けており、この持分にはプットとコールのオプションが付されている。2025年通期の同部門の利益は4億5,240万ラリ、自己資本利益率は22.6%で、アルメニアにおける貸出シェアは21.7%(前年比0.9ポイント上昇)、預金シェアは19.5%(同1.0ポイント上昇)だった。
2026年に入って伸びが加速している。2026年6月末の融資残高は現地通貨ベースで前年同期比36.8%増、顧客預金は37.1%増で、貸出シェアは22.9%と国内首位、現地債券を含む預金シェアは20.2%で2位である。リテールのデジタル月間利用者は39万2,100人と47.0%増えた。アルメニア事業はグループ総資産の3割弱を占めるところまで拡大している。
業績と株主還元
2025年通期は、一時項目を除く利益が21億9,280万ラリ(前年比20.9%増)、調整後の自己資本利益率は28.4%、純金利マージンは6.1%だった。一時項目は第4四半期に計上した従業員持株制度に関する会計処理変更にともなう2,960万ラリの費用で、これを含む報告ベースの利益は21億6,320万ラリ、自己資本利益率は28.0%、経費率は36.2%である。2024年の報告ベースの利益24億8,520万ラリと自己資本利益率41.2%には、アメリアバンク買収にともなう6億7,220万ラリの割安購入益などの一時項目が含まれている。
2026年上半期の利益は12億380万ラリで前年同期比17.3%増、自己資本利益率は27.2%だった。第2四半期単独では6億1,880万ラリ(20.6%増)である。6月末の融資残高は444億2,904万ラリで現地通貨ベース23.0%増、顧客預金と債券は436億6,475万ラリで26.8%増、純金利マージンは6.3%、信用コスト率は上半期0.5%、不良債権比率は2.1%だった。
株主還元は四半期配当と自社株買いの組み合わせで、年間利益の30〜50%を還元する方針を掲げる。2025年通期の1株当たり配当は10.50ラリ(16.7%増)、自社株買いは2億300万ラリで、還元率は30%だった。2022年に自社株買いを始めてから2025年12月末までに569万5,095株を消却しており、開始時点の発行済普通株式の11.6%にあたる。2026年第2四半期の配当は1株3.05ラリで、上半期では5.90ラリ(15.7%増)、これに5,900万ラリの自社株買いの積み増しが加わった。
資金調達と格付け
2025年11月、バンク・オブ・ジョージアは4億5,000万ラリのシニア無担保債(利率11.50%、2028年11月17日償還)を起債した。ラリ建てでアイルランド証券取引所に上場し、ムーディーズからBa2の格付けを得ている。同社はこれを、2025年にコーカサス・トルコ・中央アジアで民間企業が発行した現地通貨建てユーロ債として最大の案件だと説明している。2024年には3億ドルの永久劣後債(利率9.5%)も発行している。
格付けは銀行単位で付与される。2026年9月時点で、バンク・オブ・ジョージアはフィッチがBB(見通し安定的)、ムーディーズがBa2(見通しネガティブ)。アメリアバンクはS&PグローバルがBB-(見通し安定的)、ムーディーズがBa3(見通しポジティブ)である。
数字を読むときの注意
同グループの利益には一時項目の調整が入る。2025年は2,960万ラリの費用、2024年は6億7,220万ラリの割安購入益などが対象で、調整前後で利益と自己資本利益率が大きく変わる。前年比を引用するときは、どちらのベースかを確かめる必要がある。買収初年度の2024年はアメリアバンクの損益が9か月分しか含まれていない点にも注意が要る。
報告通貨はラリで、アルメニア事業の数字も換算されている。融資や預金の伸び率は為替の影響を除いた現地通貨ベースで示されることが多く、ラリ換算の残高から計算した伸び率とは一致しない。
市場シェアの数字は出所と基準日で食い違う。グループが2025年通期の資料で示すジョージアの貸出シェアは37.8%だが、ジョージア国立銀行の2026年7月末の集計では38.5%である。基準日と集計範囲が違うためで、比較するときは同じ出所でそろえる必要がある。
参考資料
- Lion Finance Group PLC(公式サイト) ↗
- At a glance — Lion Finance Group PLC(事業部門と中期目標) ↗
- Our history — Lion Finance Group PLC(1994年以降の年表とFTSE100採用) ↗
- Lion Finance Group PLC Annual Report 2025 ↗
- Lion Finance Group PLC 2Q26 and 1H26 Results(2026年8月11日) ↗
- Credit ratings — Lion Finance Group PLC ↗
- Key Data of Commercial Banks 2026 — ジョージア国立銀行(銀行別の市場シェアと損益) ↗
- Completion of Acquisition of Ameriabank — Lion Finance Group PLC ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。