カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は10月28日、国民向けの教書「新たな歴史的サイクルにおけるカザフスタンの当面の課題」を発表した。経済の措置のうち、最低賃金の引き上げは政府への指示の形を取り、検査の停止は協議の提案、富裕層への税率の引き上げは議論の呼びかけにとどまる。国民基金からの支出は総額が示されたが、国民基金からの目的別移転は教書の前から予算案に載っており、教書は両者の関係を説明していない。
| 項目 | 教書の言い方 | 段階 | 既出との関係 |
|---|---|---|---|
| 最低賃金を2027年1月1日から8万5,000テンゲから11万テンゲへ | 政府に指示する | 指示。予算は8万5,000テンゲのままで、議員が修正の必要を指摘 | 額と日付は教書が初出 |
| 国民基金から2029年末までに約6.5兆テンゲ、うち1.5兆テンゲを今年と2027年1〜2月の社会事業に | 充てられる | 政府がインフラ近代化計画を作る | 8月25日の予算案に2027〜2029年の目的別移転計5兆テンゲ。6.5兆テンゲとの関係は教書に説明なし |
| 検査の新たな3年停止(2027年1月1日から) | 議員と政府に是非の協議を提案する | 提案 | 教書が初出 |
| 大きな資産を持つ人への税率の引き上げ | 議論する時が来た | 検討。税率も対象の基準も無い | 教書が初出 |
| 投資政策をバイテレクへ委ねる | 最も効果的な解決になりうる | 見解 | 首相が10日以内の提案を指示 |
| バルハシ原発の来年の着工 | 可能で、必要かもしれないと考える | 見解 | ロスアトム側は立地調査が2027年に終わると説明 |
最低賃金について、大統領は教書で「2027年1月1日から最低賃金を8万5,000テンゲから11万テンゲへ引き上げるよう政府に指示する」と述べ、約180万人の所得が上がり、そのうち予算部門の職員は37万人超だとした。引き上げ幅は計算すると29.4%になる。財務省が8月に公開協議に付した2027〜2029年の予算案は、最低賃金を8万5,000テンゲで据え置いていた。10月14日には国民経済相を兼ねるセリク・ジュマンガリン副首相がクルルタイでの会見で、引き上げは政府と大統領府で協議中で、時期は言えないが上げるなら来年からだと述べていた。
2027〜2029年の予算法案は、10月14日に一院制の議会であるクルルタイの第1読会で承認されたとカズインフォルムが報じている。教書の当日、クルルタイのスネジャンナ・イマシェワ議員は、現行の予算には従来の8万5,000テンゲが置かれており、予算の数値を見直す必要があると記者団に述べた(カズインフォルム)。首相府によれば、オルジャス・ベクテノフ首相は教書を受けた閣議で、労働社会保障省・国民経済省・財務省に、2027年1月1日からの11万テンゲへの引き上げを確保するよう求めた。
国民基金については、大統領は自ら表明していた大規模建設に着手するよう指示し、政府が前例の無いインフラ近代化計画を準備すると述べた。その資金として国民基金から2029年末までに約6.5兆テンゲを充て、うち1.5兆テンゲを今年と2027年の最初の2か月の社会事業に用意すべきだとした。計画の中身はまだ公表されていない。
国民基金からの目的別移転そのものは、教書の前から予算案に載っていた。8月25日の閣議で審議された予算案は、重要インフラと全国的な意義を持つ事業への目的別移転を2027年2兆テンゲ、2028年1.5兆テンゲ、2029年1.5兆テンゲとしていた。教書で新しく出たのは、2029年末までの総額約6.5兆テンゲと、うち1.5兆テンゲの使い道と時期である。教書は6.5兆テンゲと予算案の移転との関係を説明していない。
検査の停止について、大統領は上半期に個人事業者の違反の件数が34%減った一方、罰金の額は11%近く増え、抜き打ち検査は数十倍に増えたと指摘した。2020〜2023年に零細・小企業への検査を停止した経験は効果があったとし、2027年1月1日から新たな3年の停止を導入することの是非を、前回の良い面と悪い面を踏まえて政府とともに協議するようクルルタイの議員に提案した。提案の文は新たな停止の対象を示していない。カズインフォルムによると、首相は国民経済省に、全国企業家会議所アタメケン、企業オンブズマン、議員とこの問題を協議し、2週間以内に政府へ提案するよう指示した。
税については、大統領は政府に税制の的を絞った改正の一括案を作るよう求めたうえで、「大きな資産を持つ人に割増の税率を導入することを議論する時が来た」と述べ、合法的に取得した資産を制限する意図は無いと付け加えた。政府とクルルタイが検討して提案するとしており、税率も対象の基準も教書には無い。カズインフォルムによると、首相は教書を受けた閣議で、国民経済省と財務省に、1か月以内に国際的な経験を調べ、とくに裕福な市民への課税の考え方を出すよう指示した。
投資政策について、大統領は複数の機関の権限が重なっていると述べ、投資政策に関わる一連の問題を国営持株会社バイテレクに委ねることが最も効果的な解決になりうるとした。経済省と外務省は権限の一部を引き続き担う。首相は国民経済省と外務省に、バイテレクとともに10日以内に提案するよう指示した(カズインフォルム)。
原子力では、大統領は来年にもバルハシ原発の建設に着手することは可能で、必要かもしれないと考えると述べ、モユンクム原発の早期の着工に向けた包括協力協定の署名にも触れた。9月にEPC契約が署名されたバルハシ原発について、ロスアトム側は立地調査が2027年に終わり、その後に建設の許認可の書類作成に入ると説明している。大統領が挙げた来年は、ロスアトム側が立地調査を終えるとする2027年にあたる。
最低賃金は額と日付を示した政府への指示で、予算の数値の見直しが要るとの指摘が議員から出ている。検査の停止と富裕層への課税は、首相が示した2週間と1か月の期限で出てくる政府の案を見るまで、範囲も規模もわからない。
