アラル海は、かつて世界第4位の面積を持つ湖だった。1960年代以降にソ連が進めた大規模な灌漑事業で、流入する二つの大河アムダリヤとシルダリヤの水が綿花畑へ引かれ、湖はわずか数十年で大半を失った。20世紀最大級の環境破壊として世界的に知られる事例であり、中央アジアの水資源をめぐる議論の出発点でもある。
| 場所 | カザフスタン南部とウズベキスタン北西部(カラカルパクスタン)にまたがる塩湖 |
|---|---|
| 縮小の原因 | 1960年代からの灌漑用取水。アムダリヤとシルダリヤの水を綿花栽培へ転用 |
| 分裂 | 1989年に北(小)アラル海と南(大)アラル海に分裂。2014年に南側の東部湖盆が完全に干上がった |
| 北アラル海の再生 | 2005年にコカラル堤防(全長13キロ、世界銀行支援)を建設 |
| 2025年の水量 | 北アラル海で270億立方メートル、前年比42%増 |
| 干上がった跡地 | アラルクム砂漠。2021〜2024年に47万5,000ヘクタールで植林 |
何が起きたのか
ソ連はウズベキスタンとトルクメニスタンを綿花の産地にする計画を立て、二つの大河から大量の水を引いた。カラクム運河をはじめとする灌漑網が広がる一方、湖への流入は細り、湖面は後退した。1989年には北(小)アラル海と南(大)アラル海に分裂し、2014年には南側の東部湖盆が完全に干上がった。
影響は水量だけではない。湖底が露出してできたアラルクム砂漠からは、農薬と塩を含む砂塵が舞い上がり、周辺住民の健康被害を招いた。漁業は壊滅し、船が砂漠に取り残された光景がこの地域の象徴的な風景になった。
北アラル海の再生
カザフスタンは2005年、世界銀行の支援を受けて全長13キロのコカラル堤防を築き、シルダリヤから流れ込む水を北側に閉じ込めた。これが功を奏し、北アラル海は水位と面積を回復した。2025年には水量が前年比42%増の270億立方メートルに達している。塩分濃度が下がって漁業も戻り、湖の物理的な性質が乾燥前の状態に近づいたことが研究で確認されている。
一方、南アラル海(ウズベキスタン側)の回復は難しい。流入するアムダリヤの水量が上流の灌漑と、さらに上流のダム計画に左右されるためである。ウズベキスタンは干上がった湖底への植林に力を入れ、砂塵の飛散を抑える方向で対処している。
投資の文脈で読むと
アラル海の縮小は、中央アジアの水が「上流の水力発電」と「下流の灌漑農業」のどちらに使われるかという配分問題の帰結である。ログンダムをめぐる対立も、カンバルアタ発電所の議論も、この延長線上にある。
一方、干上がった湖底とその周辺は、塩害に強い作物の栽培、植林による炭素クレジット、太陽光発電の適地としての開発対象にもなりつつある。カザフスタンは地域全体での協調を各国に呼びかけている。
参考資料
- North Aral Sea regains a third of its water — Euronews ↗
- After northern Aral Sea restoration: lake physics similar to before drying up — IGB ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。