アルメニアのニコル・パシニャン首相は8月24日、国民議会で審議中の2026〜2031年の政府活動計画を説明し、計画の第4節に置いた鉄道の文言を読み上げた。引用は「鉄道の受託管理の制度は、アルメニア共和国が国際輸送体系へ統合されるという、すでに生じている歴史的な機会の実現を妨げないよう見直される」というものである。
首相は理由を順に説明した。TRIPPの鉄道は南部国境沿いのヌルナゾル〜アガラクを、アラクス川沿いのソ連期の線路の経路で通る。貨物はアガラクからナヒチェヴァンへ入る。ソ連期には、そこから鉄道がアララト地方のエラスフを経てシラク地方のアフリクへ抜け、トルコへ入っていた。ところが、TRIPPに意欲を示す国際投資家は、いまこのエラスフ〜アフリク区間を迂回する経路を探している、と首相は述べた。
理由は管理の形にあるという。首相の説明では、この区間はアルメニアの所有でありながらロシアの鉄道の管理下にあり、対ロシア制裁を踏まえて投資家や輸送業者、荷主がリスクと見なして避けようとしている。迂回されれば、アルメニアは収入も投資も雇用も発展の機会も失う。首相はロシア側に柔軟性を求め、コンセッションの権利をアルメニアとロシアの双方が受け入れられる第三国に売却するよう要請していると述べ、友好的な解決を重ねて求めた。あわせて、トルコ領内で進むカルス〜ディルジュ、すなわちカルスからナヒチェヴァンへ向かう鉄道の建設が活発になっており、エラスフ〜アフリクはこれと競争しなければならないとした。
TRIPPの中身にも触れた。鉄道だけでなく、パイプライン、道路、ケーブル、送電線を含む。首相は、TRIPPの枠内で最初に稼働するインフラは送電線になる可能性が高いと述べた。技術的に短期間で仕上げやすいこと、世界的な電力需要の増加で域内からの電力輸出案件への関心が高まっていることを理由に挙げている。決定ではなく見通しの表明である。域内では送電網の整備が別々に進んでおり、アゼルバイジャンでは8月21日にザンゲズル送電線の第1期が97%完成したと発表されている。
米国との戦略的協力に関する枠組み協定は批准の段階にあり、TRIPP Development Companyの設立作業は最終段階にあるという。出資比率は、首相自身が念のためとして繰り返したとおり既に公表済みで、アルメニアが26%、米国が74%である。国営通信アルメンプレスによれば、政府が批准法案を承認した7月16日の閣議でも、外相が同じ比率を説明している。
期間は長い。首相によれば、この比率は最低49年間続き、期限の後に双方の合意で延長される場合はさらに50年になる。延長後はアルメニアの持ち分が49%、米国が51%となり、アルメニア側の追加の出資や負担は求められない。首相はこれを、アルメニアがこれまで持ったことのない100年の計画だと述べた。
政府計画の到達目標には、TRIPPに基づく封鎖の解除が並んでいる。ただし受託管理の見直しは相手のある話で、首相の言い方も要請にとどまっている。送電線が先に動くという見立ても、決まった工程ではない。
