アスタナ国際金融センター(AIFC)は2026年9月9日と10日の2日間、アスタナで金融フォーラム「アスタナ・ファイナンス・デイズ(AFD)2026」を開いた。9回目となる今回について、AIFCは初日の発表で、90か国から8,000人の参加者が集まったとしている。本サイトが8月に伝えた開催の予告では、アスタナ・タイムズの報道として、80か国超から5,500人以上の参加が見込まれていた。
会期中にAIFCと関係機関が発表したもののうち主なものは、取引所での炭素クレジットの取引開始、担保に使う証書の適格投資への指定、ジョージア国立銀行との覚書、航空機ファイナンスをめぐる報告書と覚書である。制度や枠組みにかかわる発表が中心で、これらの発表は取引量や金額を示していない。
AIFCの発表によると、アスタナ国際取引所(AIX)は9月10日、国際的な認証基準であるVerified Carbon Standard(VCS)のもとで検証された自主的炭素クレジットの取引を始めた。AIFCは、自主的炭素クレジットを取引する自前の基盤を備えた取引所は中央アジアでAIXが初めてだとしている。最初の供給者はロンドンの取引会社Valor Carbonで、取引はAIXのブローカーで取引参加者のStandard International Marketが仲介する。売買はAIXの取引に参加するブローカーを通じて行う。取引が認められるのは、排出の削減や除去が独立に検証され、VCSを運営する国際的な非営利団体Verraの登録簿に記録されたクレジットに限られる。
取引の場を設ける計画は、今回初めて示されたものではない。AIFCは2024年11月13日、アゼルバイジャンのバクーで開かれた国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)の会合で、AIXに炭素プラットフォームを築く計画を明らかにしていた。AIXは同年9月4日に再生可能エネルギー証書I-RECを取扱商品に加えており、AIFCは11月の発表で、次の段階では炭素クレジットの取引の拡大に力を入れるとしていた。炭素クレジットは、I-RECに続くAIXの2つ目の環境関連商品にあたる。新しいのは計画ではなく、取引が実際に始まったことである。
発表は、初日の取引量や価格、買い手を示していない。AIXのアセル・ムカジャノワ最高経営責任者は、今後は市場の育成に加えて売り手と買い手を集め、取引量を増やすことに力を注ぐと述べている。AIXで取引されるのはVCSで検証された自主的な炭素クレジットで、カザフスタンのパリ協定6条に基づく気候事業の細則との関係について、発表は触れていない。
担保の面では、AIFCの規制当局であるアスタナ金融サービス機構(AFSA)が、International Trading System Limited(ITS)が発行する清算参加証書(CPC)を、AIFCの多角的・組織的取引施設規則(MOTF)上の適格投資に指定する決定通知を出し、10日のフォーラムで発表した。CPCは、清算会員が分別管理された担保プールに拠出した適格資産を、標準化された担保として使えるようにする証書で、ITSが運営する規制下の市場基盤を通じて、レポ取引による短期の資金調達をしやすくすることを狙う。AFSAは公開協議の段階で、担保プールはITSの中央清算機関が管理し、指定によってCPCをITSの多角的取引施設で取引できるようになると説明していた。
AFSAは7月15日にこの指定案の公開協議を始め、8月13日を期限に意見を募っていた。AFSAは、経済的な効果、想定される利用者、他の法域での類似商品の規制上の扱い、市場参加者への影響を評価し、協議で寄せられた意見も踏まえて、流動性、市場、信用、オペレーション、担保の十分性の各リスクに対処したとしている。指定には特定の規制上の条件と制限が付くが、発表文はその中身を列挙していない。CPCの発行を始める時期や規模も書かれていない。
AFSAのエフゲニヤ・ボグダノワ最高経営責任者は、担保は資産や取引ごとに分散しがちで、動かして再利用するのに費用と手間がかかると指摘した。そのうえで、CPCは担保の移し替えや再利用を効率化し、レポなど有担保の資金調達の拡大を通じて、AIFCの短期金融市場をより厚く流動性の高いものにしうると述べている。
