アルメニア統計委員会が8月に公表した一連の統計から、同国経済の輪郭が見えてくる。
物価は落ち着いている。2026年7月の消費者物価は前年同月比4.5%の上昇だった。ただし前月比では1.4%の下落を記録している。年間で見れば上昇、月次で見れば下落という組み合わせは、夏場の生鮮品の値下がりが効いている可能性が高い。品目別では食料品・非アルコール飲料が前年同月比7.4%上昇しており、物価上昇の中心が食料にあることが分かる。
隣国と比べると位置づけがはっきりする。同じ7月時点で、カザフスタンのインフレ率は10.2%、ジョージアは5.5%、ウズベキスタンの政策金利は14%である。アルメニアの4.5%は域内では低い部類に入る。
国内の消費は力強さを欠く。上期の国内商業取引額は現行価格で3兆1,559億ドラムとなり、前年同期比0.9%増にとどまった。物価が4.5%上昇していることを踏まえると、実質では減少している計算になる。対ロシア貿易の急減が家計の所得と心理に及ぼす影響を考えれば、無理のない数字ではある。
一方で電力部門は伸びた。1〜6月の発電量は51億6,370万キロワット時で、前年同期比10%の増加である。統計委員会によれば、発電の大部分は火力発電所が担った。
火力が主体という点は注意して見る必要がある。アルメニアの発電構成は火力、原子力、水力から成り、火力の燃料は主にロシアから供給される天然ガスである。発電量が10%伸びたということは、その分だけガスの消費も増えている。対ロシア貿易が3分の1に縮むなかで、エネルギー供給だけは依存が続く構図である。
物価は安定し、発電は伸び、消費は停滞している。対ロシア関係の変化が実体経済のどこに出ているかを読むうえで、この3つの数字は手がかりになる。
