解説 · 2026年8月時点
ジョージア国立銀行(NBG)は、ジョージアの中央銀行である。憲法第68条と組織法により独立した機関として位置づけられ、その使命は物価の安定と定められている。本部はトビリシにある。
現在の国立銀行は、ソ連の解体を受けて1991年に設立された。ジョージア最高会議の決定により、ジョージア国内のソ連信用制度の各機関が共和国の財産と宣言され、その中の国家銀行が国立銀行の基礎となった。ただし歴史はさらに遡り、1919年12月31日にジョージア民主共和国の憲法制定議会が国家銀行の設立に関する法律を可決し、1920年7月24日に開業していた。この最初の中央銀行は1921年まで存続した。
| 正式名 | National Bank of Georgia(NBG) |
|---|---|
| 設立 | 1991年(ソ連解体後。1919〜1921年に存在した国立銀行が前身) |
| 本部 | ジョージア・トビリシ |
| 法的根拠 | ジョージア憲法第68条と、国立銀行に関する組織法 |
| 使命 | 物価の安定 |
| 金融政策の枠組み | インフレ目標。2009年に導入 |
| インフレ目標 | 3%(中期) |
| 政策金利(リファイナンス金利) | 8.25%(2026年7月29日の会合で据え置き。2026年5月6日に8.00%から引き上げ) |
| 通貨 | ラリ(GEL) |
| 監督対象 | 商業銀行、マイクロバンク、ノンバンク金融機関、両替業者、決済サービス提供者、資本市場、投資ファンド、積立年金、信用情報機関、暗号資産サービス提供者(VASP) |
金融政策
NBGはインフレ目標の枠組みで金融政策を運営している。中期のインフレ目標は3%で、これは開発途上段階にあるジョージア経済にとって最適な水準と位置づけられている。3%は経済主体の判断を歪めない程度に低く、かつ経済成長を妨げるほど低くはない、という考え方である。
短期のインフレは一時的な外生ショックで目標から乖離しうるが、NBGはそうした変動には原則として反応しない。供給側のショックに対しては、それが中長期のインフレ期待を押し上げて二次的な影響を生む場合にのみ政策を動かす。金融政策の効果が実体経済に及ぶまでには4〜6四半期を要するため、政策判断は現状分析とマクロ経済予測に基づいて行われる。
インフレ目標の導入は2009年である。当初は流動性管理の手段を整えて金融政策の波及経路を強化し、2013年には予測・政策分析システム(FPAS)を導入した。2016年からは政策金利の見通し(トラジェクトリー)を公表するようになり、期待を通じた政策の効きが強まった。
政策手段は政策金利(リファイナンス金利)である。2024年5月から2026年3月まで8.00%で据え置かれていたが、2026年5月6日に8.25%へ引き上げられ、同年6月17日と7月29日の会合でも据え置かれている。
為替政策とラリ化
NBGは変動相場制を採る。為替レートはマクロ経済の基礎的条件、すなわち市場の需給によって決まるという考え方である。インフレ目標と資本移動の自由を両立させるには変動相場制が必要であり、小規模で開放的な経済にとっては外的ショックを為替の変動が吸収する利点があると説明されている。ジョージアの景気循環は米国など先進国のそれと一致しないため、独立した金融政策を持つことが最適だという整理でもある。
したがって為替介入は主要な政策手段ではなく、頻繁には使われない。NBGが介入する目的は、外貨準備の適正水準を維持すること、資本の流出入による短期の変動を相殺すること、政府の外貨取引を均衡させること、そして物価の安定を支えることの4つに限られる。
もうひとつの長年の課題が「ラリ化」、すなわち外貨建てで積み上がった預金と貸出を自国通貨建てへ移していく取り組みである。国際通貨基金の勧告を受けてバーゼルIIIに沿った流動性カバレッジ比率を導入した際には、自国通貨を優遇する設計にした。政府とNBGは共同で資本市場の育成戦略を進めており、流動性と予見可能性の高い指標国債(ベンチマーク債)の発行、プライマリーディーラー制度の導入、年金改革による長期のラリ建て資金の創出が、その具体策として挙げられている。
監督の範囲
NBGは金融部門の統合的な監督機関である。商業銀行とマイクロバンクの銀行監督に加え、ノンバンク金融機関(マイクロファイナンス機関、貸金業者、両替業者など)、決済サービス提供者、暗号資産サービス提供者(VASP)、信用情報機関を監督する。
資本市場についても、市場インフラと仲介業者、投資ファンド、積立年金制度、公開会社と公募証券を所管する。金融部門における競争政策も担っており、規制の枠組みと個別の決定を公表している。
マクロプルーデンス政策では、カウンターシクリカル資本バッファー、システミック・バッファー、第2の柱に基づく追加資本、返済比率(PTI)と担保掛目(LTV)の規制を運用する。銀行の破綻処理の枠組み(再生・破綻処理、MREL、緊急流動性支援)も整備されている。
監督の実務で目立つのが、両替業者に対する制裁である。2026年8月13日にはNBGが両替業者5社に合計209万6,000ラリの制裁金を科した。取引記録の不備、本人確認を経ないサービスの提供、資金洗浄・テロ資金供与防止法の要件不履行が理由である。
公表するデータ
NBGは、銀行部門の機関別財務指標を月次でExcel形式で公表している。「Key Data of Commercial Banks/Microbanks」と題した一覧で、商業銀行とマイクロバンクの資産、負債、資本、損益がIFRSベースで銀行ごとに開示される。域内の他国の中央銀行と比べても開示の粒度が細かく、個別行の業績を追える。
このほか、対話型の統計基盤で融資、預金、送金の統計を公開しており、2026年8月5日には国際社債の統計が追加された。為替レート、国債利回り曲線、トビリシ銀行間金利(TIBR)も公表対象である。
監督権限の及ぶ範囲について明示することもある。2026年8月9日、NBGは米財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁対象となった事業体について、同行の規制監督下にある事業体ではないとの見解を公表した。
参考資料
- National Bank of Georgia(公式サイト) ↗
- Monetary Policy(ジョージア国立銀行) ↗
- Inflation Target(ジョージア国立銀行) ↗
- Inflation Targeting(ジョージア国立銀行) ↗
- Monetary Policy Committee decisions(政策金利の決定履歴) ↗
- Bank History(ジョージア国立銀行) ↗
- Key Data of Commercial Banks - 2026(機関別の月次財務指標) ↗
この解説は編集部がまとめたもので、2026年8月時点の情報に基づく。記事とは異なり、新しい事実が 確認できしだい随時更新する。誤りに気づいた方はお問い合わせください。