ジョージアとの間では、AFSAとジョージア国立銀行が相互アクセスに関する覚書に署名した。AFSAの発表によると署名は9月9日で、ジョージア国立銀行の発表によると、署名したのは同行のエカテリネ・ミカバゼ第1副総裁とAFSAのボグダノワ氏である。署名式は、AFSAが9日に開いた高官級の円卓会議「分断から統合へ」の場で行われた。ジョージア国立銀行は10日に英語版とジョージア語版で発表しているが、いずれも署名の日付を書いていない。覚書の名称も両者で異なり、AFSAは「金融サービスにおける相互アクセスと相互承認」、ジョージア国立銀行は「証券市場における相互アクセスと相互承認」に関する覚書としている。
AFSAによると、覚書は資本市場と資産運用の業務を対象とし、国境を越えた金融サービスの提供と、証券のクロスボーダー上場について協力する土台となる。両当局は、それぞれの法規制の要件を満たすことを前提に、適格な市場参加者のための実務的な相互アクセスの仕組みづくりに取り組み、監督協力と情報交換を強める。両者は2018年に、規制協力と情報交換の枠組みを定めた最初の覚書を結んでいる。ジョージア国立銀行は今回の覚書を、一般的な規制協力から、AIFCとジョージアの証券市場の結びつきを強める実務の仕組みへ移る次の段階だと位置づけている。
もっとも、覚書は仕組みづくりに取り組むことを約したもので、相互アクセスがいつ、どの業務から始まるのか、どの市場参加者が対象になるのかは、いずれの発表にも書かれていない。署名の場となった円卓会議には、ジョージア、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、カザフスタンの金融規制当局と市場参加者のほか、アジア開発銀行、欧州復興開発銀行、世界銀行、国際金融公社などの代表が参加した。AFSAは同じ9日、クロアチア金融サービス監督庁(Hanfa)とも、情報や規制の経験の交換などを柱とする規制協力の覚書に署名している。
キルギス証券取引所は、会期2日目の9月10日にAIXと覚書を結んだと自社の発表で伝えている。署名したのは同取引所のアイダ・チョドゥロワ社長と、AIXのジャラス・ムッサベコフ最高財務責任者である。覚書は、長期的な協力関係の構築を掲げ、市場インフラ、取引所の商品と分析についての経験と情報の交換と、法令・規制、上場、取引、預託、清算・決済についての技術的な支援を掲げている。金額や期限は示されていない。
航空機ファイナンスでは、AIFCが10日の円卓会議で、初の業界報告書「カザフスタンと中央アジアの航空金融:世界の潮流とアスタナ国際金融センターの役割」を発表した。報告書は、オペレーティング・リースやファイナンス・リース、資本市場の手段など機体の資金調達の型、アイルランド、シンガポール、香港、ドバイ、米国の航空金融拠点の経験、中央アジアとコーカサスの航空市場の投資余地を扱っている。
AIFCはあわせて、カザフスタンの貨物航空会社Jupiter Jetが、米国のリース会社との間で、同社にとって初めての航空機リース取引を完了したと発表した。AIFCの航空金融ハブが、リースの枠組みづくりやリース会社との商業交渉を支援したという。AIFCは10日の予告の段階で、この取引の完了を会期中に発表するとしていた。取引の完了日、機体、金額、リース会社の名前は書かれていない。
同じ円卓会議では、AIFCとカザフスタン開発銀行が、持続可能な航空燃料(SAF)の事業を支援する覚書に署名した。両者はSAF事業の開発の可能性を共同で探り、市場参加者の連携を促し、資金を呼び込む条件づくりを助けるとしている。AIFCは国際民間航空機関(ICAO)の「ICAO Finvest Hub」の取り組みのもとでICAOと意向書を交わしており、今後は覚書を結ぶ予定だという。意向書の署名日は書かれていない。
これらの発表に共通するのは、資金が流れるための仕組みを先に整える動きである。炭素クレジットには取引の場ができ、CPCは担保を移し替えて使うための証書として適格投資に指定され、ジョージアとは相互アクセスの仕組みづくりに取り組むことで合意し、航空機リースでは支援した取引の完了が示された。一方で、取引量、発行額、リースの金額といった、実際に動いた資金の大きさを示す数字は、これらの発表には出ていない。仕組みが使われるかどうかは、AIXでの炭素クレジットの売買の実績、CPCの発行、ジョージアとの相互アクセスの具体的な取り決めが公表されるかどうかで確かめることになる。
