カザフスタンの人工知能・デジタル発展省が、「スマートシティ/スマートリージョン構築の方法論」の新版を承認した。人工知能と現代的な技術にもとづく地域の変革について、統一された考え方を定める文書である。トレンド通信が伝えた。
方針の核心は発想の転換にある。個別のデジタル案件を積み上げる方式から、地域を管理する単一の知能システムを構築する方式へ移す。同省はこれを「AIネイティブな都市と地域」と表現している。
カザフスタンにとっては、地域行政におけるAIの利用を段階的に広げることを意味する。適用分野として挙げられているのは交通、インフラ、公共事業、価格の監視、そして行政サービスの品質である。データ管理には特別な位置づけが与えられている。
価格の監視が並んでいる点は、同国の事情を映している。カザフスタンのインフレ率は7月に10.2%で、10か月連続の鈍化とはいえ域内で高止まりしている。政策金利は16.75%である。物価の動きを地域ごとに把握する仕組みは、金融政策だけでは届かない部分を補う道具になりうる。
同省が「人工知能・デジタル発展省」という名称を持つこと自体、この分野の位置づけを示している。同国はパブロダル州で最大1ギガワット規模の計算基盤「データセンター・バレー」の建設を進め、第1棟50メガワットの2027年6月稼働を目指す。計算能力の確保と行政への適用が、同じ政府のなかで並行している。
国際的な文脈も動いている。アスタナ・タイムズは同じ日、中国が主導する世界AI協力機構(WAICO)についての論考を掲載した。米国が欧州をAIモデルから遠ざけるなかで、中国が「誰でも参加できる世界的なAI基盤」という対案を示している、という構図の解説である。欧州はなお懐疑的だとする。
カザフスタンはこの構図の当事者になりうる位置にいる。計算基盤を建設し、行政にAIを組み込み、中国とは長い国境と一帯一路の関係を持つ。どの陣営の技術と規範を採るかという選択が、単なる調達の問題ではなくなりつつある。
なお本件は方法論の承認であり、具体的な導入案件や予算は公表されていない。実際に地域行政のどこにAIが入るかは、今後の個別事業を見る必要がある。
