ジョージア国立銀行は10月9日、仮想資産サービス提供者のビテックスチェンジ(Bitexchange LLC)に5億7,211万8,000ラリの制裁金を科したと公表した。資金洗浄・テロ資金供与の防止(AML/CFT)の監督の欄に載せた公示によると、額のほとんどは、法律の定める本人確認・検証をしないまま顧客にサービスを提供した違反57万2,033件に、1件1,000ラリを掛けたものである。10月9日の国立銀行の公定レート(1ドル=2.6019ラリ)で換算すると約2億2,000万ドルになる(換算は本サイトの計算で、発表には無い)。
公示が挙げた違反と額は次のとおり。
| 違反の内容 | 件数と単価 | 制裁金 |
|---|---|---|
| 本人確認・検証をせずにサービスを提供(資金洗浄防止法10条1項a) | 57万2,033件×1,000ラリ | 5億7,203万3,000ラリ |
| 検査の過程で求められた情報・書類を誤って提出 | 2件×3,000ラリ | 6,000ラリ |
| 不審な取引の情報を金融監視局に出さなかった | 2件×7,000ラリ | 1万4,000ラリ |
| 業務の記録・体系化・保存の不備 | 1件 | 2万ラリ |
| 政治的に影響力のある人物(PEP)・制裁対象者を自動で照合するシステムの重大な欠陥 | 1件 | 1万5,000ラリ |
| 注意を要する取引・異常な取引を自動で検知するシステムの重大な欠陥 | 1件 | 2万ラリ |
| 検査の妨害(誤った・不正確な・不完全な情報で検査が長引いた) | 1件 | 1万ラリ |
| 合計 | 5億7,211万8,000ラリ |
本人確認の項目を除く6項目の合計は8万5,000ラリで、本人確認の項目が全体の99.99%を占める(割合は本サイトの計算)。額の大きさは、違反の件数に1件あたりの定額を掛ける仕組みから来ている。公示は、罰則を定めた総裁令No.133/04(2024年5月29日付、仮想資産サービス提供者とその管理者への制裁金の規則)を、2026年8月24日まで効力を持っていた版で適用したとしている。その後の版で1件あたりの額がどうなっているかは、公示には書かれていない。
国立銀行が10月10日に出した声明は、違反の中身をもう少し詳しく説明している。同社はセルフサービスのキオスク端末を通じた取引で、顧客の本人確認と検証を法律の手順どおりに行っていなかった。声明によると、本人確認と検証は金額にかかわらずすべての取引で必要で、キオスク端末での検証は国立銀行と合意した手順で行わなければならないが、同社はそれを確保していなかった。規則のうえでこの違反は重大な違反に分類されるという。声明は、額を決めた理由として、破られた要件が基本的な性格を持つこと、その仕組みの中での重要性、違反の重さと規模を挙げている。会社とは別に、同社の管理者2人にもそれぞれ7,000ラリの制裁金を科した。
声明はさらに、検査で同社が提出した情報とキオスク端末の取引を調べたところ、グーグル検索で得られるものを含む公開情報に、最も頻繁に使われた仮想資産の受取アドレスの1つと、そのアドレスに結びついたテレグラムのチャンネルまたはグループでのさまざまな禁止物質の販売の疑いとの関連を示唆する記述があったとしている。取引の頻度、似た特徴、量から、同じ性質の取引がほかのアドレスでも見つかったという。照合と検知のシステムの欠陥については、異なるブロックチェーンをまたぐ関連取引や、ウォレットどうしのつながりといった高リスクの取引の発見を妨げていたと説明している。不審な取引の報告を出さなかった2件には、不審な活動のさまざまな兆候があったという。検査では、同社のソフトウェア、人員、内部統制が事業の規模と取引量、業界のリスクに見合っていることも確認できなかったとしている。
同じ単価は、ほかの業態の制裁でも使われている。国立銀行が8月13日に公示した両替所5社への制裁では、両替所に適用した罰則の規則でも、本人確認の検証をせずにサービスを提供した違反は1件1,000ラリだった。J&Gは15件で1万5,000ラリ、メラブ・ムスハラゼの両替所は40件で4万ラリである。5社のうち最も大きかったJ&Gの制裁金は74万7,000ラリで、その大半は顧客と取引の情報を専用のシステムに記録しなかった94件(1件7,000ラリ、計65万8,000ラリ)だった。単価が同じなので、今回の額が両替所の制裁と桁違いになったのは、違反と数えた件数による。仮想資産サービス提供者では、国立銀行は7月20日にペイビット・ジョージア(PayBit Georgia)に3,000ラリの制裁金を科したと公示している。
国立銀行の声明によると、検査は2026年2月に計画どおり実施した。国立銀行は2026年だけでビテックスチェンジを含む51の監督対象を検査し、検査を終えた先の大半に制裁金を科したとしている。仮想資産サービス提供者数社の立入検査がいま進んでいるという。国立銀行は8月に、仮想資産サービス提供者の最低監督資本を種類別に定める規則の改正も公布している。
この制裁金の公表は、国立銀行の理事をめぐる問題と同じ時期に重なった。理事会は10月9日、ジョージア検事総長室によるナナ・ケイニシヴィリ理事についての捜査が終わり事実が確定するまで、同理事を理事会の審議と決定に加えないことを全会一致で決めた。国立銀行組織法と一般行政法典の、利害関係のある者を合議制の行政機関の手続きから外す規定に基づくとしている。10月10日の声明は、同理事が事業活動に違法に関与した可能性の問題に改めて触れ、国立銀行としてそうした行為とは明確に距離を置くとした。声明によると、同理事は単独で行動しており、それは会社の代表が録音した音声で本人が自らの計画と目的を語っていることから分かるという。また、仮想資産サービス提供者の監督は同理事の担当ではなく、検査の情報は担当チームしか見られず理事会のメンバーも見られないため、決定に影響を与えることはできなかった、同理事は非常勤の理事で日々の執行には関わっていなかった、と説明している。
声明はまた、ビテックスチェンジの代表が、制裁金は自分が国立銀行に提供した情報と関係があると述べたことに触れ、その主張は根拠がなく、意図的に世論を誤らせるものだとしている。
公示と声明には、制裁金を決定した日、同社が支払ったか不服を申し立てたか、本人確認を欠いた57万2,033件にかかわる取引の金額の合計は書かれていない。5億7,211万8,000ラリという額は、本人確認の違反を1件ずつ数えて1,000ラリの定額を掛けた結果であり、システムの欠陥や報告漏れなどほかの6項目は合わせて8万5,000ラリにとどまる。
