解説 · 2026年9月時点
ゴールト・アンド・タガート(Galt & Taggart)は、ジョージアの投資銀行・証券会社である。ロンドン証券取引所に上場するライオン・ファイナンス・グループ(旧バンク・オブ・ジョージア・グループ)の完全子会社で、ジョージア国立銀行の免許を受けて証券仲介と投資銀行業務を営む。同国の社債発行の主幹事を数多く務める一方、無料で公開する経済・産業レポートによって、英語で読めるジョージア経済の分析としては最も参照される部類にある。
調査部門の存在感が大きい。マクロ経済の週次・月次レポート、住宅・観光・電力・農業・ITなどの産業レポート、上場企業や社債発行体の個別レポート、地域のユーロ債を追う債券レポートを継続的に出しており、2026年9月時点で1,583件が公開されている。最も古いものは2012年6月で、14年分の時系列がそのまま残る。ジョージアの主要な経済統計を英語で追おうとすると、政府機関の一次資料の次に手が届くのがこの会社のレポートになる。
2025年12月期の単体の総収益は1,994万ラリ、当期利益は932万ラリだった。従業員規模は数十人で、収益の規模としては小さい。それでも域内の報道や国際機関の資料で名前を見る頻度が高いのは、この会社が調査結果を有料の顧客向けにとどめず、誰でも読める形で公開しているからである。
| 正式名 | JSC Galt and Taggart(Galt & Taggart) |
|---|---|
| 登記番号 | 211359206(ジョージア企業登記簿。登記日1995年12月19日、登記機関はサブルタロ地区裁判所) |
| 設立 | 1995年12月19日、ジョージア法にもとづき設立 |
| 社名の変遷 | 2000〜2009年はゴールト・アンド・タガート・セキュリティーズ、2009〜2014年はBGキャピタル。2014年8月26日から現社名 |
| 本社 | ジョージア・トビリシ市アレクサンドル・プーシキン通り3 |
| 親会社 | JSC BGフィナンシャルが株式の100%を保有。最終親会社はロンドン証券取引所上場のライオン・ファイナンス・グループ(旧バンク・オブ・ジョージア・グループ) |
| 監督官庁 | ジョージア国立銀行。現行の証券業免許は2014年9月10日付 |
| 事業 | 投資銀行業務、証券仲介(ブローカレッジ)、リサーチ、資産・不動産運用 |
| 総収益 | 1,994万ラリ(2025年12月期、単体。2024年は1,866万ラリ) |
| 収益の内訳 | 証券仲介の手数料純収入1,257万ラリ、投資銀行・アドバイザリー報酬737万ラリ(2025年12月期) |
| 当期利益 | 932万ラリ(2025年12月期。2024年は722万ラリ) |
| 総資産・純資産 | 総資産2,220万ラリ、純資産1,685万ラリ(2025年12月末) |
| 発行済株式 | 146万1,987株(額面1株1ラリ、全額払込。授権株式数2,000万株) |
| 子会社 | ゴールト・アンド・タガート・ホールディング(キプロス、議決権99.23%、2006年7月3日登記) |
| 会計監査人 | ムーア・エービーシー(Moore Abc、2025年12月期の個別財務諸表) |
| 人員 | 会社サイトは「80人超」、2025年12月期の財務諸表は「50人超」と記載しており、説明が分かれる |
| 最高経営責任者 | ギオルギ・クプラシュヴィリ |
| リサーチ責任者 | エヴァ・ボチョリシヴィリ。チーフエコノミストはラシャ・カフタラゼ |
| 監査役会 | アルチル・ガチェチラゼ、ダヴィド・チコニア、スルハン・グヴァリア(ジョージア企業登記簿、2026年9月時点) |
| 公表レポート | 2026年9月時点で1,583件。最も古いものは2012年6月28日付 |
| 公式サイト | galtandtaggart.com |
沿革
法人としては1995年12月19日にジョージア法にもとづいて設立された。企業登記簿の登記日も同じ1995年12月19日で、登記機関はトビリシのサブルタロ地区裁判所である。
社名は三度変わっている。2000年から2009年まではゴールト・アンド・タガート・セキュリティーズ、2009年から2014年まではBGキャピタル、そして2014年8月26日から現在の「ゴールト・アンド・タガート」である。社名はアイン・ランドの小説『肩をすくめるアトラス』の登場人物ジョン・ゴールトとダグニー・タガートに由来する。BGキャピタルの時期はバンク・オブ・ジョージアの投資銀行部門としての位置づけが前面に出ていたが、2014年にかつての名前へ戻した。
