解説 · 2026年8月時点
アジアインフラ投資銀行(AIIB)は、アジアのインフラ整備を目的として中国の主導で設立された多国間開発銀行である。2016年1月に57の創設加盟国で業務を開始し、本部は北京にある。授権資本は1,000億ドル、加盟は2025年時点で111(承認ベース)に増え、うち53が域内、58が域外の加盟国・地域である。
中央アジア・コーカサスでは、ジョージア、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、アゼルバイジャン、ウズベキスタンが加盟しており、アルメニアが2025年9月4日に加わった。トルクメニスタンは加盟していない。実際の案件はウズベキスタンとカザフスタンに集中し、道路・鉄道・地下鉄などの運輸インフラと、風力・太陽光・蓄電池といった発電事業が二本柱になっている。
| 正式名 | Asian Infrastructure Investment Bank(AIIB) |
|---|---|
| 業務開始 | 2016年1月(57の創設加盟国) |
| 本部 | 中国・北京 |
| 加盟 | 111(承認ベース。域内53、域外58。2025年時点) |
| 授権資本 | 1,000億ドル |
| 格付け | S&P、ムーディーズ、フィッチの3社からAAA |
| 最大出資国 | 中国(出資比率30.50%、議決権26.36%)。次いでインド(8.57%/7.53%) |
| 累計投融資 | 10年間で40の加盟国・地域の350件超に約700億ドル |
| 2030年の目標 | 年間融資額を170億ドルへ倍増、年間融資の50%超を気候関連に |
成り立ちと位置づけ
AIIBは、既存の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)ではアジアのインフラ需要を賄えないという問題意識から構想された。2013年に中国が提唱し、英国、ドイツ、フランスなど西側の主要国も創設加盟国として参加した一方、米国と日本は加盟していない。出資比率は中国が30.50%、議決権では26.36%で最大であり、インド、ロシア、ドイツが続く。
設立当初は環境・社会配慮や調達の基準を巡って懸念が示されたが、2017年以降はS&P、ムーディーズ、フィッチの3社からいずれもAAA格付けを得ており、2025年の再確認ではフィッチがリスク管理の評価を「強い」から「卓越している」へ引き上げた。2018年には国連総会と経済社会理事会でのオブザーバー資格を得ている。
2020年に採択した企業戦略「Financing Infrastructure for Tomorrow(i4t)」を2025年に改定し、2030年までに年間融資額を170億ドルへ倍増させること、年間融資の50%超を気候関連に振り向けて気候ファイナンスの累計を500億ドル超とすること、融資の25〜30%を越境の連結性事業に充てることを目標に掲げた。2023年7月以降のすべての融資はパリ協定と整合するとしている。
8か国の加盟状況
加盟の発効日は、ジョージアが2015年12月25日(創設加盟国)、タジキスタンが2016年1月16日、キルギスが2016年4月11日、カザフスタンが2016年4月18日、アゼルバイジャンが2016年6月24日、ウズベキスタンが2016年11月30日、アルメニアが2025年9月4日である。
出資額(2026年8月時点、単位は100万ドル)はカザフスタンが729.3で域内最大、次いでアゼルバイジャン254.1、ウズベキスタン219.8、ジョージア53.9、アルメニア37.4、タジキスタン30.9、キルギス26.8である。いずれも議決権は1%に満たず、意思決定への影響は限られるが、案件の受け手としては存在感がある。
域内での案件
ウズベキスタンは域内で最も案件が多く、2026年8月時点で承認済みが22件ある。ブハラ州の上下水道整備(2020年、3億8,510万ドルと2022年の第2期2億4,840万ドル)、ブハラ-ミスキン-ウルゲンチ-ヒヴァ間の鉄道電化(2022年、1億800万ドル)、カラカルパクスタンとホラズムの地方道路網(2025年、1億7,347万ドル)といったインフラに加え、開発政策融資型の予算支援が繰り返し組まれている。2023年の「第1次インクルーシブ・強靱な市場経済開発政策融資」は6億7,000万ドル、2025年の「グリーン・強靱な市場経済プログラム」は5億ドルである。発電では、シルダリヤの1,500メガワット複合火力、スルハンダリヤの1,560メガワット複合火力、マスダールの897メガワット太陽光ポートフォリオ、バシュ2の300メガワット風力、ヌクス2の200メガワット風力・蓄電池などに民間向け(ノンソブリン)で参加している。
カザフスタンでは運輸案件が中心で、2024年のジェズカズガン-カラガンダ区間を含む輸送強靱化事業に6億5,000万ドル、2025年のM-32号線アクトベ-カラブタク-ウルガイスィン区間の改築に4億5,000万ドル、2026年のA-27号線アティラウ-ドソル区間に2億3,800万ドル、同年の「カザフスタンの鉄道連結性の転換(中間回廊整備)第1期」に5億6,400万ドルを承認した。発電ではジャナタス100メガワット風力(2019年)、ショクパル100メガワット風力(2023年)などに参加している。
ジョージアでは2024年にトビリシ地下鉄の近代化事業へ1億2,500万ユーロ、2017年にバトゥミ環状道路へ1億1,400万ドルを承認した。民間向けではTBC銀行への与信枠、ジョージア・キャピタルのサステナビリティ連動融資、ジョージア・ヘルスケア・グループのソーシャル・ファイナンスがある。トランスカスピ海回廊のジョージア側アクセス改善事業(1億8,107万ドル)は2026年8月時点で提案段階にある。
アゼルバイジャンでは2016年にTANAPへ6億ドルを承認したのが最初の案件で、2024年にはバンカ・ビラスヴァルの760メガワット太陽光へ1億7,000万ドル、2026年にはバクー地下鉄延伸の第1期へ1億8,000万ドルを承認した。タジキスタンではヌレク水力発電所の改修(2017年、6,000万ドル)、ログン水力の第1期(2024年、2億7,000万ドル)、オビガルム-ヌロバド道路(2024年、7,550万ドル)を承認している。キルギスとトルクメニスタンでは、2026年8月時点で承認済みの案件がない。
参考資料
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。