現行の証券業免許はジョージア国立銀行が2014年9月10日に交付したものである。同社は2015年以降、グローバル・ファイナンス誌、ユーロマネー誌、シーボンズなどから「ジョージアで最良の投資銀行」の類の賞をたびたび受けており、直近ではグローバル・ファイナンス誌の第27回年次表彰で2026年のジョージア最優秀投資銀行に選ばれている。ユーロマネー誌からは2022年、2024年、2025年に同国の最優秀投資銀行、2025年には資本市場部門で最優秀ブローカーに選ばれた。
資本関係と統治
株式は100%をJSC BGフィナンシャルが保有し、その先の最終親会社はロンドン証券取引所に上場するライオン・ファイナンス・グループである。同グループは2025年に旧称のバンク・オブ・ジョージア・グループから改称しており、ジョージアのバンク・オブ・ジョージアとアルメニアのアメリアバンクという2つの商業銀行を傘下に持つ。持株会社自身はFTSE100の構成銘柄である。
発行済株式は146万1,987株、額面は1株1ラリで、授権株式数は2,000万株である。資本金1,461,987ラリのほかに、額面を超える払込分276万1,786ラリが資本剰余金として計上されている。
ジョージア企業登記簿によれば、代表者は最高経営責任者のギオルギ・クプラシュヴィリで、監査役会にはアルチル・ガチェチラゼ、ダヴィド・チコニア、スルハン・グヴァリアが名を連ねる。いずれも親会社グループの経営陣であり、子会社の監督は親会社の側から行われる構図になっている。
海外子会社としてキプロス籍のゴールト・アンド・タガート・ホールディング(議決権99.23%、2006年7月3日登記)を持つ。
事業
投資銀行部門は、社債の公募・私募と株式の発行を主幹事として手がける。同社の取引一覧には、2026年7月の2年債3,950万ドル、同6月の5年債3億ドル(私募)、同5月の2032年満期国債4億ラリ、同1月の2031年満期債5億ドルなどが並ぶ。国際金融公社(IFC)が引き受けたラリ建て変動利付債(2026年1月、5,336万ラリ)のような案件もある。取引一覧には2012年の国債入札の実績まで含まれている。
ブローカレッジ部門は、ジョージア国立銀行の免許を受けた証券会社として、国内外の株式・債券・ETF・投資信託の売買を仲介する。担当者が発注を代行する口座と、自分で発注する電子取引口座の2種類を提供し、後者では50を超える市場と6万を超える銘柄にアクセスできると説明している。ジョージア国内の社債の新規発行に参加できる点を、外国の市場では得られない特徴として挙げている。
リサーチ部門は、経済、産業、金融市場の3つの領域を担当する。同社はこの部門を「ジョージア最大の調査機関」と位置づけており、レポートはブルームバーグ、リフィニティブ(旧トムソン・ロイター)、S&Pキャピタル・アイキュー、ファクトセット、テリマーといった金融情報端末にも配信されていると説明している。このほか、依頼に応じた個別調査、事業計画、実現可能性調査、財務モデルの作成も請け負う。
公表するレポート
定期物の柱は週次の「ウィークリー・マーケット・ウォッチ」で、公開されている1,583件のうち590件がこの系列にあたる。国内総生産、物価、貿易、送金、観光収入、財政などの直近の指標をまとめ、必要に応じて年間見通しを改定する。金融市場については「ウィークリー・キャピタル・マーケット・ウォッチ」が別に出る。
月次では「マンスリー・エコノミック・レビュー」(経済全般)、「リージョナル・フィックスト・インカム・マーケット・ウォッチ」(債券)、「トビリシ住宅不動産」、「電力市場ウォッチ」が定期的に出る。四半期では観光市場、バトゥミの住宅市場、商品市況、ヘッジファンド動向のレポートがある。中央銀行の政策金利決定の前には「セントラル・バンク・ウォッチ」で予想を示す。
産業レポートは不定期で、2024年以降に出たものだけでも、IT、教育、電子商取引、日用消費財、建材・住宅設備、農業、倉庫・物流、ナッツ、マイクロファイナンス、オフィス不動産、商業施設、ワインと酒類などがある。個別企業ではジョージア鉄道と通信大手シルクネットを継続的に追っている。
地域の範囲は、ジョージアを中心に置きつつ周辺へ広がる。債券レポートは、トルコ、カザフスタン、ジョージア、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、アルメニアのソブリン債と企業ユーロ債の利回りを一覧にする。ウズベキスタン経済については2018年12月と2026年7月に単独のレポートを出した。アゼルバイジャンについては2014年から2017年にかけて週次レポートを出していたが、その後は途絶えている。
レポートは英語版とジョージア語版の2種類が用意されるものと、英語版のみのものがある。いずれも無料で、購読の登録をしなくても読める。
業績と財務
2025年12月期の単体の総収益は1,994万ラリで、前期の1,866万ラリから6.9%増えた。内訳は証券仲介の手数料純収入が1,257万ラリ(前期954万ラリ)、投資銀行・アドバイザリー報酬が737万ラリ(同912万ラリ)である。ブローカレッジが伸びて投資銀行が減るという、期によって主従が入れ替わる構成になっている。
販売管理費は1,386万ラリで、うち給与が672万ラリ、賞与が517万ラリを占める。営業利益にあたる純営業収益は605万ラリ、これに純受取利息312万ラリなどを加えた税引前利益は932万ラリだった。
法人所得税費用はゼロである。ジョージアは2017年1月1日以降に得た利益について、銀行や保険会社などを除き、利益を分配するまで法人所得税を課さない制度をとっている。分配時の税率は15%だが、居住法人への配当は非課税であり、同社の株主であるBGフィナンシャルはジョージアの居住法人にあたる。
2025年12月末の総資産は2,220万ラリ、純資産は1,685万ラリである。資産の内訳は現金・現金同等物955万ラリ、売掛金211万ラリ、短期預金174万ラリなどで、証券会社としては自己勘定の持ち高が小さい。財務諸表は個別(単体)ベースで公表されており、2016年12月期以降の監査済み財務諸表が同社サイトに揃っている。
レポートを読むときの注意
第一に、これは民間の調査であって政府統計ではない。レポートに載る数字の多くは、ジョージア国立銀行、統計局、エネルギー市場の運営機関などが公表した値を同社が集計・加工したものである。原数値そのものが必要なときは発表主体の公表に遡るのが確実で、同社の集計値と発表主体の値が食い違うことも起こりうる。
第二に、予測値と実績値が同じ文章のなかに並ぶ。2026年8月31日付の月次レビューは、7月の実質GDPが前年同月比8.0%増だったという実績を示したうえで、2026年通年の成長率見通しを7.5%、2027年を6.0%として「維持する」と書いている。外貨準備についても、7月の実績75億ドルを示したあとで、2026年末の見通しを従来の77億ドルから85億ドルへ引き上げている。見通しは新しい実績が出るたびに改定されるので、数字を引くときはそれが実績なのか予測なのか、予測ならいつ時点の予測なのかを確かめる必要がある。同社は2026年の成長率見通しを7.0%から7.5%へ、平均インフレ率見通しを4.8%から5.1%へ、いずれも年の途中で改定している。
第三に、利益相反の存在は同社自身が開示している。レポート末尾の免責条項は、同社およびグループの他の会社が調査対象の企業と取引を行っており、また行おうとしているため、投資家は情報の客観性に影響しうる潜在的な利益相反に留意すべきであると明記している。実際、2025年12月期の関連当事者取引には、グループ内から受け取ったアドバイザリー・リサーチ業務の手数料133万ラリが計上されている。同期の投資銀行・アドバイザリー報酬737万ラリの一部がグループ内取引であることになる。現金・現金同等物955万ラリのうち770万ラリも関連当事者に預けられている。
第四に、同種の調査機関が同じ市場にもう一つある。TBCバンク・グループの完全子会社であるTBCキャピタルも、ジョージアのマクロ・産業レポートを継続的に公表しており、こちらも自らを「ジョージア最大の調査機関」と位置づけている。表彰も両社に分散しており、2026年についてはグローバル・ファイナンス誌がゴールト・アンド・タガートを、ユーロマネー誌がTBCキャピタルをそれぞれジョージアの最優秀投資銀行に選んでいる。受賞歴だけでどちらが大きいかは決まらない。
参考資料
- About Us — Galt & Taggart(会社概要) ↗
- JSC Galt and Taggart 個別財務諸表 2025年12月期(監査済み、2026年3月31日承認) ↗
- Galt & Taggart financial reports(2016年以降の監査済み財務諸表の一覧) ↗
- Reports — Galt & Taggart(公開レポートの一覧) ↗
- Research — Galt & Taggart(調査部門の対象範囲と配信先) ↗
- Investment Banking — Galt & Taggart(投資銀行業務と主な引受実績) ↗
- Brokerage — Galt & Taggart(証券仲介の口座種別) ↗
- Awards — Galt & Taggart(受賞歴の一覧) ↗
- Monthly Economic Review, 31 August 2026 — Galt & Taggart(予測値の改定と免責条項) ↗
- About us — TBC Capital(比較対象となる同国のもう一つの調査機関) ↗
- Lion Finance Group PLC — At a glance(最終親会社の概要) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年9月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。